宇宙のカサノヴァ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/22 00:14 UTC 版)
その男は調査隊員で、基地惑星を出発してから2ヶ月のあいだ仕事を続けていた。宇宙船に乗っているのは彼ひとりだが、すでに30の恒星と5つの恒星系を記録していた。すると遠距離モニターが反応しはじめた。前方から弱い信号がきている。彼は信号の方位を正確に測定し、船をそちらに向けた。このあたりは人類未踏の空間であり、文明を見つければ大発見である。だんだんと信号は強くなってきて、英語の変種のような言葉も聞こえてきた。やがて理解できる英語の音声が届いた。それは女の声で、その惑星で古代英語をしゃべれるただひとりの人間だという。テレビ電波の到達する距離に近づいてから見る彼女は、非のつけようがない容姿だった。彼女からは、この惑星が5000年も前に植民された歴史があること、惑星重力は地球の4分の1などといったことを教えられた。着陸前に男は言った。「こちらはひとりだけ。そちらも代表ひとりだけで来てほしい」。都市から離れた草原に着陸した男の目には、彼女はまぶしいほどだった。だが彼は理解していなかった。5000年ものあいだに、低重力が人間にどんな影響をあたえるかを。彼は背伸びして、彼女の「膝」にしがみついた。
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