スプリント_(F1)とは? わかりやすく解説

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スプリント (F1)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/26 16:38 UTC 版)

スプリント: Sprint)は、FIA F1世界選手権において2021年から導入されたセッションの一つ。

概要

かねてから伝統的なレースフォーマットの変更を検討していたF1は、FIA F2世界選手権などで実施されているリバースグリッドの導入を検討したが実施に至らなかった。2021年、週末のレース全体の興奮を高めるためにスプリントを同年のイギリスGPから導入することを決定した。F1におけるスプリントは決勝(F1レギュレーションで定められている305kmを超えた最小周回数[注 1])の約3分の1にあたる100km程度に短縮されたレース形式で行われる[1][2]。決勝レースと違い、レース中のタイヤ交換義務は無い[注 2]

導入当初は予選でスプリントのスターティンググリッドを決め、スプリントの結果によって決勝のスターティンググリッドを決めていたが、2023年以降はスプリントと決勝の予選は別々のものに変わり、スプリント予選は通常の予選と同様にノックアウト方式で行われるが、予選より短い時間で3つのセッション(SQ1:12分、SQ2:10分、SQ3:8分)が行われ[注 3]、スプリントのスターティンググリッドを決定する。なお、決勝のスターティンググリッドは通常のレースと同様に予選の結果で決定するようになった。

歴史

2021年

導入初年度は「スプリント予選」の名称で行われた。金曜日の予選でスプリント予選のスターティンググリッドを決め、土曜日のスプリント予選で決勝のスターティンググリッドを決めるフォーマットで行われた。このため、ポールポジションはスプリント予選で優勝したドライバーが獲得することになり、上位3台に3-2-1点の各ポイントが与えられた。同年はイギリスGPイタリアGPサンパウロGPの3戦でスプリント予選が実施された[2]

2021年のレースフォーマット
通常のレース スプリント実施レース
金曜日 FP1
FP2 予選
土曜日 FP3 FP2
予選 スプリント予選
日曜日 決勝

2022年

この年は「スプリント予選」の名称を「スプリント」に改めた。金曜日の予選でスプリントのスターティンググリッドを決めるのは前年と同様だが、予選で1位だったドライバーがスプリントの結果に関係なくポールポジションを獲得することになった。ただし、土曜日のスプリントで決勝のスターティンググリッドを決定する方式も前年と変わらないため、ポールポジションを獲得したドライバーが決勝で1番グリッドを得られるわけではない[注 4]。ポイントの対象は上位8台に拡大され、8-7-6-5-4-3-2-1点の各ポイントが与えられた。同年はエミリア・ロマーニャGPオーストリアGPサンパウロGPの3戦でスプリントが実施された[4]

2022年のレースフォーマット
太字は前年との変更点)
通常のレース スプリント実施レース
金曜日 FP1
FP2 予選
土曜日 FP3 FP2
予選 スプリント
日曜日 決勝

2023年

この年からスプリントのスターティンググリッドを決める「スプリント・シュートアウト」が新たに設けられ、決勝のグリッド順位は通常のレース同様、予選で決められることになった。このため、スプリントが実施されるレースのフリー走行は金曜日の1回のみとなる。スプリント・シュートアウトも予選同様3つのセッションによるノックアウト方式だが、予選より短い時間で各セッションが行われる。装着できるタイヤもSQ1とSQ2はミディアム、SQ3は新品のソフトのみと義務付けられた。この年からスプリントが実施されるレースがアゼルバイジャンGPオーストリアGPベルギーGPカタールGPアメリカGPサンパウロGPの6戦に拡大された[5]

2023年のレースフォーマット
太字は前年との変更点)
通常のレース スプリント実施レース
金曜日 FP1
FP2 予選
土曜日 FP3 スプリント・シュートアウト
予選 スプリント
日曜日 決勝

2024年

前年から実施された「スプリント・シュートアウト」の名称が「スプリント予選」に変更された。また、開催フォーマットも変更され、FP1、スプリント予選、スプリント、予選、決勝の順で行われる[6]。これにより、前年のフォーマットで問題となっていた金曜日の予選から日曜日の決勝までパルクフェルメによりマシンのセッティングを変更できない状況[注 5]が解消され、スプリント終了後にパルクフェルメを一旦解除することで、スプリントから予選の間にマシンのセットアップ変更が可能となった[7]。スプリントが実施されたレースは中国GPマイアミGPオーストリアGPアメリカGPサンパウロGPカタールGPの6戦。

2024年以降のレースフォーマット
太字は前年との変更点)
通常のレース スプリント実施レース
金曜日 FP1
FP2 スプリント予選
土曜日 FP3 スプリント
予選
日曜日 決勝

2025年

F1のステファノ・ドメニカリ会長兼CEOは早ければこの年までにスプリント実施レースを12戦に倍増させる考えであったが、従来通り6戦(対象レースは中国マイアミベルギー、アメリカ、サンパウロ、カタールの各GPで、前年との違いはオーストリアGPからベルギーGPに変更されたのみ)で実施されることになった。開催フォーマットは2021年の導入以来初めて前年と同様となる[8][9]

