少年易老学難成とは? わかりやすく解説

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少年易老学難成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/11 06:48 UTC 版)

『少年易老学難成』
ザ・ナイススタジオ・アルバム
リリース
録音
ジャンル サイケデリック・ロックプログレッシブ・ロック
時間
レーベル イミディエイト・レコード
プロデュース ザ・ナイス
専門評論家によるレビュー
AllMusic Rating link
ザ・ナイス アルバム 年表
  • 少年易老学難成
  • (1968年 (1968)
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少年易老学難成』(しょうねん おいやすく がく なりがたし、原題:ラテン語: Ars Longa Vita Brevis) は、イングランドロック・トリオのザ・ナイスが1968年に発表した2作目のアルバムである。

解説

経緯

ザ・ナイスは1968年3月にデビュー・アルバム『ナイスの思想』を発表して、それまで続けていたマーキー・クラブへの定期的な出演に加えてアルバムの宣伝を兼ねたツアーを行った。同年7月に発表した2作目のシングル『アメリカ[1][注釈 1]が英米のシングル・チャートを上昇したものの、アルバムの売り上げは今一つだった。

彼等は7月末にオリンピック・スタジオで新作アルバムの制作を開始した。ここでキース・エマーソン(キーボード)とデヴィッド・オリスト(ギター)の音楽上の対立が鮮明になった[注釈 2][2]。オリストは同年2月のアメリカ公演の結果、薬物依存症に陥って[3][注釈 3]コンサートに現れなかったり不可解な行動をとったりするようになったので[4]、この対立で解雇された[注釈 4]。後任は元ボダストスティーヴ・ハウに決まりかけたがハウが加入を断った[5]ので、彼等は4人編成を諦めてエマーソン、リー・ジャクソン(ベース・ギター、ヴォーカル)、ブライアン・デヴィソン(ドラムス)の3人で活動することにして、アルバム制作を再開した。

内容

アルバム名の原題Ars Longa Vita Brevisは、ギリシャの医学者ヒポクラテスの「医術は長く人生は短い」[注釈 5]という言葉のラテン語訳で、ジャクソンが通ったアート・スクールの標語だった[2]

オリジナルLPの片面を占めるアルバム・タイトル曲[6][7][注釈 6]は、ロバート・スチュワートが指揮するオーケストラとの共演による組曲で、ジャクソンは「オリストが提供したリフをエマーソンが発展させ、自分が歌詞と題名をつけた[注釈 7]。そうして出来上がった曲を中心にして組曲を作り上げた」と述べている[2][注釈 8]。オーケストラの録音はワセックス・サウンド・スタジオで単独に行なわれた[8]。 バンドの録音ではジャクソンと同じくニューカッスル出身のマルコム・ラングスタッフがギターを担当した[9]。第3楽章の「ブランデンブルガー」はヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲の『ブランデンブルク協奏曲』第3番(ト長調 BWV 1048)の第1楽章の改作で、シングル・カットされた[10]が「アメリカ」に続くヒットにはならなかった。

「何処から来たのだろう」「陽気なフロイド」の全篇と「リトル・アラベラ」の中間部のリード・ヴォーカルはエマーソンが担当した。また「何処から来たのだろう」では、マネージャーのトニー・ストラットン・スミスが父親の声、偶然スタジオに居合わせたデヴィソンの甥が幼児の声を担当した[11]。「間奏曲(「カレリア組曲」より)」はフィンランドの作曲家ジャン・シベリウスの「カレリア組曲 作品11」の「第1曲:間奏曲」の改作で、ジャクソンがベース・ギターのボウイング奏法、エマーソンがハモンド・オルガンのフィードバック効果を披露している。シベリウスの「第1曲:間奏曲」はイギリスのテムズ・テレビ(Thames Television)の人気ニュース番組This Weekのテーマ音楽に使われて当時イギリスで広く知られており、彼等の友人だったロイ・ハーパー[注釈 9]が改作を提案した[11]。「ドン・エディト・エル・グルヴァ」は"Don edits the groove."の意味で、エンジニアリングを担当したドン・ブリューワー[注釈 10]に捧げられた[2]

ジャケットは前作に続いてゲレッド・マンコヴィッツが制作した。彼はメンバーのX線撮影を行おうとしたが放射線管理と被曝の理由で許可されなかったので、ナイツブリッジの私立病院から古いX線写真を買ってパズルのようにつなぎ合わせて全身写真を作り上げて[注釈 11][2]、『ザ・ナイスのX線写真』と銘打った。

