定住支援プログラム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/14 23:14 UTC 版)
定住支援プログラム(ていじゅうしえんプログラム)は、日本で行われている難民への支援。
概要
日本政府が行っているプログラム。法務大臣によって補完的保護対象者に認定された人やその家族のために、日本語教育や生活ガイダンスなど日本に定住するための支援を無償で行うというプログラム。オンラインで受講をすることもでき、パソコンを無償で貸し出すということも行っている。昼間のコースを受講する人は子供を無償で預けることもできるようになっている。定住支援プログラムで行われる日本語教育では、日本語のA2からB2のレベルを身に付けることを目標とする[1]。
日本に在住する難民・補完的保護対象者として認定された人やその家族、あるいは第三国定住難民として受け入れられた人が、日本で自立して安定した生活を送ることができるように支援をするというプログラム[2]。日本で難民として居住している人というのは、出身国では迫害される恐れがあるということから戻ることができないため、日本で保護する必要があるということとなり日本での居住が認められている。定住支援プログラムというのは、日本語教育および生活を指導するという形で支援するというものである。定住支援プログラムの参加者に対しては、必要な場合には審査の上で最長で1年間に限り生活費を支給するということをしている[3]。
定住支援プログラムとは来日直後から始められるものであり、日本語教育は572時間、日本での生活ガイダンスには120時間が割り当てられている。日本での就職は本人と相談した上で決められており、就労後半年は密着して支援することとしている[5]。
インドシナ難民として日本に定住している人々が、一般的な入国形態で妻や子を呼び寄せるというものがあり、このような場合に来日した人が特別な配慮をするという形で定住支援プログラムを受けるということがある。難民事業本部が定住支援プログラムで日本語教育を行うことになっているのは、インドシナ難民の受け入れがその発端なのであった[6]。
定住支援プログラムを行う場合に、そのための新たな施設を設ける際に、その地域の住民の同意を得られるかが大きな問題となっている。既に施設が設けられている地域では長い間に交流を積み重ねてきた結果、理解と支援を得られるようになっている。だがこれまでとは違った施設で定住支援を行うことになればゼロからはじめることとなるために、地域住民と良い関係を構築することができるかどうかは分からないということは考えておくべきこととなっている[6]。
日本政府は2010年より難民キャンプ等で一時的な庇護を受けた難民を、庇護を受けた国から新たに第三国である日本に移住させるという第三国定住という取り組みを行っている。それ以降約1年に1回のペースで難民の受け入れを進めている。このようにして受け入れた難民に対して定住支援プログラムを実施して、日本社会に定着して日本で安定した自立した生活ができるように支援している[7]。2010年から2021年までは全員がミャンマーからタイやマレーシアに逃れた難民であった[5]。
2014年2月には笹川平和財団が主催する第三国定住難民の受け入れをテーマとするシンポジウムが東京都で開かれて今後の第三国定住のあり方に関する提言が取りまとめられて、そこでは自治体主導の定住支援プログラムを実施するということも含まれていた[8]。
2015年10月13日には東京都で、第三国定住難民でありミャンマーから来日した難民に対する定住支援プログラムが開始される。この難民はマレーシア国内に一時滞在していた難民で、9月29日に来日していた。定住支援プログラムが修了すれば、日本国内での新たな定住先の地域社会で自立した生活を開始する予定とされる。日本政府としては今後も今回の難民を文化や習慣が全く異なる日本社会に定着して安定した自立生活ができるように、幅広い関係者の協力を得ながら支援を実施することとする[9]。
2021年8月にアフガニスタンで政変が起きた際には、そこから日本に移住してきた人々は日本政府に難民認定され、それから定住支援プログラムを受けて日本社会で生活するようになっている[10]。
2023年12月15日に難民事業本部とWELgeeは協力覚書を締結する。このことにより難民事業本部を通じた定住支援プログラムを受けた上でキャリアの再構築を目指している難民に対してはWELgeeの育成事業や就労伴走事業を紹介したりすることができるようにする[11]。
2024年7月1日に法務大臣は、駐日ウクライナ大使と共に公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部RHQ支援センターを訪問して、そこで定住支援プログラムにおける日本語教育の授業を視察して受講生との意見交換が行われた[12]。
2025年3月14日の出入国在留管理庁の発表によると、2024年の補完的保護対象者の97%はウクライナ人であり、この人々には定住者の資格が与えられ、日本で自立した生活が送れるようになるために定住支援プログラムを受けられるようにする[13]。
脚注
- ^ “補完的保護対象者とその家族のための定住支援プログラム”. 2025年10月14日閲覧。
- ^ “条約難民・補完的保護対象者・第三国定住難民への支援について/Підтримка для конвенційних біженців, осіб, що потребують додаткового захисту та переселених біженців з третіх країн | 出入国在留管理庁”. www.moj.go.jp. 2025年10月14日閲覧。
- ^ “条約難民・補完的保護対象者・第三国定住難民への支援について | 出入国在留管理庁”. www.moj.go.jp. 2025年10月14日閲覧。
- ^ “WELgee、難民の就労機会拡大に向けて、難民事業本部(RHQ)と協力覚書を締結 (2023年12月15日)”. エキサイトニュース (2023年12月15日). 2025年10月14日閲覧。
- ^ a b “「定住制度」のミャンマー難民最多の千葉市 民族・宗派越え支え合い:朝日新聞”. 朝日新聞 (2023年2月4日). 2025年10月14日閲覧。
- ^ a b “「第三国定住に関する有識者会議」の第16回会議”. 2025年10月14日閲覧。
- ^ aseanportal_writerworldllc. “ミャンマーからの難民受入、定住支援プログラムを開始”. アセアンポータル. 2025年10月14日閲覧。
- ^ “第三国定住難民 | メールマガジン | JIAM 全国市町村国際文化研修所”. www.jiam.jp. 2025年10月14日閲覧。
- ^ “第三国定住難民(第六陣)に対する定住支援プログラムの開始”. Ministry of Foreign Affairs of Japan. 2025年10月14日閲覧。
- ^ “アフガンとの架け橋に 小山に移住のアミリさん一家 市民らの支援で自立と共生模索|下野新聞デジタル”. 下野新聞デジタル. 2025年10月14日閲覧。
- ^ “WELgee、難民の就労機会拡大に向けて、難民事業本部(RHQ)と協力覚書を締結 (2023年12月15日)”. エキサイトニュース (2023年12月15日). 2025年10月14日閲覧。
- ^ “法務省:小泉龍司法務大臣が、コルスンスキー駐日ウクライナ大使とともに公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部RHQ支援センターを訪問し、意見交換を行いました。”. www.moj.go.jp. 2025年10月14日閲覧。
- ^ “1661人を準難民に認定 24年、97%がウクライナ人”. 毎日新聞. 2025年10月14日閲覧。
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