ウェダーバーンの小定理とは? わかりやすく解説

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ウェダーバーンの小定理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/03/28 07:35 UTC 版)

数学において、ウェダーバーンの小定理 (: Wedderburn's little theorem) はすべての有限[1]であることを述べるものである。言い換えると、有限環英語版において、域、斜体、体の違いはない。

アルティン・ツォルンの定理英語版はこの定理を交代環へと一般化する: すべての有限単純交代環は体である[2]

歴史

最初の証明は Joseph Wedderburn英語版 によって1905年に与えられ[3]、彼はその後2つの別証を与えた。別の証明は Leonard Eugene Dickson によって Wedderburn の最初の証明のすぐ後に与えられ、Dickson は Wedderburn が先であることを認めていた。しかしながら、(Parshall 1983) に述べられているように、Wedderburn の最初の証明は正しくなく――飛躍があり――彼の次の証明は Dickson の正しい証明を読んだ後に現れたのだった。そのため、Parshall は最初の正しい証明は Dickson に帰するべきだと主張している。

後に簡潔な証明が Ernst Witt によって与えられた[3]。Witt の証明の概略は下で与えられる。また別の方法は、定理は以下の議論によって Skolem–Noether の定理英語版 の帰結である[4]D を有限可除代数で中心を k とする。[D : k] = n2 とし qk の濃度とする。D のすべての極大部分体は qn 個の元を持つ。なのでそれらは同型でありしたがって Skolem–Noether によって共役である。しかし有限群(今の場合 D の乗法群)は真の部分群の共役の和集合ではありえない。したがって n = 1 である。

有限体の Brauer 群との関係

定理は本質的に、有限体の Brauer 群が自明であると言うことと同値である。実は、この特徴づけから直ちに以下のように定理の証明が出る。k を有限体とする。Herbrand 商英語版は有限性によって消えるから、 と一致し、これはヒルベルトの定理90によって消える。

証明の概略

A を有限域とする。A の各元 x ≠ 0 に対し、2 つの写像

は cancellation property によって単射であり、したがって有限性から全射である。基本的な群論から[5]A の非零元全体は乗法について群をなすことが従う。したがって、A斜体である。A中心 Z(A) は体であるから、AZ(A) 上有限 n 次元のベクトル空間である。すると我々の目標は n = 1 を示すことである。qZ(A) の位数とすると、A の位数は qn である。中心に入っていない各 xA に対して、xcentralizer Zx の位数は qd である。ここに dn より小さい n の約数である。Z(A)*, Zx*, A* を乗法について群と見て、類等式を次のように書ける

ただし和は Z(A) に入っていないすべての代表元 x を渡り、d は上で議論された数である。qn−1 と qd−1 はともに円分多項式 のことばによって分解できる。

多項式の恒等式

 および 

から、x = q とおくと、

 は qn−1 と をともに割り切る

ことがわかるので、上の類等式によって q−1 を割らなければならず、したがって

.

これによって n が 1 でなければならないことを見るために、n > 1 に対して

であることを、複素数上の分解を用いて示す。多項式の恒等式

,

ただし ζ は 1 の原始 n 乗根を渡る、において、xq とし、絶対値を取ると

.

n > 1 に対して

であることが、複素平面での q, 1, ζ の位置を見れば分かる。したがって

.

脚注

  1. ^ 本記事において「体」は「可換体」を意味する。
  2. ^ Shult, Ernest E. (2011). Points and lines. Characterizing the classical geometries. Universitext. Berlin: Springer-Verlag. p. 123. ISBN 978-3-642-15626-7. Zbl 1213.51001. 
  3. ^ a b Lam (2001), p. 204
  4. ^ Theorem 4.1 in Ch. IV of Milne, class field theory, http://www.jmilne.org/math/CourseNotes/cft.html
  5. ^ e.g., Exercise 1.9 in Milne, group theory, http://www.jmilne.org/math/CourseNotes/GT.pdf

参考文献

  • Parshall, K. H. (1983). "In pursuit of the finite division algebra theorem and beyond: Joseph H M Wedderburn, Leonard Dickson, and Oswald Veblen". Archives of International History of Science 33: 274–99. 
  • Lam, Tsit-Yuen (2001). A first course in noncommutative rings. Graduate texts in mathematics. 131 (2 ed.). Springer. ISBN 0-387-95183-0. 

外部リンク


ウェダーバーンの小定理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/02 17:14 UTC 版)

非可換環」の記事における「ウェダーバーンの小定理」の解説

詳細は「ウェダーバーンの小定理」を参照 ウェダーバーンの小定理はすべての有限域が可換体であることを述べるものである言い換えると、有限環英語版)において、域、斜体可換体違いはない。 アルティン・ツォルンの定理英語版)はこの定理交代環へと一般化するすべての有限単純交代環は体である。

※この「ウェダーバーンの小定理」の解説は、「非可換環」の解説の一部です。
「ウェダーバーンの小定理」を含む「非可換環」の記事については、「非可換環」の概要を参照ください。

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