エニオン(英: anyon)は、二次元の系においてのみ現れる粒子である。これは、フェルミ粒子およびボース粒子の概念を一般化したものである。
理論から現実へ
1977年、オスロ大学で研究をしていたJon LeinaasおよびJan Myrheimが率いる理論物理学者のグループは、従来のフェルミ粒子およびボース粒子の区別は二次元内に存在する理論的な粒子に対しては適用できないことを計算によって示した[1]。そのような粒子は、それまで知られていなかったさまざまな性質を示しうることが分かった。1982年、フランク・ウィルチェックによって、この粒子はエニオンと命名された[2]。ハーバード大学のバートランド・ハルペリンは、この粒子に関連する数学を使って、分数量子ホール効果を説明した。1985年、フランク・ウィルチェック、Dan Arovas、およびロバート・シュリーファーは、明示的な計算によって、分数量子ホール効果に現れる粒子は実際にエニオンであることを検証した。
2005年、ストーニーブルック大学の物理学者のグループは、エニオンの干渉によって起こるパターンを検出するための準粒子干渉計を構築した。これによって、議論の余地はあるものの、エニオンが単なる数学上の構成概念ではなく実在することを示すことができる[3]。
半導体技術の発展に伴い、薄い二次元層を堆積させることが可能となり(例えば、グラフェンシート)、電子技術においてエニオンの性質を利用する長期的な可能性が開拓されている。
物理学におけるエニオン
三次元以上の空間における粒子は、それらの量子統計に従ってフェルミ粒子もしくはボース粒子のどちらかに分類される。フェルミ粒子はフェルミ・ディラック統計に従い、ボース粒子はボース・アインシュタイン統計に従う。量子力学によって、これは粒子交換の下での多粒子状態の振る舞いとして定式化される。二粒子状態について、ディラック記法を用いて次の数式で表すことができる。