教育移住
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/30 13:43 UTC 版)
教育移住(きょういくいじゅう)は、日本人によって行われている移住の形態。
概要
子供へのより良い教育環境を求めて他の地域に移り住むことである。中には国際的な感覚や多様性を求めるつもりで海外に移住する場合もある[1]。リモートワークが進み、日本だけでなく海外にいても日本での仕事が可能になった現代では、地方や海外に教育移住するハードルは一層低くなっている[2]。
日本の学校教育というのは、英語教育の遅れや詰め込み方式などから疑問視をする声が高まっており、このことからより良い教育環境の国に移住するという教育移住が注目を集める。教育移住をすることで生きた英語を身に付けることができたり、レベルの高い教育や個性を伸ばす教育が期待できたり、親自身が貴重な体験をできることなどが魅力とされている[3]。
2010年ごろまでは教育で海外へ行く場合は留学という形で、子供が単身で海外の学校に通うために渡航するというケースがほとんどであり、母子留学はあったが家族全員で一緒に海外に行くというパターンはほとんど無かった。それが2011年ごろよりインターネットでビジネスができるようになったことや、個人投資が活発になったことなどから、家族ごと海外に移住しようと思う人が増える。2020年頃のコロナ禍からリモートワークが広まったことから、家族で海外に教育移住するということがさらに増加する[3]。
海外に教育移住をするメリットが多い反面、デメリットも数多くある。海外に教育移住をしたならば、日本人との価値観のギャップが大きくなる、日本の学習内容に疎くなる、日本語が苦手になる、クラブ活動では1つのスポーツに集中できない、コストが高いなどのデメリットがある[4]。
学費がかからなくなるという理由で海外に教育移住をするというケースもある。ニュージーランドならば家族で移住したならば、高校卒業までの学費はほぼ無料になる。ニュージーランドは留学生として移住すれば公立学校でも現地の人の何十倍もの学費がかかるが、条件の揃ったビザを持つ家族の子供ならば自国の子供と同じとみなされて公立学校の学費はほとんどかからなくなる[5]。
東洋経済の記事では子供の英語力を身に付けることを考えているならば、マレーシアに教育移住をすることが語学留学のファーストステップとなるかもしれないとしている[6]。
シンガポールは教育大国といわれており、日本からの教育移住が多い[7]。
小島慶子は長い目で見た場合に縮小していく国で、その国の言葉しか喋れない状態で子供を閉じ込めておくのは不親切であると思ったことから海外に教育移住をすることを決めた。自分の子供を日本の大学や企業に入れることは前提とはしていなかった。本人がやりたい国で勉強したり働けば良いと思っていた。中野円佳は夫の仕事から海外に在住して現地のインターナショナルスクールに子供を通わせていたのが帰国して日本の公立学校に転校してみれば、日本の公立学校に違和感を覚えて、どっちつかずのルートに入ってしまったと思ったことから海外に教育移住をすることにしていた[8]。
長野県佐久穂町に所在する学校法人茂来学園大日向小学校は、日本初のイエナプラン認定校として2019年に開校したのだが、この小学校の入学者の7割は、県外からの教育移住という形で引越しをしてきている人であった[9]。2025年春、和歌山県田辺市にうつほの杜学園小学校という私立小学校が開校したのであるが、この学校は探究教育と英語教育が大きな特徴となっており、教育移住を生み出す新たな地域活性化プロジェクトとして注目を集める[10]。
脚注
- ^ Inc, Nikkei (2023年12月28日). “教育移住とは”. 日本経済新聞. 2025年8月30日閲覧。
- ^ 日経BP. “海外・国内 教育移住のリアル:日経xwoman”. woman.nikkei.com. 2025年8月30日閲覧。
- ^ a b “失敗しない「教育移住」最新トレンド | 三菱UFJ銀行”. 三菱UFJ銀行 公式ウェブサイト. 2025年8月30日閲覧。
- ^ “海外への「教育移住」……メリットとデメリット! [子供の教育 All About]”. All About(オールアバウト). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “家族で移住すれば子どもたちの高校卒業まで学費タダ 親のキャリアも諦めない選択”. AERA DIGITAL(アエラデジタル) (2024年10月18日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “《教育移住で英語はうまくなる?》「ゼロから始めて2年半、子どもたちは…」現地からの報告”. 東洋経済オンライン (2025年7月24日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ Inc, PRESIDENT (2023年3月12日). “習い事までグレード化している…日本から教育移住が多いシンガポール親子の"分刻みの多忙"の背景”. PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “教育移住で生き方の選択肢を広げる 子どもへの負荷やリスクも見極めを”. AERA DIGITAL(アエラデジタル) (2024年10月27日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “教育移住者が7割 日本初のイエナプラン小学校「大日向小」を選んだ理由”. コクリコ|講談社. 2025年8月30日閲覧。
- ^ “教育移住という地方創生の新たな取組み。過疎地に新たに生まれるうつほの杜学園小学校(和歌山県田辺市)(秋元祥治) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2025年8月30日閲覧。
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