チューネンのモデルにおける、農地利用帯の理想的パターン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 19:20 UTC 版)
「ヨハン・ハインリヒ・フォン・チューネン」の記事における「チューネンのモデルにおける、農地利用帯の理想的パターン」の解説
チューネンは上記の結論を、都市からの距離と位置地代の推移を分析することにより導き出した。位置地代とはチューネンによる議論の中で用いられる用語だが、土地の価値と等価であると理解されている。それは、農民が損失を出すことなく、土地を使用するために支払うことのできる最大額に相当する。それは以下の方程式で定義できる: L = Y(P - C) - YDF ここで、 L : 位置地代(DM / km2) Y : 生産量(t / km2) P : 作物の市場価格(DM / t) C : 作物の生産費(DM / t) D : 市場からの距離(km) F : 輸送費(DM / t/ km) 例えば、1,000t/km2の生産量、市場において100DM/tの固定価格をもつ生産物の位置地代を取り上げよう。生産費と輸送費はそれぞれ、50DM/tと1DM/t/kmとする。このとき、市場の近傍では輸送費は0であり、位置地代は収入から生産費だけを取り除いた額に等しいから、50,000DM/km2である。一方で市場から離れていくと輸送費がかかるようになっていくため、位置地代は市場から10kmで40,000DM/km2、市場から30kmでは20,000DM/km2と減少していく。そして各農民が農地に対して支払おうとする金額は縮小し、土地の価格は結果として下落するだろう。 ある作物を生産したときの位置地代はこのようにして求められるが、チューネンはある作物の作付けは、都市からのある距離内においてのみ有益である、つまりその生産が有益であるような市場からの距離が存在すると結論した。これは都市からの距離が増していくと、地代を全く支払えなくなるまで輸送費が増加するか、または、他のより低い輸送費を持った生産物があったならば、そちらの作物を生産した時に支払える位置地代が、ある作物を生産した時の位置地代より高くなることで、土地へのコストがその作物を生産するのに対してかかりすぎるようになるからである。 例えば、上述の作物を作物1として、もう一つの作物として1,000t/km2の生産量、市場において80DM/tの固定価格をもつが、生産費と輸送費がそれぞれ、40DM/tと0.5DM/t/kmである作物2を考えよう。このとき、位置地代は市場の近傍で40,000DM/km2、市場から10kmで35,000DM/km2、市場から30kmでは25,000DM/km2となる。このとき作物1と作物2の位置地代を比較すると、市場の近傍、10kmでは作物1の方が位置地代が高いが、30kmまで行くと作物2の位置地代が逆転している。ここで各地点において、最も高い位置地代を支払った農家がその土地で作物を生産できるとすれば、10kmと30kmの間のある地点(20km)までは作物1の方が位置地代が高く、それより遠くでは作物2の方が位置地代が高くなるため、都市から20km地点までは作物1、その地点より遠くでは作物2が生産される同心円状の土地利用パターンが実現する。また都市から80kmまで行くと作物2の位置地代は0となり、それより遠くでは、農家はもはや位置地代を支払得ないため、作物2も生産できる距離が決まっていることがわかる。 チューネンは輸送費を直接市場に帰したので("Luftlinie" = 空中線)、孤立国においては環状の土地利用帯--チューネンの輪--が実現する。
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