チャプターハウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/27 03:37 UTC 版)
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チャプターハウス(英: chapter house)[注釈 1]とは、キリスト教世界の大聖堂、修道院、カレッジエイト教会に付属する、主に集会に使われる空間(部屋または建物)である。
大聖堂に付属している場合は、大聖堂参事会がそこで集会を行う。修道院では、全修道士が毎日寄り合って読書をしたり、修道院長や上級修道士の話を聞いたりした。カレッジ教会に付属している場合は、カレッジのディーン、プレベンダリー、律修司祭が集まる。
中世には、領内を視察中の君主が会議や謁見のためにこの部屋を使用することがよくあった。教会会議、教会裁判所、同様の会議がチャプターハウスで行われることも多かった。
語源
「チャプター」とは、もとは告解や訓示を受ける集会のことだったが転じて、参事会(その施設を運営する役職が作る)をいうようになった。これは、もともとは集会のたびに聖書など規則書を章ごとに朗読したからだという。このための施設が「Chapter house」である。
設計

修道院の一部であるチャプターハウスは、通常、教会の隣にある回廊の東翼に位置する。イギリスの多くの大聖堂はもともと修道院だったため、そこでも一般的である。それ以外の場所では、本堂とは別の建物であることもある。チャプターハウスは、修道院のすべての修道士を収容できるよう大きな空間が確保されており、時として豪華な装飾が施されている。
部屋には、壁に沿って周囲を取り囲むように石造りの座席が設置されており、中央部は解放されている。年長者の席は他の席よりも大きく、一段高くなった主席台の上に置かれることがある。通常、出入り口は1つのみ。立地が許す限り採光は確保されているが、窓が高すぎて外からの視線(または盗聴)を許さないことが多い。大規模なチャプターハウスには回廊に面して待機空間がない場合に備えて、召集を待つ従者などのため控えの間が設けられていることが多い。暖炉や祭壇が設置されていることもある。
中世落成の建築物の場合多く石造りのヴォールトがあり、それを中央の柱が支える構造をとる。また、天井が非常に高い場合もある。形は長方形で正方形に近いものもあるが、八角形やその他円状のものはイングランド特有のものであり、いずれにしろ話者の声がよく響くように設計されている。
ウスター大聖堂をはじめウェルズ大聖堂、リッチフィールド大聖堂、ウェストミンスター寺院、レイコック寺院などの場合、中央の1本柱からヴォールト天井が広がる。またヨーク・ミンスターは木製で、中央に柱はない。壁の周りには、クロケット付きの枠がついた凝ったベンチのアーケードが設けられていることが多い。イングランドのチャプターハウスは、大陸のものよりも凝っていて高度に装飾されている傾向があり、八角形の形状は、ヨーク・ミンスターを除いてほとんど失われてしまった壮大なステンドグラスの展示を可能にした。ウェストミンスター寺院を除いて、絵画は失われているが、彫刻が施されたアーケードと窓を重視するイングランドのデザインでは、ほとんどの大陸のチャプターハウスに見られるような大きな壁面は残されなかった。
ウェストミンスター寺院は、ウェストミンスター宮殿の向かいにあり、現在の建物が建てられてから、枢密院会議をはじめ王室の会合に使われた。ヘンリー8世の治世までは、庶民院の会議の通常の開催場所でもあった[注釈 2]。
イングランド国教会の宗教改革後、まもなくして、現公文書局の最初の拠点に転用され、座席の後ろに追加された後期ゴシック様式の絵画は、19世紀まで本棚の後ろに隠されて保存されていた。
一部のロマネスク様式やゴシック様式の修道院では、チャプターハウスの入り口は、特にそれが独立した建物である場合、華やかなファサードと、装飾豊かなアーキボルトに囲まれた扉を持つ。多くのチャプターハウスには凝った彫刻やフレスコ画があり、中には宗教芸術の傑作も含まれているが、時には世俗的なものもあった。現在、スペインとアメリカの博物館に散らばっているアルランツァの絵画は、もともとサン・ペドロ・デ・アランサ修道院を飾っていたもので、ロマネスク様式の宮殿装飾の中で最も優れた現存品の一つである巨大で大胆な神話上の獣が描かれている。現代のチャプターハウスは、単に一般的な役員室や会議室である(またはそれらを利用する)ことがある。独立した建物である場合、通常、単一の主室のみで構成されている。
歴史・用法
修道士の共同体は、修道院長とともにチャプターハウスに集まり、「チャプターを開く(英: hold chapter)」ということをしていた。それは「殉教者伝」や「死霊学(英: Necrology)」の朗読、過ちの訂正、その日の任務の割り当て、修道院長による訓戒のためであり、また晩の「コレーション」(夜の祈りであるコンプリン前の朗読)のためでもあった。最初の集会は、朝の第一時課または第三時課の教会の礼拝の後に行われた。修道士たちは、役職者を除いて、厳密な年齢順に壁に沿って座ることがあった。
