天アンカット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/29 07:26 UTC 版)
小口のうち上方である「天」のみを断裁(化粧裁ち)せずに残す製本手法は「天アンカット」とよばれる。岩波文庫・新潮文庫・創元推理文庫・岩波新書 ・ハヤカワ文庫などがこの手法で製本されている。 製本の工程上、小口の三方を切り揃える「三方裁ち」よりも「天アンカット」のほうが手間とコストのかかる手法である。天を断裁せずにすむような紙の折り方(頭合わせ折)をする必要があり、印刷段階からの工夫が必要となるためである。 現在使われる意味での「文庫本」を生み出した岩波文庫(1927年発刊)は、天アンカット・スピン(栞ひも。紐状の栞)つきの造本をおこなった。岩波文庫は「フランス装風の洒落た雰囲気を出すため」この体裁を採用したとされ、後続の文庫本もこの形式を踏襲した。岩波文庫では、スピンは廃止されたものの天アンカットは維持している。新潮文庫の編集部はスピンをこだわりとしており、スピン取り付けのため断裁ができないと説明している。文庫本や新書などの並製本の場合、スピンは工程の最初にカバーに取り付ける必要があるためである。
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