平安将棋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/19 08:07 UTC 版)
平安将棋(へいあんしょうぎ)は、日本の将棋類の一つであり、二人で行うボードゲーム(盤上遊戯)の一種である。
鎌倉時代初期に編纂されたとされる習俗辞典『二中歴』において、平安大将棋とともに掲載されている将棋である。この中では単なる「将棋」という名前であるが、後の小将棋や現代の本将棋との区別のためにこう呼ばれる。
歴史
文献に載っている将棋の中では、最も古いものである。『二中歴』の「第十三 博棊歴」には、以下のような記述がある[1]。
- 将棊 棊一作騎
- 玉将八方得自在 金将不行下二目 銀将不行左右下
- 桂馬前角超一目 香車先方任意行 歩兵一方不他行
- 入敵三目皆成金 敵玉一将則為勝
ルール
※ 文献にしか載っていないものであるため、当時の正確なルールであるとは限らない。
基本ルール
- 将棋盤の上で行う。将棋盤の大きさは縦横8マスずつ[2]、縦8マス・横9マス、縦横9マスずつの諸説があるが正確なことはわかっていない。
- 玉将(玉)・金将(金)・銀将(銀)・桂馬(桂)・香車(香)・歩兵(歩)の6種類の駒があり、それぞれ動きが決まっている。
- 文献にも載っていないが、おそらく玉将・金将以外の駒は、敵陣3段目までに入れば成れたと考えられる。
- 本将棋とは違い、捕獲した駒を自らの持ち駒にはできないと考えられている。
- 本将棋と同様に敵の玉将を詰めると勝ちになるが、敵を玉将だけにしても勝ちとされている。
初期配置図
以下のいずれかであったか、時代が下るとともに盤の大きさも変化していったと考えられる。
縦横8マスずつと仮定した場合
▽香車 | ▽桂馬 | ▽銀将 | ▽金将 | ▽玉将 | ▽銀将 | ▽桂馬 | ▽香車 |
▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 |
▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 |
▲香車 | ▲桂馬 | ▲銀将 | ▲玉将 | ▲金将 | ▲銀将 | ▲桂馬 | ▲香車 |
縦8マス・横9マスと仮定した場合
▽香車 | ▽桂馬 | ▽銀将 | ▽金将 | ▽玉将 | ▽金将 | ▽銀将 | ▽桂馬 | ▽香車 |
▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 |
▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 |
▲香車 | ▲桂馬 | ▲銀将 | ▲金将 | ▲玉将 | ▲金将 | ▲銀将 | ▲桂馬 | ▲香車 |
縦横9マスずつと仮定した場合
▽香車 | ▽桂馬 | ▽銀将 | ▽金将 | ▽玉将 | ▽金将 | ▽銀将 | ▽桂馬 | ▽香車 |
▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 |
▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 |
▲香車 | ▲桂馬 | ▲銀将 | ▲金将 | ▲玉将 | ▲金将 | ▲銀将 | ▲桂馬 | ▲香車 |
駒の動き
現代の本将棋に同じ。ただし持ち駒再利用のルールが存在しないため成銀・成桂・成香・と金の区別はなく、すべて金将であったと考えて良い。
元の駒 | 動き | 成駒 | 動き | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
玉将(ぎょくしょう) |
|
全方向に1マス動ける。 | - | - | - | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
金将(きんしょう) |
|
縦横と斜め前に1マス動ける。 | - | - | - | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
銀将(ぎんしょう) |
|
前と斜めに1マス動ける。 | 金将(きんしょう) |
|
縦横と斜め前に1マス動ける。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
桂馬(けいま) |
|
前へ2、横へ1の位置に移動できる。その際、駒を飛び越えることができる。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
香車(きょうしゃ) |
|
前方に何マスでも動ける。飛び越えては行けない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
歩兵(ふひょう) |
|
前に1マス動ける |
脚注
- ^ 二中歴3 第十一~第十三(尊経閣善本影印集成)ISBN 4-8406-2316-3 P.118
- ^ 観戦記者・天狗太郎(山本亨介)は「8×8説、玉(王)が左、金将は右(チェス女王のように向かい合わず)、歩兵の初期配置は二段目で成りも二段目、行き処の無い歩香桂でない限り不成も可」説を採り(『将棋庶民史』ほか)、棋士・飯田弘之はノーマルな「8×8説」(本文2.2の[初期配置図・1縦横8マスずつと仮定した場合]、成りは三段目で不成も可)説を採る(『遊戯史研究』11号ほか)
関連項目
平安将棋(へいあんしょうぎ)
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鎌倉時代初期に編纂されたとされる習俗事典『二中歴』に掲載されている将棋。
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