ナイスの思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/23 07:21 UTC 版)
『ナイスの思想』 | ||||
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ザ・ナイス の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
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ジャンル | サイケデリック・ロック、プログレッシブ・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル | イミディエイト・レコード | |||
プロデュース | Emerlist Davjack | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
AllMusic Rating ![]() |
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ザ・ナイス アルバム 年表 | ||||
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『ナイスの思想』 (The Thoughts Of Emerlist Davjack) は、イングランドのロック・バンドのザ・ナイスが1967年に発表した1作目のアルバムである。
解説
経緯
ザ・ナイスは1966年12月、ローリング・ストーンズのマネージャーのアンドリュー・ルーグ・オールダムが所有するイミディエイト・レコードに所属していたP・P・アーノルドのバック・バンドとして結成され、パット・アーノルド・アンド・ザ・ナイスとして活動を開始した。メンバーは、キース・エマーソン(キーボード)、リー・ジャクソン(ベース・ギター)、デヴィッド・オリスト(ギター)、イアン・ヘイグ[4][5](ドラムス)。彼等はアーノルドのライブでのバック演奏と前座を兼任し[注釈 1]、彼女のデビュー・アルバム"The First Lady of Immediate"の製作に参加した[6][注釈 2]。1967年8月、薬物常用で失調をきたして演奏に難があったヘイグ[7]に替えてブライアン・デヴィソンを迎えた。
1967年9月、彼等はアーノルドから独立して、オールダムのマネージメントの下でマーキー・クラブなどに定期的に出演するようになった。同年11月にイミディエイト・レコードからデビュー・シングル"The Thoughts of Emerlist Davjack"[注釈 3][8](『ナイスの思想』[注釈 4])、1968年3月に本作を発表した。
内容
本作は、1967年の秋からロンドンのオリンピック・スタジオとパイ・レコーディング・スタジオで約3週間かけて制作された[9]。オールダムはアーノルドの場合と同様に、ジャガーにプロデュースさせようと計画したが実現せず[10]、プロデュースはEmerlist Davjack[注釈 3]名義になった。
「フラワー・キング・オブ・フライズ」と「ナイスの思想」のリード・ヴォーカルはオリストが担当した。前者の歌詞は小説『蠅の王』に影響された[10]。後者には、彼等と同じくイミディエイト・レコードに属していたビリー・ニコルス[注釈 5]がクレジットなしでコーラスに参加した[11]。
「ロンド」はデイヴ・ブルーベックの「トルコ風ブルー・ロンド(Blue Rondo à la Turk)」の改作で、中間部でヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲の「トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565」の一節が演奏されている。この曲はザ・ナイスのコンサートでオープニングを飾った[注釈 6]。
「じれったいマギー」の最後に、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハが1766年に作曲した'Solfeggietto'がピアノで引用されている[12]。
セロファンを纏ったメンバーを写したジャケットは、ローリング・ストーンズやジミ・ヘンドリックスなど多くのミュージシャンの写真を撮影したゲレッド・マンコヴィッツ[注釈 7]が制作した。
収録曲
オリジナルLP
CD
- The Thoughts Of Emerlist Davjack (CD) 『ナイスの思想+5』[注釈 8]
# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「フラワー・キング・オブ・フライズ Flower King Of Flies」 | Keith Emerson, Lee Jackson | |
2. | 「ナイスの思想 The Thoughts Of Emerlist Davjack」 | Emerson, David O'List | |
3. | 「ボニー・K Bonnie K」 | Jackson, O'List | |
4. | 「ロンド Rondo」 | Dave Brubeck, Emerson, O'List, Brian Davison, Jackson | |
5. | 「戦争と平和 War and Peace」 | Emerson, O'List, Davison, Jackson | |
6. | 「じれったいマギー Tantalising Maggie」 | Emerson, Jackson | |
7. | 「夜明け Dawn」 | Emerson, Jackson, Davison | |
8. | 「ユージンの叫び The Cry of Eugene」 | Jackson, Emerson, O'List | |
9. | 「ナイスの思想〔シングル・ヴァージョン〕 The Thoughts of Emerlist Davjack (single version)」(ボーナス・トラック) | Emerson, O'List | |
