地蔵川 (名古屋市)とは? わかりやすく解説

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地蔵川 (名古屋市)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/11 13:05 UTC 版)

地蔵川
花壇橋付近での地蔵川。(2023年(令和5年)11月)
水系 二級水系 天白川
種別 普通河川[1]
延長 0.762[1] km
流域面積 1.41[1] km2
水源 名古屋市天白区土原
河口・合流先 天白川
流域 愛知県名古屋市天白区

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地蔵川(じぞうがわ)は、愛知県名古屋市天白区を流れる天白川水系普通河川[2]。かつては島田川(しまたがわ)とも呼ばれた[3][4]

名古屋市域内には、かつて大幸川の支川にも地蔵川という名称の河川があったが(現在は消滅)、全く別の河川である。

概要

天白川の一次支川名古屋市長の管理である[2]。名古屋市天白区島田の、かつて一ツ山と呼ばれた丘陵地に源を発し[5][6]、新池を経て新島田橋付近で天白川に合流[注釈 1]伊勢湾に注ぐ。新池より下流は全長762メートル[1]、流域面積約1.41平方キロメートル[1]。新池より下流はほぼ全ての区間が暗渠となっている。

現在、地蔵川とされる範囲は新池より下流のみとする場合[2][7]とそれより上流(花壇橋等)を含む場合[8]とがある。

尾張藩によって編纂された[9]『尾張志』では、「島田むらにあり」と記されている[10]。天白川水系で記載された8河川のうちの一つである[注釈 2][10]

名称の由来

地蔵川という名称は、下流域に地蔵寺(島田地蔵寺)があることに由来する。江戸前期頃には島田川と呼ばれたが、現在では地蔵川という呼称が一般的になっている。以下に史料ごとの名称を示す(「記載なし」は、絵図に描かれてはいるが、名称が記されていないものを示している)。

史料ごとの地蔵川の名称
史料 地蔵川 島田川シマタ川 (記載なし)
『尾張国画図』[11](1785年)
『張州之図』[3](江戸後期)
『尾張美濃参河飛騨信濃五ケ国絵図』[4](江戸後期)
『愛知郡村邑全図』[12](1800年ごろ)
『尾張八郡画図』[13](1825年ごろ)
『尾張志』[10](1844年)
『大日本輿地便覽』[14](1834年)
『国郡全図』[15](1838年)
『尾張国輿地全図』[16](1850年ごろ?)
『尾張国愛知郡図』[17](1892年ごろ)
『愛知県林業報告』[18](1926年)
『愛知県砂防及荒廃地復旧事業概要』[19](1929年)
『愛知県令規集』[20](1931年)
『尾三郷土史料叢書』[21](1934年)
(現代)

関連する地名

天白区島田にある『曲尺手』という小字は、天白川と地蔵川の合流点がかねのて状であったことに由来するとされる[22]

災害と治水

江戸時代には、地蔵川下流部に南北の堤共に約120メートルの堤防が造られた[20][21]

明治時代には、上流部の樹木を伐採したことなどにより、天白川水系全体で土砂流出が目立ち、地蔵川流域でも大きな被害があった[18][19]明治維新の際に堤防やため池の土堰堤の修繕を欠いたことも被害拡大の要因になったとされる[18]。地蔵川ではその後、大正時代に堰堤の修繕がなされている[23]

愛知県は堰堤の修繕に計238.548円を費やしている[23]

大正時代の土堰堤修繕[23]

  1. 土堰堤水叩修繕 - 6.092平坪(約20.1平方メートル)/179.138円/(割れた個所を修繕。)
  2. 土堰堤張石ヶ所修繕 - 0.135平坪(約0.4平方メートル)/24.410円/(コンクリートを使用。)

2000年(平成12年)に発生した東海豪雨時には新池が溢水し、周辺地域が浸水した[24]。その後、地蔵川・新池と天白川の関係について公開請求が行われたが[25]、それに関する行政文書が存在しない(天白川合流点にある地蔵川の水門は、水圧によって自動的に開閉する仕組みとなっており、水量などの情報を取得する設備がない[25])ことなどを理由に却下されている[25]

堤防

江戸時代につくられ、普請奉行が支配していた[21]。南堤64間(約116メートル)、北堤70間(約127メートル)であった[20][21]

堤防には桜並木が植えられていた[26][27]ほか、南堤の堤上には伊保街道が通り、天白川の旧島田橋へと続いていた[21]。堤防下には平針方面からの水路(愛知郡村邑全図では『悪水落』と記されている[12])が伏せ越していた[21][26]。堤防のある下流部の川幅は5間(約9メートル)であった[6]。戦後の土地区画整理事業によって、現在では消滅している。

ため池

地蔵川の各流路にはいくつかのため池が設けられ、その中でも新池と西ノ杁池の二つの池が大規模であった[26]。区画整理により、現存するのは新池のみである。

新池(しんいけ)

