可除性、素元と既約元
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 02:45 UTC 版)
「同伴」は抽象代数学における整域の元について説明しているこの項目へ転送されています。政治的な批評用語については「同伴者」を、その他の用法については「wikt:同伴」をご覧ください。 a と b が整域 R の元であるとき、「a が b を割る(整除する)」あるいは「a が b の約元である」「b が a の倍元である」ということを、ax = b を満たす R の元 x が存在することを以って定義する。このとき、a | b と表す。 乗法単位元を割るような元は R の単元と呼ぶ(これはちょうど R の可逆元の概念と一致する)。単元は他の全ての元を整除する。 a が b を整除し、かつ b が a を整除するならば a と b は同伴 (associate) する、あるいは互いに同伴な元であるという。 単元でないような元 q について、q が既約元であるとは、q が単元でない二つの元の積に表されることが無いときにいう。 零元でも単元でもない元 p について、 p が素元であるとは、p が任意の積 ab を割るならば必ず p が a または b の約元となるときにいう。このことは、「その元が生成するイデアルが素イデアルであるような元を素元という」と言っても同じである。任意の素元は既約元である。逆にGCD整域(例えば UFD)において任意の既約元は素元となる。 素元の概念は、(負の素元が許されることを除けば)有理整数環 Z における素数の概念の一般化になっている。任意の素元が必ず既約元となることに対し、その逆は一般には真でない。例えば二次整数環 Z [ − 5 ] {\displaystyle \mathbb {Z} [{\sqrt {-5}}]} において、数 3 は既約だが素元でない。実際、3 のノルムである 9 は ( 2 + − 5 ) ( 2 − − 5 ) , 3 × 3 {\displaystyle (2+{\sqrt {-5}})(2-{\sqrt {-5}}),\quad 3\times 3} という二種類の分解を持つが、このとき 3 は積 ( 2 + − 5 ) ( 2 − − 5 ) {\displaystyle (2+{\sqrt {-5}})(2-{\sqrt {-5}})} を割るが、 2 + − 5 {\displaystyle 2+{\sqrt {-5}}} も 2 − − 5 {\displaystyle 2-{\sqrt {-5}}} も割らない。数 3 および 2 ± − 5 {\displaystyle 2\pm {\sqrt {-5}}} が既約であることは a2 + 5b2 = 3 が整数解を持たないことなどから分かる。 上記の例では素元分解の一意性が満足されないが、イデアルを考えれば一意的なイデアル分解が得られる。ラスカー-ネーターの定理も参照。
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