アニメ不毛の地とは? わかりやすく解説

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アニメ不毛の地

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/20 17:48 UTC 版)

アニメ不毛の地(アニメふもうのち)は、日本の静岡県における、地上波民放で視聴できるテレビアニメの放送状況を指す言葉。アニメ不毛地帯[1]アニメ砂漠とも[2]

概要

静岡県東京名古屋の間にあるデッドスポットで、テレビ東京系列(TXNネットワーク)、UHF(独立局)の放送局がなく、人口や経済規模の割には隣県の愛知県神奈川県よりも新作テレビアニメ深夜アニメの放送が少ない[3][4][5][6]。静岡県では夕方に『タッチ』『キテレツ大百科』『ちびまる子ちゃん』『ONE PIECE』の再放送がよく行われ、地元局は最新のアニメに関心を示してくれないとする同県へのステレオタイプができあがった[1][5][7]

2014年6月時点、静岡県で視聴可能な深夜アニメは『ノイタミナ』放送作品のように限られ、同枠が見れるようになったのは2011年10月からである[6][8][* 1][* 2]。2023年度の集計では民放4局地域でトップクラスの52本のアニメが放送されたが、日本全体の3割にあたる「民放が4局以下で視聴が可能な地域」での人口最多は静岡県であり、そのうち1割が同県なことから声が大きく感じ、中京放送圏と関東放送圏の間にあることも余計、穴に思えてしまうせいだとみられる[5]。また2005年に放送された静岡県浜松市が舞台の『苺ましまろ』は聖地巡礼で盛り上がるも同県では未放送だったことも印象に影響した[5][12]。2013年放送で同県舞台かつ、そこで生産の多いプラモデルを題材とした『ガンダムビルドファイターズ』が県内で放送されなかったという事例もある[6]

再放送をよくしていたのは『キテレツ』が2000年代まで[1]、『ONE PIECE』はテレビ静岡2015年3月まで夕方週5回だったのを『妖怪ウォッチ』再放送終了とともに深夜へ移動して週1回となり夕方アニメ枠が消滅、それを取り上げた『ねとらぼ』の記事では「「アニメ不毛の地」の……現実!!」との文言が踊った[4]。『キテレツ』はファミリー向け作品ではあるが、深夜アニメの少なさの割に度々再放送されていた[5]。その多さをネタにする「無限キテレツ地獄」「またキテレツじゃねぇか!」、一度に複数話放送されることもあるため「『キテレツ大百科』が終わった後にまた『キテレツ大百科』が始まった」というワードが存在、再放送をしなくなってしばらく経つ2024年時点でもTwitterでしばしば見受けられるものがあり、大都会岡山修羅の国と似たような地域を表すあるあるネタとなっている[5][13]

漫画家コンビたかまつやよいのエッセイ漫画『流されて八丈島 いよいよ10年目!』では静岡県出身であるコンビの片方のやよいが高校時代、人伝でテレビ愛知がギリギリ見れる人から同局放送の『新世紀エヴァンゲリオン』をほとんど砂嵐ながら台詞はなんとかわかるものを録画で見せてもらったことがあり、それに比べると移住先の八丈島は静岡県より田舎ながらアニメが見られる島は良いところだとしている[14]仏さんじょの漫画『部室のドワーフちゃん』では舞台となっている静岡県中部は大都市圏に挟まれていながらオタク向けアニメがほとんど放送されない空白地帯だとネタにされ[15]安藤正基の漫画『八十亀ちゃんかんさつにっき』でも『キテレツ』『ONE PIECE』の再放送が静岡県で多いことがネタにされている[16]

ネタ扱いされてしまうのは静岡県の人口の多さや関東地方関西地方の間の東海地方にあることからして同県出身者が関東関西の都市部に一定数在住しており、その者たちが懐古したり煽ったりできること[17]、ステレオタイプのままな理由について2024年に『アットエス』は静岡県出身者はTOKYO MXが視聴できる関東に進学や就職する若い人が多く、格差を大きく感じて『キテレツ』などをよく再放送していた頃に静岡県で生まれ育った関東で生活する人は最新の同県のアニメ放送事情は知らず、同年時点で30-50代の該当者の自虐と怨嗟がネット上に残り続けてイメージが変わらないからだと考えている[5]

2014年に『ねとらぼ』がテレビ静岡に取材した際、同局の編成担当者は静岡県がアニメ不毛の地だと呼ばれていることを把握しており、「『キテレツ』がよく再放送された理由は当時の担当ではないため、推測になる」とした上で、「視聴者のニーズが一番なのは昔から同じなはずで、それだけ好評だったからではないか」とみており、それに対して『ねとらぼ』は「キテレツ、そんなにニーズあったのか……。」との反応をみせている[3]。また、同局は平日夕方のアニメ再放送枠が年々、視聴率がとりにくくなっていき、かつては1時間枠だったのが30分枠になっていたが、決してアニメをなおざりにしたわけではなく、フジテレビ系列のアニメは基本的に全て放送する方針で『カードファイト!! ヴァンガード』『たまごっち!』『ダンボール戦機』のような他局系列でも子供人気のある作品はできるだけ放映権購入してオンエア、むしろアニメはテレビ静岡のアイデンティティだと考えているという[3]

衛星放送やオンライン配信で視聴環境は整備されていったが2024年時点で今後、静岡県においてテレ東系やUHFの開局可能性は低く、静岡局4つが他の地方局よりも編成に力を入れたり、権利保持者が同県を放送地域に入れたいとそれに見合った放送本数が用意されても遅れネットや深夜帯になることは避けられず関東放送圏、関西放送圏よりも不毛の地から脱却できないと感じられている[5]

一方で2021年にSBSラジオで放送開始の『TOROアニメーション総研』はアニメ不毛の地である静岡に架空の研究機関が設立したという形によるアニメをテーマとしたラジオ番組であり[18][19]、2022年にアニメ制作会社シャフト静岡市に新スタジオを設けたり[20]、『ちびまる子ちゃん』『ラブライブ!サンシャイン!!』『ゆるキャン△』『オーバーテイク!』『夢見る男子は現実主義者』『星屑テレパス』『となりの妖怪さん』のように静岡県の都市を舞台かモデルにしたアニメが放送、『ラブライブ! サンシャイン!!』は沼津市タイアップして成功している[1][7][21][22]

静岡県以外のアニメ不毛の地

民放が2局の福井県、3局の沖縄県がアニメ不毛の地と呼ばれている事例がある[23][24][25][26]

また新潟県も同じように呼ばれることがあり、がたふぇすはその中で漫画やアニメのPRのために開催されている[27][28]

関連項目

静岡放送(SBSテレビ)で放送されている深夜アニメ枠。
TBS系列テレビ東京系列製作のアニメ、その他UHFアニメが週に2 - 5本程度遅れネットされており、アニメ放送の少なさを補っている。

脚注

注釈

  1. ^ フジテレビが同枠を創設したのは2005年4月[9]
  2. ^ それ以前には2007年にノイタミナで放送の『のだめカンタービレ』が[10]、テレビ静岡では同年4月6日から17:24-17:54に放送された[11]

出典

  1. ^ a b c d “「アニメ不毛地帯」から「聖地の宝庫」に変化する静岡県――マンガの新聖地・清水灯台を歩いて考える“通過県”の魅力”. オタク総研 (サブカル通信社). (2024年5月14日). https://0115765.com/archives/70907 2024年8月8日閲覧。 
  2. ^ “「アニメ砂漠」静岡に救世主? ツイッター発「嫌われ野菜」が活躍中”. withnews (朝日新聞社). (2015年9月22日). https://withnews.jp/article/f0150922001qq000000000000000W02l0601qq000012529A 2024年8月8日閲覧。 
  3. ^ a b c “「アニメ不毛の地」の現実 なぜ静岡は「キテレツ」「ONE PIECE」を延々再放送するのか? 編成担当者が語った理由とは”. ねとらぼ (アイティメディア). (2014年2月17日). https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1402/17/news138.html 2024年8月8日閲覧。 
  4. ^ a b “テレビ静岡の夕方アニメ枠がとうとう消滅 これが「アニメ不毛の地」の……現実!!”. ねとらぼ (アイティメディア). (2015年3月26日). https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1503/26/news119.html 2024年8月8日閲覧。 
  5. ^ a b c d e f g h “2023年度“アニメ不毛の地”静岡で放送された民放深夜アニメは52本 聖地も増える一方、静岡県はいつまで「アニメ過疎地域」なのか?”. LIFE[ライフ]静岡新聞SBS アットエス (静岡新聞社・静岡放送). (2024年1月12日). https://www.at-s.com/life/article/ats/1391641.html 2024年8月8日閲覧。 
  6. ^ a b c “アニメファンの郷土愛が試される? 「新海誠展」がスタートした“アニメ不毛の地”静岡県”. おたぽる (サイゾー). (2014年6月29日). オリジナルの2014年7月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140708205538/https://otapol.jp/2014/06/post-1135.html 2025年4月19日閲覧。 
  7. ^ a b “富士山は静岡県のもの? 静岡県民の「あるあるネタ」”. Excite Bit (エキサイト). (2015年7月2日). https://www.excite.co.jp/news/article/E1435654004308/ 2024年8月8日閲覧。 
  8. ^ “フジテレビ「ノイタミナ」 10月より系列15局に放映拡大発表”. アニメ!アニメ! (イード). (2011年9月8日). https://animeanime.jp/article/2011/09/08/8602.html 2025年4月19日閲覧。 
  9. ^ 氷川竜介 (2015年2月). “「ノイタミナ」”. 情報・知識&オピニオン imidas. 集英社. 2025年4月19日閲覧。
  10. ^ 第13回 AMD Award '07”. 一般社団法人デジタルメディア協会 (n.d.). 2025年4月19日閲覧。
  11. ^ 「のだめ カンタービレ」最新情報”. アニメ「のだめ カンタービレ」公式サイト (2007年3月12日). 2007年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月19日閲覧。
  12. ^ Synapse編集部 (2021年5月25日). “Synapse編集部が行く!日本アニメの現状 Vol.13「地方とアニメの在り方」”. ビデオリサーチ. 2024年8月24日閲覧。
  13. ^ “あなたの地元のテレビはどう? 地方のローカルテレビあるある”. マイナビ 学生の窓口 (マイナビ). (2018年7月25日). https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/11799 2024年8月8日閲覧。 
  14. ^ たかまつやよい『流されて八丈島 いよいよ10年目!』ぶんか社、2016年、90頁。 
  15. ^ 仏さんじょ [@imusanjyo] (2016年3月16日). "ちなみに、「アニメ不毛の地静岡」の話題が出るとたまに貼られてるこの画像は、僕が描いていた「部室のドワーフちゃん」って漫画の一コマです。". X(旧Twitter)より2024年8月24日閲覧
  16. ^ “「ワンピースやキテレツを延々再放送」「天気予報はソーセージおじさん」 静岡県民の悲哀描く漫画に大反響!”. ねとらぼ (アイティメディア). (2019年12月29日). https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1912/29/news003.html 2024年8月8日閲覧。 
  17. ^ 八木太亮 (2019年11月9日). “キテレツ大百科がドラえもんに勝つためのマーケティング戦略を考える”. オトナル. 2024年8月10日閲覧。
  18. ^ SBSラジオ(静岡放送)'s post”. Facebook (2021年3月12日). 2024年10月22日閲覧。
  19. ^ 【#SBSラジオ 新番組情報!】”. Facebook (2021年3月12日). 2024年10月22日閲覧。
  20. ^ “「まど☆マギ」制作会社が“アニメ不毛の地”静岡市に進出 スタジオを新設”. SBS NEWS (静岡放送). (2022年6月23日). https://newsdig.tbs.co.jp/articles/sbs/78084?display=1 2024年8月8日閲覧。 
  21. ^ “2024年春は同時に4本!?この️1年で静岡県が舞台のアニメが8本に? 来年も“聖地”静岡がアツい”. LIFE[ライフ]静岡新聞SBS アットエス. (2023年12月4日). https://www.at-s.com/life/article/ats/1368861.html 2024年8月8日閲覧。 
  22. ^ 静岡県聖地巡礼マップ - Special”. となりの妖怪さん (n.d.). 2024年8月8日閲覧。
  23. ^ “「アニメ不毛の地!?」福井県でTVアニメ「H2O」の突発イベント開催!第1話の上映会も”. 電撃オンライン (KADOKAWA Game Linkage). (2008年1月7日). https://dengekionline.com/data/news/2008/1/7/f1cfdfa1e265edd759414f7a27bd3252.html 2024年8月30日閲覧。 
  24. ^ “沖縄初のアニソンシンガー・MICHIの“未知”なる野望とは?”. WEBザテレビジョン (KADOKAWA). (2017年4月24日). https://thetv.jp/news/detail/107202/p2/ 2024年8月30日閲覧。 
  25. ^ “旅行先での楽しみだったホテルのテレビ…スイッチつけたが福井では「寂しい祭り」【福井県立大学生コラム】”. 福井新聞 (福井新聞社). (2023年2月9日). https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1721364 2024年8月30日閲覧。 
  26. ^ 沖縄総合通信事務所|テレビ放送局チャンネル一覧表”. 総務省 (n.d.). 2024年8月30日閲覧。
  27. ^ “【注目の企業コラボも】古町エリアを舞台にアニメ・マンガ・サブカルの祭典「がたふぇす2025」15thが装いも新たに開催”. にいがた経済新聞 (にいがた経済新聞社). (2025年3月15日). https://www.niikei.jp/1490641/ 2025年4月19日閲覧。 
  28. ^ がたふぇす” (n.d.). 2025年4月13日閲覧。

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