オッカムの剃刀 信者の視点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/10 16:14 UTC 版)
「シミュレーション仮説」の記事における「オッカムの剃刀 信者の視点」の解説
同じ現象を説明できる仮説は他にも多数存在する。このような場合、オッカムの剃刀と呼ばれるヒューリスティック規則、便宜上の方針決定を持ち出してきて適用したがる人もいる。オッカムの剃刀は、同じ現象を説明する仮説が複数あるとき、単純なほうを採用する、という方針である。別の言い方をすれば、中身を慎重に検討することなく、外形的な要素で決め付けて選択してしまおうという、一種のアルゴリズムである。ありえない仮説を懐疑主義的に批判するために使われることが多いとも言われる。オッカムの剃刀を信じてしまえば、“シミュレーション仮説は複雑すぎるから、却下して眼前にあるものがそのまま現実だと見なそう”ということにもなる。それもひとつの見解ではある。オッカムの剃刀は、オッカムの剃刀信者の間では、あまり検証もされないまましばしば、“最善だ”と美化されて考えられてしまっている。だが、オッカムの剃刀はあくまでヒューリスティックであって自然の法則ではないため、常に正しいとは限らない。科学的に見て重要な場面でオッカムの剃刀が間違ってしまう場合があり、オッカムの剃刀で作り出す記述が、かえって誤った知識となる場合があるのである。ヒューリスティックで苦し紛れに作り出してみた簡潔な記述を真理そのものと混同することは重大な問題を引き起こす。実際歴史的に見て、このがさつなヒューリスティック方針を信じてしまった者の中に攻撃的になる者がおり、それにより、先見の明があった科学者が被害を蒙ってしまった事件も起きた。アインシュタインもオッカムの剃刀の使用には釘を刺している(オッカムの剃刀に出典つき記述あり。参照可)。たとえある時点で観測されていなくても、真理というのはその時点で観測されているよりも複雑な場合がありうるのである。結局、慎重に科学的に検討してみると、オッカムの剃刀というものはそもそも使ってよいのか使ってよくないのかはっきりしない思考方針であり、厳密な科学に属するものではなく、このシミュレーション仮説に関しても、持ち出してよいのかはっきりしない。
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