植田の新池(御小納戸池)などと区別するために島田新池とも呼ばれる[28]。農業用ため池。

戸笠池や天白渓上池下池、御小納戸池などと同様、現在の名古屋市南区方面(南野村・桜村・本地村など)へ水を引くため池であり[29]、島田村のため池ではなかった。1800年ごろの『愛知郡村邑全図』時点では描かれていない[12]

現存し、現在では雨水調整池としての機能を持つ。洪水調節容量は19000立方メートル、池の面積は1.2ヘクタール[30]

2000年(平成12年)に発生した東海豪雨時には溢水し、周辺地域が浸水している[24]

西之杁池(にしのいりいけ)

新池の上流に設けられた農業用ため池。名の通り、池の西側から水が流出していた[26]。現在の島田交番周辺にあったが、区画整理の際に埋め立てられた[26]

天白区内に存在する西入町という町名はこの池の名に由来する[5]

橋梁

区画整理により暗渠化される以前は多数の橋が架けられていたが、現在ではほとんどの橋が消滅している[26]

  • その他、名称不明の橋も存在する。

流域の周辺施設

ギャラリー

天白区写真パネルリストには、戦前の地蔵川の写真が含まれている[27]

脚注

注釈

  1. ^ 地蔵川合流点付近では植田川も合流している。
  2. ^ 他には天白川扇川手越川植田川前川黒木川中井川が記載されている(『手越川』にて、藤川、旭出川、百々川も言及されている)[10]

出典

  1. ^ a b c d e 名古屋市環境局ほか 2021, p. 1.
  2. ^ a b c 名古屋市総合排水計画”. 名古屋市. 2023年11月5日閲覧。
  3. ^ a b 『張州之図』尾張藩。 
  4. ^ a b 『尾張美濃参河飛騨信濃五ケ国絵図』尾張藩、江戸後期。 
  5. ^ a b 天白区の町名の由来(天白区)”. 名古屋市. 2023年11月5日閲覧。
  6. ^ a b 『天白村誌』愛知県郷土資料刊行会、1956年5月3日。 
  7. ^ 『名古屋の河川 改訂第3版』名古屋市土木局河川部計画課、1991年。 
  8. ^ 天白川 流域委員会②”. 愛知県河川整備計画流域委員会. 2024年1月14日閲覧。
  9. ^ 尾張志(おわりし)”. 貴重和本デジタルライブラリー. 愛知県図書館. 2023年12月29日閲覧。
  10. ^ a b c d 『尾張志』尾張藩、1844年。 
  11. ^ 『尾張国画図』1785年。 
  12. ^ a b c 『愛知郡村邑全図』尾張藩、寛政。 
  13. ^ 『尾張八郡画図』。 
  14. ^ 山崎 義故『大日本輿地便覽』1834年。 
  15. ^ 青生東谿『国郡全図』1838年。 
  16. ^ 高柴三雄『尾張国輿地全図』。 
  17. ^ 尾張国愛知郡図”. 西尾市岩瀬文庫/古典籍書誌データベース. TRC-ADEAC株式会社. 2024年1月5日閲覧。
  18. ^ a b c 『愛知県林業報告 第17号』愛知県、1926年。 
  19. ^ a b 『愛知県砂防及荒廃地復旧事業概要』愛知県内務部林務課、1929年。 
  20. ^ a b c 『愛知県令規集 : 参考条文插入加除自在 第3(第10至11類)』現行法規出版社、1931年。 
  21. ^ a b c d e f 『尾三郷土史料叢書 第7編』愛知県教育会、1834年。 
  22. ^ 名古屋市『なごやの町名』名古屋市計画局、1992年3月。 
  23. ^ a b c 『愛知県林業報告 第19号』愛知県、1926年。 
  24. ^ a b 過去から学ぶ 防災マップ”. 天白区. 2024年6月1日閲覧。
  25. ^ a b c 第128号 答 申”. 名古屋市. 2024年6月1日閲覧。
  26. ^ a b c d e f g 名古屋市都市計画情報提供サービス”. 名古屋市. 2023年11月5日閲覧。
  27. ^ a b 写真パネルリスト”. 2023年11月5日閲覧。
  28. ^ 浅井金松『天白区の歴史』愛知県郷土資料刊行会〈名古屋区史シリーズ〉、1983年12月1日。 
  29. ^ 浅井金松『天白区の歴史 続』愛知県郷土資料刊行会〈名古屋区史シリーズ〉、1987年。 
  30. ^ 『新池 概要』名古屋市。 
  31. ^ a b 全国橋梁マップ”. 全国Q地図. 2024年3月5日閲覧。

参考文献

  • 『市内河川・ため池・名古屋港の水質の変遷』名古屋市環境局地域環境対策部地域環境対策課・名古屋市環境局地域環境対策部環境科学調査センター・名古屋市緑政土木局下線部河川計画課、2021年3月。 

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