エブラウクスとは? わかりやすく解説

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エブラウクス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/02 02:54 UTC 版)

エブラウクス
Ebraucus
伝説的ブリテン王
在位 紀元前1006年紀元前967年

子女 緑楯王ブルータス
父親 メンプリキウス
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エブラウクス(Ebraucus、ウェールズ語Efrawg/Efrog)は、年代記編纂者ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』に語られている、ブリトン人の伝説的王である。彼がブリテン島の統治を始めたのは、紀元前1006年頃だとされている[1]

『ブリタニア列王史』

『ブリタニア列王史』によれば、彼の父はメンプリキウス王である。この王は20年間圧政を敷き、息子であるエブラウクスと妻を捨てて男色に耽った。父の死後、エブラウクスは王位を継ぎ、39年間ブリテン島を統治した。彼は長身で、怪力無双であると賞賛されている。彼はトロイのブルータス以来初めてガリアに対して戦争を仕掛けた。この戦いにおいて彼は略奪を行い、多くの金銀を祖国へ持ち帰った。

彼は2カ所に居留地を建設した。一つは「カール・エボラクウ(エブラクウスの街エボラクム英語版、の意味)」である。これはハンバー川の対岸に建てられた。後のヨーク(ウェールズ語:Efrog)である。 もう一つはアルクッド市及び城塞アグネットである。これはアルバニア(オールバニ)に建てられた。これは「乙女の城」や「悲しみの山」と呼ばれた。現在のダンバートンにあたる。

エブラウクスには20人の妻がおり、20人の息子と30人の娘を設けた。その娘の中には、当時ブリタニアとガリアで最も美しい娘とされていたガラエスもいた。 彼の娘たちは全員イタリアアルバ・シルウィウスの元へ送られた。そこで彼女たちはトロイア人の貴族と結婚をした。彼の息子たちは、ウィリデ・スクトゥム(緑の楯)のブルータス以外全員、アッサラクを指揮官にしてゲルマニアを征服した。

エブラクウスの死後、息子のブルータスが緑盾王ブルータスとして王位に就いた。

その後の伝承

1190年に書かれた詩『ブルータス』は、『ブリタニア列王史』に基づいて書かれた最初の主要な詩である。これはヨーク設立を記念して書かれ、最後にはエブラウクスに関する以下の行で終わる:

彼はヨークを建て、彼の名前から、
エボラクムと名付け、それを良く飾った[2]

アレクサンダー・ネッカム英語版De utensilibus and De naturis rerum1213年[3]))でもエブラウクスは言及されており、「見よ、祝福されたエブラウクスが築いた都市を!」と書かれている[4]

また、14世紀に書かれたヨーク教会の2つの年代記など、エブラウクスの物語を発展させたものもある[5]。学者ポリドール・ヴァージル英語版によれば、エブラウクスは「現在スコットランドと呼ばれるブリテン最果ての地に、現在エディンバラ城と呼ばれているメイデンズの街を建てた」という[6]Registrum Malmesburienseにも、エブラウクスが『モントローズ城英語版』を建てたと述べられている[7]ジャコモ・フィリッポ・フォレスティ英語版は、エブラウクスが多くの都市を建設し、60年間統治したと主張した[4]

1486年ヘンリー7世が国内を移動する途中でヨークに到達したとき、「エブラクウスと呼ばれる同じ都市の建築家[5]」と表現するエブラウクスを演じる役者に出迎えられた。そしてその役者はヘンリー7世に「エブラクウスから受け継いだ」都市の鍵を贈った。[8]

ヨークでは、エブラウクスを象ったとされる「オールド・ヨーク[9] 」と呼ばれる古代の像がある。これはセント・サヴィアゲート英語版コリアゲート英語版の交差点にあり、15世紀には境界標識として機能していた。元々は古代ローマの記念碑の一部であった可能性がある[10]1501年、 この像はヨーク・ギルドホール英語版に「持ち去られ、その場所から移され」た。そして元の場所を示すために、「ここにヨークの像が立っていた」という石版が刻まれた(この石版は現在、ヨークシャー博物館英語版に所蔵されている)[11]

トーマス・ゲント英語版によると、この像は1726年マンション・ハウス英語版の建設中にマンション・ハウスの敷地からギルドホール内に移された。この修理[4]または交換された像は、鎧を身に着け、戴冠し、オーブと杖を持つ王を描いたもので、1738年にブーサム・バーの城壁の門の龕に移され、1834年までそこにあった[9][12]

脚注

  1. ^ Monarchie Nobelesse website, Bretons
  2. ^ Rigg, A. G. (1992). “Brutus”. A History of Anglo-Latin Literature, 1066–1422. Cambridge University Press. p. 98. ISBN 0521415942 
  3. ^ Pasnau, Robert; Van Dyke, Christina, eds (2014). “Alexander Neckham”. The Cambridge History of Medieval Philosophy. 2 (revised ed.). p. 844. ISBN 978-1-107-69191-9 
  4. ^ a b c Widdrington, Thomas (1897). “Derivation of the name Eboracum”. In Caine, Caesar. Analecta Eboracensia; Some Remaynes of the Ancient City of York. London: C. J. Clark. pp. 16–17 
  5. ^ a b Palliser, D.M. (2014). Medieval York: 600–1540. OUP Oxford. p. 21. ISBN 978-0-19-925584-9. https://books.google.com/books?id=SnNmAgAAQBAJ&pg=PA21 
  6. ^ Polydore Vergil's English History, from an Early Translation, Volume 36, Camden society, 1846, p.34.
  7. ^ Brewer, J.S., Registrum Malmesburiense: The Register of Malmesbury Abbey Preserved in the Public Record Office, Cambridge University Press, 2012, p.463.
  8. ^ Gilchrist, Kim (2021). Staging Britain's Past: Pre-Roman Britain in Early Modern Drama. Arden Studies in Early Modern Drama. Bloomsbury Academic. p. 87. ISBN 978-1-350-16334-8. https://books.google.com/books?id=-T8sEAAAQBAJ&pg=PA87 
  9. ^ a b “Bootham Bar”. An Inventory of the Historical Monuments in the City of York. 2. Royal Commission on Historical Monuments England. (1972). p. 121. ISBN 0117003271 
  10. ^ An Inventory of the Historical Monuments in City of York, Volume 5, Central. London: HMSO. (1981). https://www.british-history.ac.uk/rchme/york/vol5/pp115-128 2020年8月7日閲覧。 
  11. ^ Raine, Angelo (1955). Mediaeval York: A Topographical Survey Based on Original Sources. John Murray. p. 59. https://books.google.com/books?id=cvAiAQAAMAAJ 
  12. ^ Smith, Nicola (2018). “The Crown and the City”. The Royal Image and the English People. Routledge. ISBN 978-1-315-19611-4 

参考文献

  • ブリタニア列王史(訳:瀬谷幸男、南雲堂フェニックス)



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