交響曲第2番 (バックス)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 交響曲第2番 (バックス)の意味・解説 

交響曲第2番 (バックス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/20 00:35 UTC 版)

交響曲第2番 ホ短調/ハ長調 は、アーノルド・バックスが1926年に完成させた交響曲

概要

バックスは1924年10月10日に2作目の交響曲の作曲に着手しており、簡略譜には同日の日付が書き入れられている[1]。しかし彼はそこからのオーケストレーションに手間取ることになる[1]ジュネーヴにおいて1924年から1925年にかけての冬に書き進められ[2][注 1]、それ以降も断続的に仕事が進められていった結果[3]、ようやく1926年3月26日に全曲を完成させることが出来た[3]

完成後、曲はしばらくそのままにされていたが、ボストン交響楽団のために新作を探していたセルゲイ・クーセヴィツキーからバックスに声がかかる[1]。クーセヴィツキーが粘り強く交渉を続けた結果[3]、楽譜の出版が決定し、1929年12月13日と14日に初演が行われる運びとなった[1]。初演を行ったのはクーセヴィツキーとボストン交響楽団である[2][3]。曲はクーセヴィツキーへと献呈されており[2][3]、これは彼に対する感謝の表明である思われる[1]

1930年5月20日には、ロンドンのクイーンズ・ホールにおいてユージン・グーセンス指揮によりイングランド初演が行われた[2][3]。この数か月前には交響曲第3番が発表されて成功を収めていた[1]。それを受けて音楽評論家のエドウィン・エヴァンスは、バックスの最初の3つの交響曲には「異なる段階にありながらも同じ精神状態であったと思われるものに端を発しており、この交響曲群にはある種の連続性があるように思われる」とコメントしている[1]

本作は交響曲第1番にも増して荒んだ心境を露わにしているが、それは作曲者の個人的な感情を表したものである[1]。バックス自身は本作について「壊滅的であり抑圧的」であると語っていた[2]。曲の内容にはシベリウスリヒャルト・シュトラウスニールセンらの影響が感じられる[2]

演奏時間

約39分[2]

楽器編成

バックスは非常に大規模な編成を要求している[1][2]。そのオーケストレーションがもたらす独自の色彩は特筆すべきものとなっている[1]

フルート3(1人はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、コーラングレクラリネット3、バスクラリネットファゴット2、コントラファゴットホルン4、トランペット3、トロンボーン2、バストロンボーンユーフォニウムチューバティンパニバスドラムタンバリンシンバルシロフォングロッケンシュピールチェレスタピアノハープ2、オルガン弦五部[3]

楽曲構成

第1楽章

Molto moderato - Allegro moderato

60小節あまりの緩やかな序奏で開始する。その最初の19小節で提示される4つの材料が、両端楽章において幾度も登場することになる[1]。主部に至るとクラリネットから第1主題が提示され、やがてフルートとチェロの独奏によって第2主題が示される[3]。これら2つの主題と序奏部の素材が、リヒャルト・シュトラウスを想起させる管弦楽の響きにより展開される[3]。両主題が再現を受け、楽章は終わりを迎える。

第2楽章

Andante

1916年に作曲された管弦楽曲『パトリック・ピアースを偲んで』を引用するこの楽章については、ヴァーノン・ハンドリーはバックスの全交響曲の中でも屈指の美しい緩徐楽章であると述べている[4]。楽章はフルートとハープによって開始され[3]、序奏部の3つ目の材料が重要な役割を果たす[1]。ヴァイオリンに出る主題に次いで2つ目の抒情的な主題を弦楽器が奏してクライマックスを形成する[1]。オルガンにト音が保持される個所は、「壊滅的であり抑圧的」という作曲者の表現を思わせる[1]。ヴァイオリンの独奏により主題が回帰した後[3]、楽章は寒々しく、不安げな様子で閉じられる[1]

第3楽章

Poco largamente - Allegro feroce - Molto largamente

力強く、むき出しの音楽となっている[4]。バックスはこの楽章でホルンに対して「粗野に奏すること」との指示を与えている[2]。10小節の短い序奏が置かれた後[1][3]、激した音楽が開始される[3]。行進曲調のエピソードを経て、第1楽章序奏部から12小節がそのままの形で引用される[1][3]。長大なコーダが付されており、第1楽章冒頭に似た雰囲気の中、次第に消え入るようにして全曲を結ぶ[1][3]

脚注

注釈

  1. ^ ジュネーヴには愛人関係にあったハリエット・コーエン転地療養に訪れていた[2]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Booklet for CD, Lewis Foreman (1990), Bax: Complete Symphonies, Chandos, CHAN 8906-10.
  2. ^ a b c d e f g h i j Mahon, Tim. 交響曲第2番 - オールミュージック. 2023年2月22日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o Booklet for CD, Keith Anderson, Bax: Symphony No. 2, November Woods, Naxos, 8.554093.
  4. ^ a b Booklet for CD, Lewis Foreman, Vernon Handley (2003), Bax: Symphonies, Chandos, CHAN 10112.

参考文献

  • CD解説 Lewis Foreman (1990), Bax: Complete Symphonies, Chandos, CHAN 8906-10.
  • CD解説 Lewis Foreman, Vernon Handley (2003), Bax: Symphonies, Chandos, CHAN 10112.
  • CD解説 Keith Anderson, Bax: Symphony No. 2, November Woods, Naxos, 8.554093.

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  交響曲第2番 (バックス)のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「交響曲第2番 (バックス)」の関連用語

交響曲第2番 (バックス)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



交響曲第2番 (バックス)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの交響曲第2番 (バックス) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS