同値な分数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 08:21 UTC 版)
分数は比や割合といった概念に対応しており、0 でない数 a を分母と分子にそれぞれかけても割っても、その分数の表す数は変わらない。 n m = n × a m × a = n ÷ a m ÷ a ( a ≠ 0 ) . {\displaystyle {n \over m}={n\times a \over m\times a}={n\div a \over m\div a}\quad (a\neq 0).} m と n が整数で公約数 d を持つとき、適当な整数 a, b によって { m = a × d n = b × d {\displaystyle {\begin{cases}m&=a\times d\\n&=b\times d\end{cases}}} の形に書かれ n m = b × d a × d = b a {\displaystyle {n \over m}={b\times d \over a\times d}={b \over a}} となる。このように分母と分子を公約数で割る操作を、分数の簡約(かんやく、英: reduction)あるいは縮めて約分(やくぶん)と呼ぶ。m と n が互いに素である分数 n/m を既約分数(きやくぶんすう、英: irreducible fraction)といい、ある分数が既約分数であることを「(その分数は)既約である」という。ある分数が既約である場合、分母と分子の最大公約数が 1 であるため、約分によって別の分数表現を得ることはできない。分数が既約でない場合、その分数は可約(かやく、英: reducible)または約分可能であるという。可約な分数は常に既約分数に直すことができ、逆に既約分数を可約分数に書き直すこともできる。 260 364 = 4 × 65 4 × 91 = 65 91 = 5 × 13 7 × 13 = 5 7 . {\displaystyle {260 \over 364}={4\times 65 \over 4\times 91}={65 \over 91}={5\times 13 \over 7\times 13}={5 \over 7}.} これらの分数は同じ数を表しているが、右辺の 5/7 は 5 と 7 が互いに素なので既約分数であり、それ以外の 260/364 などの分数は可約である。 1024 1296 = 16 × 64 16 × 81 = 64 81 . {\displaystyle {1024 \over 1296}={16\times 64 \over 16\times 81}={64 \over 81}.} このように、1024 と 1296 は最大公約数が 16 なので、分子・分母を16で割った 64/81 が既約分数になる。 分母や分子が整数の場合に限らず、多項式などであっても因数分解が定義されているならば、分母と分子に共通な因数を見出すことができ、その因数が乗法単位元でない場合、約分をすることができる。たとえば x 3 − 5 x 2 + 8 x − 4 x 3 − x 2 − 8 x + 12 = ( x − 1 ) ( x − 2 ) 2 ( x + 3 ) ( x − 2 ) 2 = x − 1 x + 3 {\displaystyle {x^{3}-5x^{2}+8x-4 \over x^{3}-x^{2}-8x+12}={(x-1)(x-2)^{2} \over (x+3)(x-2)^{2}}={x-1 \over x+3}} は分数式の約分である。分数式の分子分母における x は不定元であり、特別な値を持たない。x を不定元でなく具体的な数であると見なす場合、上記の分数表現は破綻することに注意しなければならない。左辺の可約な分数に x = 2 を代入した場合、分子も分母も因数として (x − 2) を持つために、分数は 0/0 となり、(通常の代数においては)未定義の数となるが、しかし右辺の既約分数に対しては代入の結果が 1/5 に定まる。どちらの結果が適切であるかは場合によって異なり、x = 2 という条件の下で左辺の分数が得られたならばその数は未定義となるし、右辺の分数が得られたならその値は 1/5 に定まる。
※この「同値な分数」の解説は、「分数」の解説の一部です。
「同値な分数」を含む「分数」の記事については、「分数」の概要を参照ください。
- 同値な分数のページへのリンク