アーウィンによる修正
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/22 04:21 UTC 版)
詳細は「グリフィス理論#グリフィス・オロワン・アーウィンの条件」を参照 グリフィスの仕事は1950年代前半まで航空エンジニアのコミュニティから全く相手にされなかった。その理由は、(a)実際の構造材料で破壊が起こるのに必要なエネルギーの規模は、発生した表面エネルギーよりも何オーダーの規模も大きいということと、(b)構造材料のき裂先端周辺で常にある程度起こっている非弾性変形がき裂先端で無限の応力を伴う線形弾性材料の仮定を極めて非現実的なものにしていること、であるようだ。 グリフィスの理論はガラスのような脆性材料の実験データと良い一致をもたらした。鋼のような延性材料については、 σ y a = C {\displaystyle \sigma _{y}{\sqrt {a}}=C} の関係は維持されるものの、グリフィスの理論によって予測した表面エネルギー γ {\displaystyle \gamma } は大抵の場合非現実的に高くなってしまう。米海軍調査研究所(英語版)(NRL)のジョージ・ランキン・アーウィン(英語版)の作業グループは第二次世界大戦の間に塑性が延性材料の破壊において間違いなく重要な役割を果たしているということに気が付いた。 延性材料では、き裂の先端で塑性領域が発達する(実は脆性材料でも同様である)。加えられた荷重が増加するに従って、その塑性領域はき裂が成長しき裂奥の材料にかかる荷重を緩和するまで大きくなる。き裂先端付近のこの塑性の荷重の増減の繰り返しがエネルギーの散逸を引き起こし、熱を発生させる。ゆえに、グリフィスが脆性材料に対して考案したエネルギーバランスの関係に散逸項を加える必要がある。物理の言い方をすれば、脆性材料と比較すると、延性材料におけるき裂の成長には追加のエネルギーが必要であるということである。 アーウィンの戦略はエネルギーを2つに分けることであった: き裂成長されることにより放出される弾性エネルギー。これは破壊における熱力学的駆動力となる。 塑性的散逸および表面エネルギーとして散逸したエネルギー(およびその他散逸)。散逸するエネルギーは破壊における熱力学的な抑制である。 すると全エネルギーは次のようになる: G = 2 γ + G p {\displaystyle G=2\gamma +G_{p}} ここで、 γ {\displaystyle \gamma } は表面エネルギーで G p {\displaystyle G_{p}} はき裂成長の面積当たり塑性散逸(およびその他の散逸)である。 ガラスのような脆性材料においては、表面エネルギー項が卓越するので、 G ≈ 2 γ = 2 J / m 2 {\displaystyle G\approx 2\gamma =2\,\,\mathrm {J/m^{2}} } となる。鋼のような延性材料においては、塑性散逸が卓越して G ≈ G p = 1000 J / m 2 {\displaystyle G\approx G_{p}=1000\,\,\mathrm {J/m^{2}} } となる。温度がガラス転移点に近い高分子においては、中間的な値 G ≈ 2 − 1000 J / m 2 {\displaystyle G\approx 2-1000\,\,\mathrm {J/m^{2}} } となる。
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