一切経音義 (玄応)とは? わかりやすく解説

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一切経音義 (玄応)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/14 04:32 UTC 版)

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一切経音義』(いっさいきょうおんぎ)は、7世紀なかばに玄応(げんのう)が著した、仏典の難解な語や梵語などの解釈と読みを記した音義書。『一切経音義』という名の書には慧琳撰のものもあり、区別するために『玄応音義』と呼ばれることが多い。

成立

玄応は長安の僧で、玄奘のもとで訳経にたずさわっていたが、貞観の末から音義を作る作業を開始した[1]

『一切経音義』の成書年代は正確にはわからないが、神田喜一郎によれば、654年に訳された『倶舎論』・『阿毘達磨順正理論』に対する音義が含まれるため、それ以降の作であり、また玄応は661年前後に没しているため、その前の成立である[2]。もとの題は『大唐衆経音義』といったが[3][4]、のちに『一切経音義』と呼ばれるようになった[5]

内容

玄応『一切経音義』は25巻からなり、450部以上の仏典に対する音義を記している。

梵語の音写については、玄応から見て不正確な場合には「梵音訛也」として、正しい音写を漢字で示す。漢語については反切で音を示し、伝統的な読み方を「旧音」と呼んで修正している箇所が多い。異体字についても指摘することが多い。多様な書物を引用し、また各地の方言についてもしばしば指摘している。

仏典のみならず、『蒼頡篇』・『埤蒼』・『爾雅』・『広雅』・『説文』・『方言』・『字林』・『通俗文』・『釈名』など広く漢籍から引用を行っているため、佚書や古籍の校訂の目的に使うこともできる。

梵語の音写や反切を含むため、中国語の音韻史上重視される。周法高によれば、声母は『切韻』にほぼ一致し、韻については「脂・之」「咸・銜」「庚2・耕」「尤・幽」などの区別をしないものの、9割が一致するという[6]。玄応は韻書としてしばしば李登『声類』・呂静『韻集』などを引くが、『切韻』は引用しておらず、また反切の用字も『切韻』とは異なる。周法高によるとこれは『切韻』の音韻体系が人工的に作られたものではなく、広く行われていたことを示すものだという。

テキスト

『玄応音義』の古い抄本は、19巻が残る宮内庁書陵部蔵の大治3年(1128年)写本をはじめとして日本に多くあり、そのいくつかは刊行されている[7][8]。また敦煌トルファン出土の残巻も存在する。

版本としては『高麗大蔵経』などに含まれる。なお『大正新脩大蔵経』は高麗蔵にもとづいているが、玄応『一切経音義』は含まれていない。

慧琳『一切経音義』は『玄応音義』の多くを含んでいるが、内容を改めている場合が多い。これをそのまま玄応音義の代用とすることはできないが、玄応音義本文の校訂に利用することはできる。

脚注

  1. ^ 開元釈教録』巻八「以貞観之末、勅召参伝綜経正緯、咨為実録。因訳尋閲、捃拾蔵経、為之音義。注釈訓解、援引群籍、証拠卓明、煥然可領。」
  2. ^ 周法高(1948)の引くところによる
  3. ^ 大唐内典録』巻五「大唐衆経音義一部十五巻」(巻十では「衆経音二十五巻」とする)
  4. ^ 新唐書』芸文志三「玄応大唐衆経音義二十五巻」
  5. ^ 『開元釈教録』巻八・『貞元新定釈教目録』巻十二「一切経音義二十五巻」
  6. ^ 周法高(1948)「総計切韻的韻類一百左右(除去声調的分別不計), 和玄応相合的有九十類左右, 約佔百分之九十。」
  7. ^ 『一切経音義』汲古書院〈古辞書音義集成 7,8,9〉、1980,1981。
  8. ^ 『玄応撰一切経音義』国際仏教学大学院大学〈日本古写経善本叢刊 1〉、2006年。

参考文献

  • 周法高「玄應反切考」『中央研究院歴史語言研究所集刊』第20巻、1948年、 359-444頁。 (中国語)
  • 山田孝雄編『一切経音義索引』西東書房、1925年。



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