染色体凝縮の生理的意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/07 23:45 UTC 版)
「染色体凝縮」の記事における「染色体凝縮の生理的意義」の解説
上記のように、間期において、DNAは既にクロマチン構造をとっているが、それらは細胞核内に分散しているため個々の染色体として観察されることはない。分裂前期にはいると、核膜周辺から凝縮が始まり、やがて繊維状の構造が観察されるようになる。前中期で核膜が崩壊すると、凝縮はさらに進行する。中期までに凝縮を完了した染色体では2本の姉妹染色分体が識別可能となる。この一連の過程を総称して染色体凝縮とよぶが、染色体の高次構造についての理解が進んでいないため、この語の定義は必ずしも明確ではない。 染色体凝縮の過程は、原理的には以下の3つのステップに分けて考えることが可能である(図2)。 核内に分散したクロマチンを染色体というユニットに分解し「個別化(individualization)」すること。 それぞれの染色体をコンパクトな棒状の構造に「組織化(shaping/compaction)」すること。 それぞれの染色体の中で複製したDNA間の絡み合いを解き、2本の姉妹染色分体へ「分割(resolution)」すること。 しかし、これらのステップは同時期にしかも相補いながら進行するため、すべて合わせて染色体凝縮という場合が多い。このように、染色体凝縮とは単に長さを縮めるための過程ではなく、ランダムコイル状のクロマチン繊維を組織的に折り畳んで棒状の構造体へ変換する過程と考えるほうがより適切である。さらに重要なことに、この過程の本質は、分裂後期における姉妹染色分体の分離(separation)を容易し、両極への移動に耐えるための強度を与えることにある。そのため、染色体凝縮の欠損は染色体の分離異常を引き起こし、ひいてはゲノムの不安定化に繋がる。
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