収録曲

オリジナルLP

Side One
# タイトル 作詞・作曲 時間
1. 「何処から来たのだろう Daddy, Where Did I Come From?」 Keith Emerson, Lee Jackson
2. 「リトル・アラベラ Little Arabella」 Jackson, Emerson
3. 「陽気なフロイド Happy Freuds」 Emerson, Jackson
4. 「間奏曲(「カレリア組曲」より) Intermezzo from the Karelia Suite」 Sibelius
5. 「ドン・エディト・エル・グルヴァ Don Edito el Gruva」 Emerson, Jackson, Brian Davison
合計時間:
Side Two
# タイトル 作詞・作曲 時間
1. 「少年易老学難成 Ars Longa Vita Brevis
  • 少年易老学難成 前奏曲 Ars Longa Vita Brevis: Prelude
  • 第1楽章 覚醒 1st Movement: Awakening
  • 第2楽章 実現 2nd Movement: Realisation
  • 第3楽章 受諾 「ブランデンブルガー」 3rd Movement: Acceptance "Brandenburger"
  • 第4楽章 拒絶 4th Movement: Denial
  • 終楽章 - 偉大なる展開 Coda – Extension to the Big Note」
*Emerson
  • Davison
  • Jackson, David O'List, Emerson
  • Jackson, Emerson, Davison
  • Emerson, Jackson, Davison
  • Emerson
  • 合計時間:

    CD

    • Ars Longa Vita Brevis『少年易老学難成+2』
    # タイトル 作詞・作曲 時間
    1. 「何処から来たのだろう Daddy, Where Did I Come From?」 Keith Emerson, Lee Jackson
    2. 「リトル・アラベラ Little Arabella」 Jackson, Emerson
    3. 「陽気なフロイド Happy Freuds」 Emerson, Jackson
    4. 「間奏曲(「カレリア組曲」より) Intermezzo from the Karelia Suite」 Sibelius
    5. 「ドン・エディト・エル・グルヴァ Don Edito el Gruva」 Emerson, Jackson, Brian Davison
    6. 「少年易老学難成 Ars Longa Vita Brevis
    • 少年易老学難成 前奏曲 Ars Longa Vita Brevis: Prelude
    • 第1楽章 覚醒 1st Movement: Awakening
    • 第2楽章 実現 2nd Movement: Realisation
    • 第3楽章 受諾 「ブランデンブルガー」 3rd Movement: Acceptance "Brandenburger
    • 第4楽章 拒絶 4th Movement: Denial
    • 終楽章 - 偉大なる展開 Coda – Extension to the Big Note」
     
  • Emerson
  • Davison
  • Jackson, David O'List, Emerson
  • Jackson, Emerson, Davison
  • Emerson, Jackson, Davison
  • Emerson
  • 7. 「ブランデンブルガー Brandenburger」(ボーナス・トラック、シングルA面) Jackson, Emerson, Davison
    8. 「陽気なフロイド Happy Freuds」(ボーナス・トラック、シングルB面) Emerson, Jackson
    合計時間:
    • Ars Longa Vita Brevis (Expanded De-luxe Edition)[注釈 12]
    Disc One
    # タイトル 作詞・作曲 時間
    1. 「何処から来たのだろう Daddy, Where Did I Come From?」 Keith Emerson, Lee Jackson
    2. 「リトル・アラベラ Little Arabella」 Jackson, Emerson
    3. 「陽気なフロイド Happy Freuds」 Emerson, Jackson
    4. 「間奏曲(「カレリア組曲」より) Intermezzo from the Karelia Suite」 Sibelius
    5. 「ドン・エディト・エル・グルヴァ Don Edito el Gruva」 Emerson, Jackson, Brian Davison
    6. 「少年易老学難成 Ars Longa Vita Brevis
    • 少年易老学難成 前奏曲 Ars Longa Vita Brevis: Prelude
    • 第1楽章 覚醒 1st Movement: Awakening
    • 第2楽章 実現 2nd Movement: Realisation
    • 第3楽章 受諾 「ブランデンブルガー」 3rd Movement: Acceptance "Brandenburger
    • 第4楽章 拒絶 4th Movement: Denial
    • 終楽章 - 偉大なる展開 Coda – Extension to the Big Note」
     
