テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)とは? わかりやすく解説

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テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/25 22:55 UTC 版)

テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
識別情報
ECHA InfoCard 100.034.609
CompTox Dashboard (EPA)
特性
化学式 C72H60P4Pd
モル質量 1155.56 g mol−1
外観 明黄色結晶
融点

115 °C 付近で分解

への溶解度 溶けない
構造
三角錐
0 D
危険性
GHS表示:[1]
Warning
H302, H317, H413
P261, P264, P270, P272, P273, P280, P301+P312, P302+P352, P330, P333+P313, P363, P501
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
Health 2: Intense or continued but not chronic exposure could cause temporary incapacitation or possible residual injury. E.g. chloroformFlammability 1: Must be pre-heated before ignition can occur. Flash point over 93 °C (200 °F). E.g. canola oilInstability (yellow): no hazard codeSpecial hazards (white): no code
2
1
関連する物質
関連する錯体 クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
関連物質 トリフェニルホスフィン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム: Tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))は、化学式 Pd[P(C6H5)3]4 で表される有機金属化合物である。化学式は Pd(PPh3)4としばしば略される。明るい黄色結晶であるが、空気に晒しておくと分解して灰色になる。

合成・構造・性質

塩化パラジウムなどの2価パラジウム塩から2段階で合成される[2][3]

PdCl2 + 2 PPh3 → PdCl2(PPh3)2
PdCl2(PPh3)2 + 2 PPh3 + 52 N2H4 → Pd(PPh3)4 + 12 N2 + 2 N2H5Cl

2段階目の反応では、ヒドラジン以外の還元剤も用いることができる。

4つのリン原子がパラジウムを中心とした正四面体の頂点に存在する構造を取っている。この構造は18電子則に則った典型的な化合物である[4]。類似する錯体である Ni(PPh3)4 や Pt(PPh3)4も知られている。このような錯体は、溶液中ではトリフェニルホスフィン(PPh3)が脱離し16電子となった M(PPh3)3 と平衡状態にある。Pd(PPh3)4 が関連する反応では、この平衡によって生成する Pd(PPh3)3(場合によっては Pd(PPh3)2)が真の活性種となっている。

応用

Pd(PPh3)4カップリング反応触媒として広く用いられる[5]。優れた反応例として溝呂木・ヘック反応薗頭・萩原反応右田・小杉・スティル反応鈴木・宮浦反応が挙げられる。これらの反応は、芳香族ハロゲン化物の0価パラジウムへの酸化的付加により反応が始まる。

Pd(PPh3)4 + ArBr → PdBr(Ar)(PPh3)2 + 2 PPh3

出典

  1. ^ Tetrakis(triphenylphosphine)palladium” (英語). pubchem.ncbi.nlm.nih.gov. 2025年8月26日閲覧。
  2. ^ D. R. Coulson, "Tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)", Inorg. Synth., 1972, 13, 121; 1990, 28, 107.
  3. ^ 日本化学会 編『実験化学講座』第5版、丸善、21巻、311ページ、2004年。
  4. ^ C. Elschenbroich, A. Salzer “Organometallics : A Concise Introduction” (2nd Ed) (1992) from Wiley-VCH: Weinheim. ISBN 3-527-28165-7
  5. ^ Homogeneous Catalysis: Understanding the Art” by P. W. van Leeuwen, Springer; 2005. ISBN 1-4020-3176-9

関連項目

外部リンク





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