カロリング朝時代のザンクト・ガレンの平面図(c. 820)は、9世紀の理想的な修道院の設計図で、多種多様な建物や部屋があるが、チャプターハウスの機能に割り当てられる部屋は実質的にない。聖ベネディクトもそのような部屋に言及していない。しかし、816年のアーヘン公会議の議事録には、チャプターハウスの言及が見られる。初期の修道院では、教会や回廊がすべての集会に使われていたか、通常は食堂があったのかもしれない。しかし、少なくとも1000年頃までには、そのような部屋が大規模な修道院施設で一般的になっていた。チャプターハウスがよく位置していた回廊の東側は、通常、最初に建設される部分であり、教会の壁が建てられた直後に着工されたとされている。
実例

以下は建築・芸術の観点からみた重要なチャプターハウスの例である。
- サンタ・マリア・デ・シゲナ王立修道院:非常に重要なロマネスク様式のフレスコ画は、現在バルセロナのカタルーニャ美術館に所蔵されている。
- エルギン大聖堂:スコットランドでは珍しい八角形。
- ヴォンチョック修道院:ロマネスク様式。
- ウェストミンスター寺院
- カンタベリー大聖堂:長方形のチャプターハウス。
- ウェルズ大聖堂:ヤシの木のような中央の柱が、ヴォールトの内側を形成する32本のリブを支えている。
- エクセター大聖堂
- リンカン大聖堂:最も初期のイングランド八角形の別棟。
- ソールズベリー大聖堂
- サウスウェル・ミンスター:有名な彫刻が施された柱頭を持つ。
- ヨーク・ミンスター:八角形の後期ゴシック様式。
- フォントヴロー修道院:プランタジネット家の拠点であり、大きく天井が低いヴォールトを持つ。
- サンタ・マリア・ノヴェッラ教会スペイン礼拝堂:重要なフレスコ画がある。
- アルコバッサ修道院:ロマネスク様式。
- バターリャ修道院:後期ゴシック様式でマヌエル様式の要素がある。
- トマールのキリスト教修道院
- フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂パッツィ礼拝堂:初期ルネサンス建築の重要な建物。
- トレド大聖堂:16世紀以降、重要なフレスコ画がある。
- カナダの国会議事堂図書館:円形のチャプターハウス様式のプランの非宗教的利用
画像
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サンタ・マリア・デ・シゲナ王立修道院のロマネスク・フレスコ画の博物館設置
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フォントヴロー修道院入口
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フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ大聖堂にある、かつての礼拝堂(現在は「スペイン礼拝堂」)。
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大聖堂の塔から見たソールズベリー大聖堂。
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クオピオにあるクオピオ大聖堂のチャプターハウスの内部
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ヨーク・ミンスターの八角形のチャプターハウス
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パッツィ礼拝堂外観
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パッツィ礼拝堂内観
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セゴビア大聖堂
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サン・アグスティン教会と修道院
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ギルフォード大聖堂のモダンな役員室スタイルのチャプターハウス
脚注
外部リンク
- Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 5 (11th ed.). 1911. p. 855. .
- Historical Images of Chapter House at Westminster Abbey circa 1870 - 1990
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