シムソンの定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/19 08:06 UTC 版)


幾何学におけるシムソンの定理とは、△ABC の外接円上の点 P から三角形の各辺 BC, CA, AB におろした垂線の足 L, N, M がすべて同一直線上にある(共線関係にある)という定理である。この直線のことをシムソン線(シムソンライン)と呼ぶ。この定理はロバート・シムソンから名づけられた[1]。しかし、最初に1797年にこの概念を出版したのはウィリアム・ウォレス[2]である。
シムソン線の性質
- 三角形の1つの頂点をPとすると、Pに対するシムソン線はPから対辺に下ろした垂線になる。またPを外接円の中心に対して頂点と対称の位置に取ると、Pに対するシムソン線は辺の1つと一致する。
- Oを外接円の中心、PとP'を外接円上の点とする。Pに対するシムソン線とP'に対するシムソン線が成す角は、POP'の半分に等しい。特にPとP'が直径の両端にあるとき、2本のシムソン線は垂直に交わる。このときの交点は九点円上にある。
- 三角形のABCの垂心をHとする。Pに対するシムソン線は、PHの中点を通る。
- 共通の外接円を持つ2つの三角形があったとき、Pに対する2本のシムソン線が成す角はPによらず一定の値をとる。
- シムソン線による包絡線はデルトイド(内サイクロイドの一種)となる。このデルトイドをスタイナー(シュタイナー)のデルトイドという。
- 三角形の外接円上に点Pをとる。ポンスレの閉形定理よりこの三角形と、内接円と外接円を共有する三角形は無数に存在するが、これらの三角形におけるPのシムソン線は、定点を通る。これをグリーンヒル-ディクソンの定理(Greenhill-Dixon theorem)という[3][4]。サー・ジョージ・グリーンヒル(Sir George Greenhill)とA. C. ディクソンの名を冠する[5]。後述の双心多角形におけるシムソン線でも同様に成立する[6]。
証明
初等幾何による証明
AとBは対角点だから∠PAC+∠CBP=180度。
∠PAC>90度の場合、AとBを入れ替えて∠PAC≦90度とする。 ∠PAC=90度の場合,∠CBP=90度,A=M,B=L,Nは直線AB上の点だからL,M,Nは同一直線上にある. ∠PAC<90度とする。
点A,P,N,Mは同一円周上にある。 A,P,B,C はこの順で外接円周上にあるから 直線BAに対してPとCは反対側にある。
∠PAC<90度だから(A→C)と(A→M)の向きが同じになるから ∠PAM=∠PAC…①
直線BAに対してPとMは反対側にある。 Nは直線BA上の点だから 直線NAに対してPとMは反対側にあるから NとAは四角形APNMの対角点となるから ∠PAM+∠MNP=180度…②
点P,L,B,Nは同一円周上にある。 B,C,A,P はこの順で外接円周上にあるから 直線BAに対してPとCは反対側にある。
∠CBP>90度だから 直線BAに対してLとCは反対側にあるから 直線BAに対してLとPは同じ側にある。
Nは直線BA上の点だから 直線BNに対してLとPは同じ側にあるから BNは四角形PLBNの対角線でない辺となるから ∠PNL=∠PBL…③
∠CBP>90度だから (B→L)と(B→C)の向きが180度異なるから∠PBL+∠CBP=180度. ∠PAC+∠CBP=180度だから ∠PBL=∠PAC…④
①,②,③,④から、∠MNP+∠PNL=180度。
したがって、3点L,M,Nは同一直線上にある。Q.E.D.複素数による証明
△ABCの外接円周上の点PからBC、CA、ABに下ろした垂線の足をL、M、Nとする。
外接円の中心に0を対応させ、点Pに1を対応させて、外接円を単位円とする座標をいれて、点 A,B,C,L,M,Nのそれぞれの位置の複素数をa,b,c,d,e,fとする。
x の共役複素数を △ABCと、外心を通る直線l、点Pについて、AP,BP,CPとlの交点のBC,CA,ABにおける直交射影は共線である。またPと垂心の中点もこの直線上にある。Pをl上に置けば、lと一致する[7][8][9]。
外接円錐曲線Γと、平面上の2点P,Qについて、直線PA,PB,PCとΓの第二交点をそれぞれA1,B1,C1とする。Pと、QA1,QB1,QC1とBC,CA,ABの交点延べ4点が共線であることと、QがΓ上にあることは同値[10]。
三角形のシムソン線から出発して、帰納的に任意の円内接多角形におけるシムソン線を定義することができる[11][12][13]。特に円に内接する四角形に拡張したものはよく知られる[14]。
垂線でなく一般の角に拡張したもの[15]など他にも多くの拡張がある[16]。
一般化2
一般化3
参考文献
脚注
関連項目
外部リンク
固有名詞の分類
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