大域次元とは? わかりやすく解説

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大域次元

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/06 18:37 UTC 版)

環論ホモロジー代数において、 A の左(右)大域次元: global dimension)(または大域ホモロジー次元: global homological dimension)、ときには単にホモロジー次元: homological dimension)と呼ばれる)は、すべての左(右) A-加群射影次元の集合の上限として定義される環のホモロジー的不変量である。それは非負の整数か無限大に値をとり l. gl. dim A (r. gl. dim A )と書かれる。さらに両者が一致するときには単に大域次元と言い gl. dim A と書かれる。

一般の非可換環 A に対しては左と右の大域次元は異なるかもしれない[1]。しかしながら、A が左かつ右ネーター環であれば、これらの大域次元は両方とも、定義が左右対称的な弱大域次元に等しいことがわかる[2]。したがって、左かつ右ネーター環に対しては、両者は一致し、大域次元について話すことが正当化される。

大域次元は可換ネーター環の次元論で重要な技術的概念である。

A = k[x1, ..., xn] を k 上の n 変数多項式環とする。このとき A の大域次元は n と等しい[3]。このステートメントはダフィット・ヒルベルトによる多項式環のホモロジー的性質の基礎的な研究にさかのぼる。ヒルベルトのsyzygy定理英語版を参照。より一般的に、R が有限の大域次元 d のネーター環で A = R[x] が R 上一変数の多項式環であれば、A の大域次元は d + 1 に等しい。

自然数 n平方因子を持たないときには環 Z/nZ の大域次元は無限大である[4]

k標数が有限群 G位数を割り切るとき群環 kG の左大域次元は無限大である[4]

1次のワイル代数 A1 は大域次元 1 の非可換ネーター整域である。

大域次元の特徴づけ

A の右大域次元は次の数と等しい[5]

  • すべての巡回A-加群の射影次元の集合の上限
  • すべての右 A-加群の射影次元の集合の上限
  • すべての右 A-加群の移入次元の集合の上限
  • sup{ d≥0 : Extd(M, N) ≠ 0 for some M, N ∈ Mod A }

A の左大域次元は上記リストの「右」を「左」にとりかえることによって得られる同様の特徴づけをもつ。

大域次元による特徴づけ

環の左または右大域次元が 0 であることと半単純であることは同値である[6]

A の左(右)大域次元が1以下であることと A が左(右)遺伝環であることは同値である[7]。とくに、体でない可換単項イデアル整域は大域次元 1 をもつ。

ジャン=ピエール・セールは次のことを証明した。可換ネーター局所環 A正則であるのは大域次元が有限のとき、かつそのときに限る[8]。さらにこのとき、大域次元は Aクルル次元と一致する。この定理によってホモロジー的手法を可換代数に応用する扉が開かれた。

脚注

  1. ^ Rotman 2009, p. 459.
  2. ^ Weibel 1994, Exercise 4.1.1.
  3. ^ Weibel 1994, Corollary 4.3.8 (Hilbert's theorem on syzygies).
  4. ^ a b Rotman 2009, Exercise 8.2
  5. ^ Weibel 1994, Theorem 4.1.2.
  6. ^ Weibel 1994, Theorem 4.2.2.
  7. ^ Weibel 1994, Theorem 4.2.11.
  8. ^ Matsumura 1989, Theorem 19.2 (Serre).

参考文献

関連項目




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