リカードの投下労働価値説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/15 03:56 UTC 版)
「労働価値説」の記事における「リカードの投下労働価値説」の解説
デヴィッド・リカードはスミスから投下労働価値説を受け継ぎ、支配労働価値説を斥けた。彼によれば、商品の生産に必要な労働量と商品と交換される労働量は等しくない。例えば、ある労働者が同じ時間に以前の2倍の量を生産できるようになったとしても、賃金は以前の2倍にはならない。したがって支配労働価値説は正しくないとする。 資本蓄積が始まると投下労働価値説は妥当しなくなる、という説に対しては、資本すなわち道具や機械に間接的に投下された労働量と直接的に投下された労働量の合計によって商品の価値が決まるという見解を示した。 リカードは投下労働価値説を完全に維持することはできなかった。彼は賃金の騰落が資本の構成によって商品の価格に異なる影響をもたらすことに気づいた。投下労働価値説の出発点においては、賃金の上昇は利潤の低下をもたらすだけであり、商品の価格には影響しないはずであった。しかし投下資本に占める賃金の比率が社会的な平均より高い場合、賃金の上昇は生産費用を平均以上に高め、賃金の比率が平均より低い場合は生産費用の上昇は平均以下となる。いずれの資本に対しても平均的な利潤が得られるならば、前者の場合は利潤の低下分より賃金の上昇分のほうが大きい。したがって商品の価格は上昇するのに対し、後者の場合は逆に商品の価格は低下する。投下労働量と関係なく商品の価格が変動するわけである。
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