カーシー国とは? わかりやすく解説

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カーシー国

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/26 18:51 UTC 版)

カーシー国(カーシーこく、サンスクリット: काशी / IAST:Kāśī)あるいはカーシ国काशि / Kāśi)は古代インドの王国のひとつ。ガンジス川中流域に位置し、首都はヴァーラーナシーだった。十六大国のひとつにあげられるが、コーサラ国に滅ぼされた。後にカーシーはヴァーラーナシーの別名として使用されるようになった。

コーサラ支配下のカーシー国で発行されたヴィムシャティカ打刻印銀貨

成立に関する伝説

『バーガヴァタ・プラーナ』巻9によると、カーシ王朝は月種のアーユの子(プルーラヴァスの孫)のひとりであるクシャトラヴリッダの子孫とされる。クシャトラヴリッダの孫がカーシヤ、その子がカーシであった。カーシの曾孫のダンヴァンタリ英語版アーユルヴェーダ医学の祖とされる。その曾孫がディヴォーダーサ、ディヴォーダーサの子がプラタルダナである[1]。『ハリ・ヴァンシャ』の系図はかなり異なるが、カーシー国の王をクシャトラヴリッダの孫のカーシャの子孫とする点、ダンヴァンタリをアーユルヴェーダ医学の祖とする点では共通する[2]

リグ・ヴェーダ』にカーシー国は登場しないが、10.179.2の作者が「ディヴォーダーサの子のプラタルダナ」と伝えられる[3]

後期ヴェーダ

後期ヴェーダ時代のカーシー国王アジャータシャトルはクシャトリヤ出身の思想家として知られる[4]。『ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド』の第2編はアジャータシャトル王とバラモンのガールギヤとの哲学的対話になっている[5]

叙事詩とプラーナ

『マハーバーラタ』巻13によると、カーシー国のハリヤシュヴァ王のときにハイハヤ族のヴィータハヴィヤがカーシー国に侵入し、王を殺した。カーシー国ではハリヤシュヴァの子のスデーヴァが王位を継承したが、彼もまたハイハヤ族に殺された。スデーヴァの子のディヴォーダーサはカーシー国王に即位すると再侵略に備えて首都ヴァーラーナシーを要塞化したが、やはりハイハヤ族に敗北し、祭官(プローヒタ)のバラドヴァージャとともに亡命した。ディヴォーダーサの子のプラタルダナはハイハヤ族を破った[6]

プラーナ文献にもディヴォーダーサとプラタルダナは登場するが、その伝えるところはかなり異なっている。『ハリ・ヴァンシャ』1.29によると、ヴァーラーナシーはヤドゥ族のバドラシュレーニャによって支配されていたが、ディヴォーダーサ王の時にバドラシュレーニャの100人の息子たちを殺して追い払い、ヴァーラーナシーを都とした。しかしラークシャサのクシェーマカの呪いによってディヴォーダーサはヴァーラーナシーを放棄してゴーマティー川英語版の河畔に遷都した。一方バドラシュレーニャの子のドゥルダマは生きのびてハイハヤ族に育てられ、カーシー国を再び占領した。しかしディヴォーダーサの子のプラタルダナがドゥルダマを倒した。プラタルダナの孫のアラルカの時にようやくクシェーマカを倒してヴァーラーナシーを復興した[2]

仏典

カーシー国は十六大国のひとつとされているが、仏陀の時代にコーサラ国に滅ぼされた。仏陀が初めて教えを説いたサールナートはヴァーラーナシー郊外にある[7]。コーサラ国のプラセーナジット王の妹 (Kosala Deviマガダ国ビンビサーラ王に嫁いだとき、カーシー国の村を持参金としている[8]

脚注

  1. ^ Śrīmad-Bhāgavatam (Bhāgavata Purāṇa): Canto 9: Liberation, Chapter 17: The Dynasties of the Sons of Purūravā, https://vedabase.io/en/library/sb/9/17/  (Vedabase)
  2. ^ a b Harivamsha Purana: Book 1 - Harivamsa Parva, Chapter 29 - An Account of Kashi Kings, https://www.wisdomlib.org/hinduism/book/harivamsha-purana-dutt/d/doc485506.html 
  3. ^ The Rigveda: The Earliest Religious Poetry of India. translated by Stephanie W. Jamison and Joel P. Brereton. Oxford University Press. (2017) [2014]. p. 1655. ISBN 9780190685003 
  4. ^ 山崎元一 著「インダス文明からガンジス文明へ」、辛島昇 編『南アジア史』〈新版世界各国史7〉2004年、45頁。 ISBN 4634413701 
  5. ^ “Brihadâranyaka Upanishad, Second Adhyâya”, The Upanishads: Part II, Sacred Books of the East, 15, translated by Max Müller, (1884), https://www.sacred-texts.com/hin/sbe15/sbe15058.htm 
  6. ^ The Mahabharata: Book 13: Anusasana Parva, Section XXX, https://www.sacred-texts.com/hin/m13/m13a030.htm 
  7. ^ 山崎元一「カーシー」『新版 南アジアを知る事典』平凡社、2012年、145頁。 ISBN 9784582126457 
  8. ^ “Mahākosala”, Buddhist Dictionary of Pali Proper Names, https://www.palikanon.com/english/pali_names/maha/mahakosala.htm 



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