塗装工のパラドックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 05:17 UTC 版)
「ガブリエルのラッパ」の記事における「塗装工のパラドックス」の解説
ガブリエルのホルンは有限の体積と無限の表面積を持つのだから、有限の量のペンキでそれを満たすことができるように思われるのに対して、その満たしたペンキでホルンの内側面を塗り尽くすことはできないようにも思われる(ここにパラドックスが生じる)。実際には、数学の理論的な意味においては有限な量のペンキで無限の面積を塗ることは「可能」である。それはペンキの皮膜の厚みが、無限に拡大していく面積に追随できる程度に「十分速く」薄くなれば実現できる(カブリエルのホルンの場合、ホルンの先が細くなるにつれてそうなることを余儀なくされる)。しかし、ホルンの外側面を一定の厚みで覆うには、それをどれほど薄くしても無限の量のペンキが必要となるであろう。 もちろん現実には、ペンキは無限に分割することができないし、ある点においてホルンは一つの分子さえも通さないほどに細くなる。しかし当のホルンも分子で出来ているし、それゆえにその表面も連続的な滑らかな曲線ではなく、またそれゆえにこのホルンを離散的な粒子と離散的な距離から形作られる物理空間の支配領域へ持ち込めば、上記の論法は全体として破綻する。我々は原子や量子のサイズを下回ってゼロに滑らかに近づける極限が取れる世界(数学的な連続性を持つ世界)における理想的なペンキについて述べねばならないのである。
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