引用とパロディ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/01 07:49 UTC 版)
このほかにも『ザジ』には言語遊戯や文体のパロディ、詩の規則や修辞法を散文に適用させるといった言語実験が組み込まれている。これらの引用やパロディは、テクストを複層化し、小説の意味内容を増幅させている。 例えば第8章、エッフェル塔の下でザジを待つガブリエルが語る長い独白があり、ここでは古典悲劇によく見られるモノローグが踏襲されている。ガブリエルのこの演説は、シェークスピア、ダンテ、モンテーニュ、カルデロンなど哲学や童謡なども含めた多様なテクストの引用とパロディによって構成されている。この文学の見本市のようなモノローグは、居合わせた外国人観光客たちを熱狂させ、ガブリエルは彼らの尊崇の的となる。ところが、第14章でガブリエルは自分のショーにフランス人の仲間たちを招待し、彼らに対しても同じような弁舌を振るうのだが、彼らからはせいぜいクロスワードパズル程度の関心しか向けられない。つまり、ガブリエルの演説の神秘性に心打たれるのは、ほとんどフランス語を理解できない外国人であって、美文調モノローグは観賞用の異国語としてしか機能していないという皮肉である。
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