  • Emerson
  • Davison
  • Jackson, David O'List, Emerson
  • Jackson, Emerson, Davison
  • Emerson, Jackson, Davison
  • Emerson
  • 7. 「ブランデンブルガー Brandenburger」(ボーナス・トラック、シングルA面) Jackson, Emerson, Davison
    8. 「陽気なフロイド Happy Freuds」(ボーナス・トラック、シングルB面) Emerson, Jackson
    合計時間:
    Disc Two
    # タイトル 作詞・作曲 時間
    1. 「少年易老学難成 Ars Longa Vita Brevis」(BBCセッションズ) Jackson, O'List, Emerson
    2. 「エイリーズ Aries」(BBCセッションズ) Unidentified
    3. 「ランピー・グレイヴィ Lumpy Gravy」(BBCセッションズ) Jackson, Emerson
    4. 「リトル・アラベラ Little Arabella」(BBCセッションズ) Jackson, Emerson
    5. 「陽気なフロイド Happy Freuds」(BBCセッションズ) Emerson, Jackson
    6. 「間奏曲(「カレリア組曲」より) Intermezzo from the Karelia Suite」(BBCセッションズ) Sibelius
    7. 「ワン・オブ・ゾウズ・ピープル I'm One of Those People That My Father Tells My Sister Not To Go Out With」(BBCセッションズ) Emerson, Jackson
    8. 「アズラエル・リヴィジテッド Azrael Revisited」(BBCセッションズ) Emerson, Jackson
    9. 「ブルース・フォー・ザ・プレーリーズ Blues for the Prairies」(BBCセッションズ) Peterson
    10. 「空虚な日々の想い出 Diary of an Empty Day (&Top Gear Signature)」(BBCセッションズ) Emerson, Jackson
    11. 「アメリカ/修正第2条 America/Second Amendment
    • アメリカ America
    • 修正第2条 Second Amendment」(ライヴ・イン・ニューキャッスル)
     
  • Bernstein, Sondheim
  • Emerson, O'List, Davison, Jackson
  • 12. 「ロンド Rondo」(ライヴ・イン・ニューキャッスル) Emerson, O'List, Davison, Jackson
    合計時間:

    参加ミュージシャン

    ※番号はCDのトラック・ナンバーを示す。

    ザ・ナイス
    その他
    • マルコム・ラングスタッフ Malcolm Langstaff – ギター(6)[9]
    • ロバート・スチュアート Robert Stewart – オーケストラ編曲・指揮
    • セッション・ミュージシャン – トランペット(2)[11]

    脚注

    注釈

    1. ^ ギターとオルガンの即興演奏を含むインストゥルメンタル。原曲はミュージカルウエスト・サイド・ストーリー』の挿入歌。冒頭とギター・ソロの直前に、ドヴォルザーク作曲の交響曲第9番『新世界より』第4楽章の一部のメロディが使われた。
    2. ^ 後年、エマーソンは対立について、オリストが目立とうとピート・タウンゼントのようにギターの音量を上げたのでオルガンとギターの均衡が取れなくなった、と説明した。
    3. ^ ウイスキー・ア・ゴー・ゴーで、居合わせたデヴィッド・クロスビーに薬を盛られたとされる。
    4. ^ 同年10月、仕事のプレッシャーでグループを去ったと公式発表された。
    5. ^ 邦題の「少年老い易く学成り難し」は、原題に似た意味を持ち、日本ではより広く知られていて覚えられやすいという理由で採用されたと思われる。
    6. ^ 1968年に発表されたオリジナルLPではジャケットの裏に"Ars Longa Vita Brevis"、レコードのラベルには"Symphony for Group and Orchestra"と記されている。日本盤の邦題は「グループとオーケストラの為のシンフォニー」だった。
    7. ^ オリストが作者に含まれている第2楽章のことを指すと思われる。
    8. ^ 裏ジャケットには、エマーソンがニュートンの運動の第一法則を引用して原題の解釈を記している。
    9. ^ ザ・ナイスはハーパーが1970年に発表したアルバム"Flat Baroque and Berserk"の収録曲'Hell's Angels'のレコーディングに参加した。
    10. ^ グランド・ファンク・レイルロードのドラマーとは同名異人。
    11. ^ よく見ると、三体は同じ写真であることがわかる。
    12. ^ Castle Music(CMQDD791)。各トラックの作詞・作曲は同CDのライナーノーツに基づく。

    出典

    1. ^ Discogs”. 2024年3月2日閲覧。
    2. ^ a b c d e Ars Longa Vita Brevis(Sanctuary, CMQDD791)のライナーノーツ。
    3. ^ Macan (2006), p. 19.
    4. ^ Macan (2006), p. 26.
    5. ^ Hanson (2014), p. 95.
    6. ^ Discogs”. 2025年5月11日閲覧。
    7. ^ Discogs”. 2025年5月11日閲覧。
    8. ^ Hanson (2014), p. 98.
    9. ^ a b Hanson (2014), p. 99.
    10. ^ Discogs”. 2024年3月2日閲覧。
    11. ^ a b c Hanson (2014), p. 97.

    引用文献

    • Hanson, Martyn (2014). Hang on to a Dream: The Story of the Nice. London: Foruli Classics. ISBN 978-1-905792-61-0 
    • Macan, Edward (2006). Endless Enigma: A Musical Biography of Emerson, Lake and Palmer. Chicago and La Salle: Open Court. ISBN 978-0-8126-9596-0 

    関連項目

    外部リンク




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