カオス属とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 生物 > 生物学 > > カオス属の意味・解説 

カオス属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 06:11 UTC 版)

カオス
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: アメーボゾア門 Amoebozoa
: ツブリネア綱 Tubulinea
亜綱 : Elardia
: 真アメーバ目 Euamoebida
: アメーバ科 Amoebidae
: カオス属 Chaos
学名
Chaos Linnaeus1767
タイプ種
Chaos chaos (Linnaeus1758)
下位分類

カオス属(カオスぞく、学名: Chaos)はアメーボゾアツブリネア綱、真アメーバ目に属する大型の原生生物の1である(図1)。単細胞のアメーバであるが、長さ5ミリメートルに達することがある。ふつう多数の円筒状の仮足をもち、隆条を伴う。アメーバ属に類似するが、が複数(数個から1000個以上)である点で異なる。淡水域に生育し、他の原生生物などを捕食する。

特徴

巨大な単細胞アメーバであり、ふつう 600–1500 µmほどであるが、素早く移動している細胞は長さ 5000 µm に達することもある[1][2][3]。ふつう多数の仮足(偽足)を掌状に伸ばしているが(図1)、すばやく移動している細胞は単仮足、仮足は円筒形でふつう隆起線を伴い、先端は半球形、透明冠はやや不明瞭[1][3][4]。細胞後端のウロイドは房状[1]

細胞質には、結晶状顆粒(ふつう両錐体形)が多数存在する[1][2]。細胞は複数(数個から1000個以上)のを含む[1]。核は球状から円板状やレンズ状、顆粒状の核小体様構造を含む[1][2]

仮足を放射状に伸ばした浮遊型(放射型)を形成するものもいる[1]。一部の種では、シストを形成することが報告されている[1][3]二分裂ではなく多分裂する例が報告されている[4]

生態

池や川など淡水域に生育する[1][3][4]。それほど稀ではないとされるが[1]、日本では非常に稀との報告がある[3][4]。他の原生生物などを捕食する[3][4]

分類

アメーバ属Amoeba)に極めて類似しているが、アメーバ属のが1個であるのに対し、カオス属は多核(数個から1000個以上の核をもつ)である点で異なる[1][4]。また、パラカオス属(Parachaos)は多核である点でもカオス属と共通するが、仮足に隆起線を欠く点で区別される[1]

タイプ種リンネによって記載された Chaos chaos (= Amoeba chaos) であるが、この種については実態が不明である[5]。比較的よく知られている一部の種を以下に示す。

表1. カオス属の種(一部)[1]

  • カオス属 Chaos Linnaeus1767
    • Chaos carolinensis (Wilson, 1900) King & Jahn, 1948
      多仮足体は 700–2000 µm、単仮足体は最大 5000 µm。核はレンズ状で直径 21–31 µm、1細胞に多数で最大1000個以上になる。結晶状顆粒は両錐体形。シストが報告されている。
    • Chaos glabrum Smirnov & Goodkov, 1977
      多仮足体は約 500 µm、ふつう単仮足体で 420–980 µm。は円盤状からレンズ状、直径約 20 µm、1細胞に6–30個。結晶状顆粒は両錐体形、紡錘形、および立方体。仮足を放射状に伸ばした浮遊型を形成する。
    • Chaos illinoisense (Kudo, 1950) Bovee & Jahn, 1973
      多仮足体は 500–800 µm、単仮足体は最大 1500 µm。核は球形で直径 14–16 µm、1細胞に数百個。結晶状顆粒は両錐体形および板状。シストは平滑、球形から楕円形、直径 250–350 µm、外壁と内壁は広く離れている。
    • Chaos nobile (Penard, 1902) Bovee & Jahn, 1973
      多仮足体は 240–820 µm、単仮足体は最大 1200 µm。核は卵形からレンズ状、直径 13–23 µm、1細胞に 6–60個以上。結晶状顆粒は両錐体形。シストは未知。

脚注

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m Siemensma, F. (2024年). “Chaos”. Microworld world of amoeboid organisms. 2025年7月20日閲覧。
  2. ^ a b c Rogerson, A. & Patterson, D. J. (2005). “Chaos”. In Lee, J. J. et al.. An Illustrated Guide To The Protozoa. Blackwell Pub. p. 1039. ISBN 978-1891276231 
  3. ^ a b c d e f 石井圭一 (1999). “カオス”. アメーバ図鑑. 金原出版. p. 136. ISBN 978-4307030496 
  4. ^ a b c d e f 月井雄二 (2010). “カオス”. 淡水微生物図鑑. 誠文堂新光社. p. 28. ISBN 978-4416210048 
  5. ^ Chaos”. The World of Protozoa, Rotifera, Nematoda and Oligochaeta. National Institute for Environmental Studies, Japan. 2025年7月20日閲覧。

外部リンク

  • Siemensma, F. (2024年). “Chaos”. Microworld world of amoeboid organisms. 2025年7月20日閲覧。(英語)
  • カオス属 Chaos”. 原生生物情報サーバ. 2025年7月20日閲覧。
  • Chaos amoeba - YouTube




カオス属と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「カオス属」の関連用語

カオス属のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



カオス属のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのカオス属 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS