キロテリウム (哺乳類)
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キロテリウム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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キロテリウム骨格
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
新第三紀中新世末 - 鮮新世 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Chilotherium Ringström, 1924 |
キロテリウム(学名:Chilotherium)は、奇蹄目サイ科アケラテリウム亜科に属する絶滅した哺乳類の属[1]。約1,000万年前から約200万年前、新生代の新第三紀中新世末から鮮新世にかけてユーラシア大陸の草原に生息した[2]。解剖学的特徴としては下顎の切歯が発達して前側に伸びること、および現生のサイのようには角を持たないことが挙げられる[2]。これらの形態から、突出した歯を用いて地中の植物を掘り起こして摂食したほか、闘争ではなく逃走によって捕食を回避したことが考えられている[2]。
記載
キロテリウムは大型かつ頑強な動物であり、種によって体高は1.5-1.8メートル、体重は1-2.5トンに達した[3]。雌雄のいずれにも角は存在しない。下顎には広い正中離開によって隔てられた大型の牙状の幅広な第2切歯と幅広な結合部が存在する。歯式は
キロテリウムはRingström, 1924で命名された。サイ科への分類はCarroll, 1988、アケラテリウム亜科への分類はProthero and Schoch, 1989による。族レベルの分類では、キロテリウム族に分類するDeng, 2005の解釈と、アケラテリウム族に置くAntoine and Saraç, 2005がある[12]。
種
キロテリウムは12種が記載されており、他に19種が本属に分類されたことがある。Deng, 2006によれば9種が有効であり、ヨーロッパの種が4種、イランの種が1種、中国のものが4種である[13]。
骨の癒合部が相対的に大型かつ幅広であること、また背側および外側から見てhorizontal mandibular ramus が湾曲することから、アプロトドン(Aprotodon)はキロテリウムから区別される。また完全に臼歯と同様の形態をとる小臼歯を持つキロテリウムと異なり、アプロトドンの小臼歯は半臼歯型(semi-molariform)である。サブキロテリウム(Subchilotherium)は歯骨の癒合がキロテリウムのものよりも狭い。アケロリヌスは骨の癒合がキロテリウムと比べせ狭く、また鼻骨も強く狭窄されている[13]。
病理学
ある雌のキロテリウムの頭蓋骨には、前額部をディノクロクタに噛まれた明確な痕跡が認められる。負傷の周辺の骨の再構築に基づき、当該のキロテリウムの個体は捕食者の攻撃を逃れ、後に回復したことが示唆される[14]。
出典
- ^ a b 冨田幸光『新版絶滅哺乳類図鑑』丸善出版、2011年、178頁。ISBN 978-4-621-08290-4。
- ^ a b c 柴正博 (1996年). “鋤のような下アゴを持つ キロテリウム”. 東海大学社会教育センター. 2023年1月20日閲覧。
- ^ Cerdeño, Esperanza (1998). “Diversity and evolutionary trends of the family Rhinocerotidae (Perissodactyla)”. Palaeo 141 (1–2): 13–34. Bibcode: 1998PPP...141...13C. doi:10.1016/S0031-0182(98)00003-0.
- ^ a b Geraads, Denis; Spassov, Nikolai (2009). “Rhinocerotidae (Mammalia) from the Late Miocene of Bulgaria”. Palaeontographica A 287 (4–6): 99–122. doi:10.1127/pala/287/2009/99 2013年5月19日閲覧。.
- ^ Chen, Shaokun; Deng, Tao; Hou, Sukuan; Shi, Qinqin; Pang, Libo (2010). “Sexual dimorphism in perissodactyl rhinocerotid Chilotherium wimani from the late Miocene of the Linxia Basin (Gansu, China)”. Acta Palaeontologica Polonica 55 (4): 587–97. doi:10.4202/app.2009.0001 2013年5月19日閲覧。.
- ^ Agustí, Jordi; Antón, Mauricio (2002). Mammoths, Sabertooths, and Hominids: 65 Million Years of Mammalian Evolution in Europe. New York: Columbia University Press. ISBN 0-231-11640-3
- ^ 岡崎美彦「日本の中新世哺乳動物群 : 自然史研究会講演集録V」『植物分類,地理』第29巻第1-5号、1978年、138-144頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001078294。
- ^ a b 奥村好次「瑞浪の化石(東海の生いたちをさぐる)」『地学教育と科学運動』第13巻、1984年、150-154頁、doi:10.15080/chitoka.13.0_150。
- ^ a b 奥村潔「東海地方の哺乳類化石(東海の生いたちをさぐる)」第13巻、1984年、doi:10.15080/chitoka.13.0_155。
- ^ 朝日新聞、2016年7月27日、「サイの化石」じつは絶滅哺乳類でした 国内では初発見 岐阜県博物館保存【名古屋】、森林文化協会
- ^ 岐阜県博物館、8月9日(火) 日本初!!「カリコテリウム科」化石、特別公開中
- ^ “Chilotherium - PBDB”. ThePaleobiology Database. 2023年1月20日閲覧。
- ^ a b Deng 2006, Discussion, pp. 97–8
- ^ Deng, T; Tseng, Z. J (2010). “Osteological evidence for predatory behavior of the giant percrocutid (Dinocrocuta gigantea) as an active hunter”. Chin. Sci. Bull 55: 1790–1794. doi:10.1007/s11434-010-3031-9 .
外部リンク
- キロテリウム・アンダーソニ - 福井県立恐竜博物館画像ライブラリー
- キロテリウム・アンダーソニ - 福井県立恐竜博物館標本データベース
- キロテリウム - 古世界の住人・川崎悟司イラスト集
- キロテリウム_(哺乳類)のページへのリンク