吸管虫とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 自然 > 生物 > 原生生物 > 原生生物 > 吸管虫の意味・解説 

きゅうかん‐ちゅう〔キフクワン‐〕【吸管虫】

読み方:きゅうかんちゅう

繊毛虫綱吸管虫目の原生動物の総称淡水海水広く生息細胞体に餌をとるためのとげ状の吸管を多数もつ。出芽接合によって増殖幼生には繊毛がある。


吸管虫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/14 00:59 UTC 版)

吸管虫亜綱
繊毛虫 Colpidium (右)を捕食する吸管虫の一種(左)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: アルベオラータ Alveolata
: 繊毛虫門 Ciliophora
: 層状咽頭綱 Phyllopharyngea
亜綱 : 吸管虫亜綱 Suctoria
学名
Suctoria
Claparède & Lachmann 1858
  • ハリヤマスイクダムシ目(外生芽類) Exogenida
  • ボンボリスイクダムシ目(内生芽類) Endogenida
  • ハナエダスイクダムシ目(外転芽類) Evaginogenida


吸管虫(きゅうかんちゅう、すいくだむし、Suctoria)は、特殊化した繊毛虫の一群で、触手によって捕食を行う単細胞生物である。単細胞生物としては大型で、大きいものでは体長数百μmに達する。

特徴

繊毛虫の仲間ではあるが、生活環の大部分を占めるトロフォント (trophont) は繊毛を持たない。この状態の細胞はほとんどが固着性で、基物に直接、或いは柄を介して接着しており、積極的な移動を行わない。細胞の形態は他の繊毛虫とは異なった傾向ながら多彩で、球状、アメーバ状、樹状など様々である。殻(ロリカ)を持つ種もある。

吸管虫の最大の特徴は、細胞表面から出る触手 (tentacle) である。種によってこの触手を生じる部位は決まっており、細胞の概形と共に光学顕微鏡レベルでの分類には有用な形態形質である。一部の属(RhynchetaRhynchophrya)では伸縮性に富む。大部分の吸管虫では触手は分岐せず、基部から末端に至るまで均一な太さであるのに対して、先端が球形に膨大しており、他の原生生物と吸管虫とを見分ける重要な特徴となっている。なお、ハナエダスイクダムシ科の属、CometodendronDendrocometes及びDendrocometides等では分枝型の触手を持つ。

触手の主要な機能は捕食であり、他の原生生物藻類を餌とする。触手の先端にはハプトシスト(haptocyst、毒胞の一種)と呼ばれるエクストルソーム(extrusome、射出器官)が備わっており、餌が接触するとこれを放出して相手の細胞膜に打ち込み、膜融合を行う。続いて触手内部の微小管が管状の構造を形成し、この内部を通して餌の細胞質を吸収する。捕獲用と摂食用の触手を使い分ける種と、両機能を兼ねた触手を持つ種とがある。

吸管虫の細胞形態はしばしば他の原生生物、いわゆる太陽虫類や放散虫類、糸状仮足アメーバ類と類似するが、前述のように触手の先端の形態から区別可能である。電子顕微鏡レベルの観察では、これらの生物の触手や仮足は断面の微小管配置により厳密に区別される。また、触手と呼ばれる構造を持つ他の単細胞真核生物として、渦鞭毛藻ヤコウチュウ Noctiluca不等毛藻のペディネラ Pedinella 類が挙げられるが、これらの生物が持つ触手は相同器官ではなく、呼称上の都合で同じ名称を持っているだけである。

生活環

生活環として、無性生殖有性生殖の両方が知られ、前者は分裂又は出芽による。無性生殖の様式は以下の3つに分類される。

  • 出芽や分裂は親細胞の表面で起こる(外生)。
  • 出芽はポーチ(pouch、親細胞の細胞質陥入部)内で起こる。幼生はポーチの孔から出る(内生)。
  • 出芽はポーチで起こる。細胞質分裂はポーチ内で始まり、ポーチの外で完成する(外転)。

出芽により生じた娘細胞は繊毛を持ち、遊泳して定着場所を探す。基物に付着して触手が発達すると、繊毛を失いトロフォントとなる。

有性生殖としては、一部の種でテトラヒメナゾウリムシといった他の繊毛虫と同様に接合が観察されている。

分布

淡水及び海水に普通。特にトロフォントは淡水中の底泥や沈殿物表面に良く見られる。ミジンコなどのカイアシ類の体表に付着している場合 (ectosymbiotic) もある。

分類

生活環の中に繊毛を持つステージがあることから、繊毛虫の中の一群と見なされてきた。分子系統解析の結果もこれを支持する。亜綱内の分類は出芽及び分裂の様式による。

吸管虫亜綱 Subclass Suctoria

  • Order Exogenida ハリヤマスイクダムシ目(外生芽類)
    • Phalacrocleptidae
    • Stylostomatidae
    • Rhabdophryidae
    • Ophryodendridae
    • Spelaeophryidae タマスイクダムシ科
      • Spelaeophrya タマスイクダムシ属
    • Ephelotidae ハリヤマスイクダムシ科
      • Ephelota ハリヤマスイクダムシ属
    • Parapodophryidae
    • Podophryidae
    • Tachyblastonidae
    • Metacinetidae
    • Thecacinetidae
    • Paracinetidae
    • Urnulidae
    • Corynophryidae
  • Order Endogenida ボンボリスイクダムシ目(内性芽類)
    • Dendrosomatidae
    • Trichophryidae
    • Enchelyomorphidae
    • Endosphaeridae
    • Acinetidae
    • Tokophryidae ボンボリスイクダムシ科
      • Tokophrya ボンボリスイクダムシ属
  • Order Evaginogenida ハナエダスイクダムシ目(外転芽類)
    • Cyathodiniidae
    • Dendrocometidae ハナエダスイクダムシ科
      • Dendrocometes ハナエダスイクダムシ属
    • Discophryidae

参考文献

  • Lee JJ, Leedale GF, Bradbury P. (2000) The Illustrated Guide to The Protozoa, 2nd. vol. I pp. 528-45. Society of Protozoologists, Lawrence, Kansas. ISBN 1-891276-22-0
  • Hausmann K, Hulsmann N, Radek R. (2003) Protistology 3rd. E. Schweizerbart'sche Verlagsbuchhandlung, Stuttgart. ISBN 3-510-65208-8

「吸管虫」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



吸管虫と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「吸管虫」の関連用語

吸管虫のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



吸管虫のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの吸管虫 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS