伊藤哲夫 (政治活動家)
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伊藤 哲夫(いとう てつお、1947年9月23日[1] - )は、日本の政治活動家。日本政策研究センター代表、日本会議常任理事(政策委員)[2][3][4]、神道政治連盟政策委員[5]、日本李登輝友の会常務理事[2]、元生長の家中央教育宣伝部長[6]。
略歴
新潟県上越市生まれ[1]。新潟大学人文学部卒業[2]。生長の家の「飛田給派」(現・生長の家本流運動)の一員だったが、教団が政治活動から手を引いたため自身も教団を抜け、1984年、「日本政策研究センター」を設立[2]。日本会議常任理事を務める[2][4]。1996年には、選択的夫婦別姓制度導入に反対する「夫婦別姓に反対し家族の絆を守る国民委員会」の呼びかけ人を務めている[7]。
生長の家との関係
- 伊藤は生長の家の「飛田給派」の一員であり、元生長の家中央教育宣伝部長、元生長の家学生会全国総連合(生学連)理論強化部担当役員だった[6][8]。
- 伊藤は、1970年に椛島有三、衛藤晟一、高橋史朗、百地章らとともに、生長の家の関連団体「日本青年協議会」を設立した[9]。
- 生長の家の関連団体「日本青年協議会」の機関紙『祖国と青年』1978年2月号に、伊藤の詠んだ和歌が掲載された[10]。
- 「日本を守る国民会議」が主催した第6回憲法シンポジウムの討論会で、伊藤が「日本政策研究センター代表」として司会を務めたことが、『祖国と青年』1988年8月号に掲載された[11]。伊藤、大原康男、平沼赳夫、加瀬英明(統一教会の関連団体「世界平和教授アカデミー」常任理事)、村松剛らの討論の詳細な内容が『祖国と青年』1988年8月号に掲載された[11]。
- 1996年2月16日、生長の家の関連団体「日本青年協議会愛知祖青の会」や、日本を守る愛知県民会議などが共催した「21世紀フォーラム」が開催され、伊藤、新田均、岸本幸夫、馬淵雅宣らがパネル・ディスカッションをした様子が、『祖国と青年』1996年4月号に掲載された[12]。
- 1998年3月15日、椛島有三(日本青年協議会会長、日本会議事務総長)や、衛藤晟一らが主催した「全九州学生ゼミナール30回記念フォーラム」で、伊藤は講演した[13]。
- 2000年10月29日、日本青年協議会が主催した「日本青年協議会結成30周年特別討論」で、伊藤は椛島有三とともに講演をした[14][15]。
- 2000年12月3日に開催された「第三回東京青年フォーラム」で、伊藤は平沢勝栄とともに講演をした[16]。このフォーラムの連絡先は日本青年協議会だった[16]。
日本政策研究センター
「日本政策研究センター」は、生長の家学生会全国総連合(生学連)OBを中心に、伊藤が設立した「生長の家」の関連団体であり、「日本会議」のシンクタンクである。伊藤は、この設立した「日本政策研究センター」の設立当時の目標について、「『国家の精神的基礎』ということに焦点をあてた研究を行い、そこから政策提言を、というのがその頃のわれわれが描いた当面の目標」としている[17][18]。
「次から次へとモグラたたきのように生起する左翼勢力の仕掛けに、受動的・後追い的に振り回されるのではなく、むしろこちらから攻勢的に戦いを仕掛けるべき時にきているのではないか」という認識から「保守革命」を目指し、特に、歴史認識、従軍慰安婦、選択的夫婦別姓反対、反ジェンダーフリーを重要な論点であるとしている[17][18]。
同センターは、憲法改正を主張し、その憲法改正のポイントとして、以下の3点を挙げている[19]。
- 緊急事態条項の追加。非常事態に際し、「三権分立」「基本的人権」等の原則を一時無効化し、内閣総理大臣に全権限を与える(=戒厳規程制定)。
- 家族保護条項の追加。日本国憲法第13条の「すべての国民は、個人として尊重される」文言と、憲法24条の「個人の尊厳」の文言を削除し、新たに「家族保護条項」を追加する。
- 自衛隊の国軍化。日本国憲法第9条第2項を見直し、明確に戦力の保持を認める。
文藝春秋コラム「赤坂太郎」で、日本政策研究センターを「安倍晋三の有力なブレーンとなっている右派のシンクタンク」としている[20]。
活動
人物
- 自民党の国会議員と連携して活動している[22][23]。
- 2006年春から6月にかけて、伊藤は八木秀次、西岡力、島田洋一、中西輝政らと会合を重ね、来るべき「安倍政権」の課題について議論した。彼らは「五人組」と称され、この時期、安倍晋三の重要なブレーンとして知られた[22][3]。安倍は同年9月20日に行われた自民党総裁選で初当選。9月26日に首相に就任した。
- 冷戦下で反共路線をとっていた頃の宗教法人生長の家で学生運動[24]、大学の自治会掌握をめざす行動に参加していた[25]。『理想世界』では、同宗教法人の青年会中央教育宣伝部長などを務めたとされる[26]。
- 教育勅語について、「教育勅語の精神が日本人の心の中に民族のDNAとして、ささやかな形ではあれ、依然として残されている」と述べる[27][28]。
著作
- 『経済大国と天皇制 ―国家の精神的基盤とは何か―』(オーエス出版, 1987年 2004年から「インデックス・コミュニケーションズ」) ISBN 4871902501
- 『天皇即位と大嘗祭 ―憲法第一条・もう一つの読み方―』 (オーエス出版, 1989年 2004年から「インデックス・コミュニケーションズ」) ISBN 4-87190-263-3
- 『憲法はかくして作られた』[注 1](日本政策研究センター, 1999年) ISBN 978-4-902373-21-9
- 『憲法かく論ずべし ―国のかたち 憲法の思想―』 (日本政策研究センター, 2000年) ISBN 4-88471-201-3
- 『憲法神話の呪縛を超えて』 (日本政策研究センター, 2004年) ISBN 4-902373-05-X
- 『美しい国再生への提言 ―地方経済・農林業の「グリーン化」が日本を救う―』 (日本政策研究センター, 2009年) ISBN 978-4-902373-27-1
- 『国家なき日本を問い直す』 (日本政策研究センター, 2011年) ISBN 978-4-902373-36-3
- 『教育勅語の真実』(致知出版社, 2011年)ISBN 978-488474939-2
- 『日本国家の「かたち」を考える』 (日本政策研究センター, 2012年) ISBN 978-4-902373-42-4
- 『明治憲法の真実』(致知出版社, 2013年)ISBN 978-480091003-5
脚注
注釈
出典
- ^ a b 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.299
- ^ a b c d e 代表者のプロフィール(日本政策研究センター)
- ^ a b “日本会議研究 憲法編 下 家族尊重 条文明記を主張”. 朝日新聞: p. 朝刊14版 3面. (2016年3月25日)
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: 不明な引数|1=
が空白で指定されています。 (説明)⚠ - ^ a b 「安倍政権を完全支配する『日本会議』の正体」、フライデー、2014年8月22・29日号
- ^ 『神政連レポート 意』No.208、神道政治連盟、2019年4月15日。
- ^ a b 菅野完 2016, pp. 198–200.
- ^ 「日本会議、夫婦別姓に反対 『タテの流れから遮断』」、朝日新聞、2016年6月19日。
- ^ “現代宗教 2018”. 2025年4月6日閲覧。
- ^ “【魚拓】”. ウェブ魚拓. 2025年4月5日閲覧。
- ^ “国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2025年4月5日閲覧。
- ^ a b “国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2025年4月5日閲覧。
- ^ “国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2025年4月5日閲覧。
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- ^ “国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2025年4月5日閲覧。
- ^ a b “国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2025年4月5日閲覧。
- ^ a b 「明日への選択」平成16年(2004年)5月号
- ^ a b 「安倍晋三の『保守革命』路線に託された4つのテーマ――シリーズ【草の根保守の蠢動 第16回】」、Harbor Business Online、2015年10月3日
- ^ 「安倍政権と筆頭ブレーンが目指す『憲法改正』。そして明言された『明治憲法復元』【草の根保守の蠢動 第17回】」、Harbor Business Online, 2015年10月17日
- ^ 「安倍政権の命運を握る『新・四人組』」、文藝春秋、2013年1月10日
- ^ 「ご協力者御芳名」、『教育再生』、日本教育再生機構、2015年9月号
- ^ a b 竹内洋一、山川剛史「こちら特捜部 『安倍氏』ブレーンどんな人?(上) 靖国、拉致、教育問題...思いっ切り保守5人組」 『東京新聞』2006年9月9日付朝刊、特報1面、24頁。
- ^ 日本政策研究センターとは 設立と沿革 日本政策研究センター
- ^ “日本会議研究 家族編 上 「親学」にじむ憲法観」”. 朝日新聞. (2016年6月17日)
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が空白で指定されています。 (説明)⚠。 - ^ 藤生明 (2016年11月9日). “日本会議をたどって 2 民族派で自治会を握る”. 朝日新聞
{{cite news}}
: 不明な引数|1=
が空白で指定されています。 (説明)⚠ - ^ 『理想世界』昭和51年(1976年)11月号
- ^ 『教育勅語の真実』(致知出版社、2011年)ISBN 4884749391
- ^ こんなに出ている! 知られざるトンデモ「教育勅語」本の世界、文春オンライン、2017年5月3日
- ^ 「憲法はかくして作られた」、生長の家本部政治局(編)、明るい日本を作るシリーズ刊行会、1980年11月。
参考文献
- 菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書、2016年5月。ISBN 978-4-594-07476-0。
外部リンク
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