10. | 「アズラエル(死の天使) Azrial (Angel of Death)」(ボーナス・トラック) | Emerson, Jackson | |
11. | 「アメリカ America [instrumental]」(ボーナス・トラック) | Leonard Bernstein, Stephen Sondheim, Emerlist Davjack | |
12. | 「ダイヤモンド・ハード・ブルー・アップルズ・オブ・ザ・ムーン The Diamond Hard Blue Apples of the Moon」(ボーナス・トラック) | Davison, Jackson | |
13. | 「アメリカ〔USシングル・エディット〕 America (US Single Edit)」(ボーナス・トラック) | Bernstein, Sondheim, Emerlist Davjack | |
合計時間:
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- The Thoughts Of Emerlist Davjack (CD) 『ザ・ソウツ・オブ・エマーリスト・デヴジャック』[注釈 9]
- The Thoughts Of Emerlist Davjack (Expanded De-luxe Edition)[注釈 10]
参加ミュージシャン
- ザ・ナイス
- キース・エマーソン Keith Emerson – オルガン、ピアノ、ハープシコード、ヴォーカル
- リー・ジャクソン Lee Jackson – ベース・ギター、ギター、ヴォーカル、ティンパニ
- デヴィッド・オリスト David O'List – ギター、トランペット、フルート、ヴォーカル
- ブライアン・デヴィソン Brian Davison – ドラムス、チューブラー・ベル、ティンパニ
- その他
- ビリー・ニコルス Billy Nicholls – コーラス(「ナイスの思想」)[11][注釈 11]
脚注
注釈
- ^ オールダムは彼等に対する観客の好反応を見て、1967年8月にバークシャーのウィンザーで開催されたナショナル・ジャズ・アンド・ブルース・フェスティバルに彼等を単独で出演させた。
- ^ ミック・ジャガーがプロデュースした数曲の録音にオールダムの意向で参加した。
- ^ a b "Emerlist Davjack"とはメンバーの名字を組み合わせた造語である(Emerson, O'List, Davison, Jackson)。
- ^ 日本のレコード会社は彼等を『ザ・ナイス』ではなく『ナイス』と呼称し、シングル曲の邦題を「ザ・ナイスの思想」ではなく「ナイスの思想」にした。
- ^ 1968年にイミディエイト・レコードからデビュー・アルバムWould You Believeを発表。シンガー・ソングライター、プロデューサー、音楽監督として長く活動を続ける。ピート・タウンゼント、ロジャー・ダルトリー、ザ・フーとの活動が有名。
- ^ 第3作『ジャズ+クラシック/ロック=ナイス』や2009年に発売された 『フィルモア・イースト 1969』で聴かれる。解散後にエマーソンが結成したエマーソン・レイク・アンド・パーマーのコンサートでも頻繁に取り上げられた。
- ^ ローリング・ストーンズが1967年に発表した『ビトウィーン・ザ・バトンズ』のジャケット写真を撮影した。当時ストーンズのマネージャーでもあったオールダムに高く評価されていた。
- ^ VICP-61472、イミディエイト、SKU: 4988002419289。
- ^ ODRS98035、オールデイズ・レコード、SKU: 4582239476420。
- ^ Castle Music、CMQDD790。各トラックの作詞・作曲は本CDのライナーノーツに基づく。
- ^ クレジットなし。
出典
- ^ Edward Macan, Endless Enigma: A Musical Biography of Emerson, Lake and Palmer, pp. 19, 657; Richard Morton Jack, Galactic Ramble
- ^ “The Nice Biography, Songs, & Albums”. AllMusic. 2022年5月6日閲覧。
- ^ “"The Thoughts of Emerlist Davjack" 1967 or 1968??? - Rate Your Music”. rateyourmusic.com. 2022年5月6日閲覧。
- ^ Hanson (2014), p. 37.
- ^ “Discogs”. 2025年4月1日閲覧。
- ^ Hanson (2014), pp. 53–54.
- ^ Hanson (2014), p. 40.
- ^ “Discogs”. 2024年3月2日閲覧。
- ^ Hanson (2014), p. 61.
- ^ a b The Thoughts Of Emerlist Davjack(Sanctuary, CMQDD790)のライナーノーツ。
- ^ a b Hanson (2014), p. 64.
- ^ Macan (2006), p. 20.
引用文献
- Hanson, Martyn (2014). Hang on to a Dream: The Story of the Nice. London: Foruli Classics. ISBN 978-1-905792-61-0
- Macan, Edward (2006). Endless Enigma: A Musical Biography of Emerson, Lake and Palmer. Chicago and La Salle: Open Court. ISBN 978-0-8126-9596-0
関連項目
外部リンク
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