スプリント勝者の一覧

ラウンド レース 勝者 コンストラクター
2021 第10戦 イギリスGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ
第14戦 イタリアGP バルテリ・ボッタス メルセデス
第19戦 サンパウロGP バルテリ・ボッタス メルセデス
2022 第4戦 エミリア・ロマーニャGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-RBPT
第11戦 オーストリアGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-RBPT
第21戦 サンパウロGP ジョージ・ラッセル メルセデス
2023 第4戦 アゼルバイジャンGP セルジオ・ペレス レッドブル-ホンダ・RBPT
第10戦 オーストリアGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
第13戦 ベルギーGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
第18戦 カタールGP オスカー・ピアストリ マクラーレン-メルセデス
第19戦 アメリカGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
第21戦 サンパウロGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
2024 第5戦 中国GP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
第6戦 マイアミGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
第11戦 オーストリアGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
第19戦 アメリカGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
第21戦 サンパウロGP ランド・ノリス マクラーレン-メルセデス
第23戦 カタールGP オスカー・ピアストリ マクラーレン-メルセデス
2025 第2戦 中国GP ルイス・ハミルトン フェラーリ
第6戦 マイアミGP ランド・ノリス マクラーレン-メルセデス
第13戦 ベルギーGP マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT
第19戦 アメリカGP
第21戦 サンパウロGP
第23戦 カタールGP

優勝回数

ドライバー

順位 回数 ドライバー
1 12 マックス・フェルスタッペン
2 2 バルテリ・ボッタス
オスカー・ピアストリ
ランド・ノリス
5 1 ジョージ・ラッセル
セルジオ・ペレス
ルイス・ハミルトン
出典: [10]

国籍別

順位 回数 国籍 ドライバー 人数
1 12 オランダ マックス・フェルスタッペン (12) 1
2 4 イギリス ランド・ノリス (2)
ジョージ・ラッセル (1)
ルイス・ハミルトン (1)
3
3 2  フィンランド バルテリ・ボッタス (2) 1
オーストラリア オスカー・ピアストリ (2) 1
5 1 メキシコ セルジオ・ペレス (1) 1
出典: [10]

コンストラクター

順位 回数 コンストラクター
1 13 レッドブル
2 4 マクラーレン
3 3 メルセデス
4 1 フェラーリ
出典: [11]

エンジン

順位 回数 メーカー
1 10 ホンダRBPT
2 7 メルセデス
3 2 RBPT
4 1 ホンダ
フェラーリ
出典: [12]

脚注

注釈

  1. ^ レース時間を2時間以内に抑えるために走行距離が約260kmとされているモナコグランプリを除く。
  2. ^ 決勝レースは2種類以上のコンパウンドを使う必要があるため、最低1回のタイヤ交換が必須となる。ただし、ウェットコンディションの場合はこの限りではない[3]
  3. ^ 通常の予選はQ1が18分、Q2が15分、Q3が12分。
  4. ^ サンパウロGPは予選1位のケビン・マグヌッセンがポールポジションを獲得したが、スプリントはジョージ・ラッセルが優勝したため、決勝で1番グリッドからスタートする権利を得たのはラッセルとなる(残りの2戦はマックス・フェルスタッペンが予選とスプリントの両方を制しているため、ポールポジションを獲得したフェルスタッペンが1番グリッドを得ている)。
  5. ^ パルクフェルメ下で新しいパワーユニットのエレメント交換やマシンのセッティングを変更した場合、決勝はピットレーンからのスタートとなる。

出典

  1. ^ F1予選スプリントレースの実施が決定! ドメニカリCEO「ドライバーも楽しんでくれるはず」”. motorsport.com (2021年4月27日). 2024年2月24日閲覧。
  2. ^ a b F1史上初の試み、スプリント予選レースって何なんだ? イギリスGPでの初実施を前におさらい”. motorsport.com (2021年7月11日). 2024年2月24日閲覧。
  3. ^ 2025年競技規則_日本語版_20241211” (PDF). JAF. p. 35 (2024年12月11日). 2025年3月26日閲覧。 第30条5項 m) より。
  4. ^ 2022年F1『スプリント』の詳細が決定。3戦で実施、トップ8にポイント。『ポールポジション』は金曜予選最速者に授与”. autosport web (2022年2月15日). 2024年2月24日閲覧。
  5. ^ 【新ルール】2023年F1スプリントはどう変わる?スプリント・シュートアウトとは?週末のルール、タイヤ、ペナルティは?”. TopNews (2023年4月29日). 2024年2月24日閲覧。
  6. ^ 中国GPから!2024年の「新しいF1スプリント形式」について最低限知っておくべきルールのまとめ”. Formula1-Data (2024年4月14日). 2024年2月24日閲覧。
  7. ^ F1スプリント、2024年は途中でセットアップ変更可能も「ワクワクしない」とフェルスタッペン今も厳しい視線”. motorsport.com (2024年3月7日). 2024年2月24日閲覧。
  8. ^ 2025年のスプリント増加なしに安堵するF1チーム。オーストリアの“脱週末2レース”はメリットの消失か”. autosport web (2024年7月17日). 2024年2月24日閲覧。
  9. ^ 2025年F1スプリントカレンダーが決定。6戦で実施、オーストリアに代わり、ベルギーが復活”. autosport web (2024年7月12日). 2024年2月24日閲覧。
  10. ^ a b Statistics Drivers - Sprint - Wins” (英語). STATS F1. 2025年3月26日閲覧。
  11. ^ Statistics Constructors - Sprint - Wins” (英語). STATS F1. 2025年3月26日閲覧。
  12. ^ Statistics Engines - Sprint - Wins” (英語). STATS F1. 2025年3月26日閲覧。

参考資料

en:List of Formula One sprint winners (2025-01-01, at 23:25:40)

関連項目




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