春を待つこころに鳥がゐてうごく
作 者 |
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季 語 |
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季 節 |
冬 |
出 典 |
鏡騒 |
前 書 |
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評 言 |
八田木枯の多彩で膨大な句業に近づいていくのは、私のこれからの一生の課題である。すでに知られているように、氏の持つキーワードには「母」「鏡」「鶴」「あやめ」などいくつかあるが、その一つに「鳥」がある。それは、初期の頃より、むしろ晩年に散見されるようになる。 秋ふかし鳥とべば木もとびたがる 初氷あたりひびかせ鳥とぶも 春の日のとぶだけとんで鳥とまる 「鳥」というモチーフが登場するとき、作者はどのような心持ちだったのだろうか。 掲出句は、作者の心に鳥が棲んでいて、春の兆しとともに動くという。冬の間に眠っていた鳥は、動いて、飛び立とうとしている。 木枯が天へ飛び立ったのも春。心の中の鳥に誘われて、一緒に飛び立ってしまったのだろうか。 せめてもは鳥になりたし卯月はや 死後、総合誌に発表された最後の作品は「鳥」の句で結ばれていた。作者は翼を持って、戦友や父母の待つ空へ飛んで行きたかったのだろうか。 平明でかなしみを纏う作品に、天上からモーツアルトの音楽が聞こえてくるようだ。 八田木枯『鏡騒』平成22年9月10日ふらんす堂刊行より |
評 者 |
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備 考 |
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