ひよこ売りについてゆきたいあたたかい
| 作 者 | |
| 季 語 | |
| 季 節 | 春  | 
| 出 典 | コイツァンの猫  | 
| 前 書 | |
| 評 言 | 作者はいつも、半分はさびしい世界に身を置いている。本句が所収されている句集『コイツァンの猫』は、さびしさと幸福がいりまじる不思議な句集である。それは句集というよりこしのゆみこさんの本質的な部分であり、そしてそれはおそらく誰もが身を置いている世界である。だからこの句集を読むと、なにか懐かしいような心の安らぎを得ることができる。 遠い私の経験、記憶では、売っているひよこは買ってきてもすぐに死んでしまうことが多い。ひよこの生と死を同時に売っているとでも言えようか。一時はひよこに着色して売っていることもあった。ひよこ売りには、そんなひよこの愛らしさとは反対のすこし危ない気配が漂っている。そんなひよこ売りについてゆきたいというこの句、あの「赤い靴履いてた女の子、異人さんに連れられていっちゃった」のような怪しげな雰囲気を漂わせながら、それを作者は「あたたかい」という。「あたたかいひよこ」と「表面的にはあたたかいひよこ売り」と「あたたかいと言う私」。なんだかとってもあたたかそうであるが、しかし裏では、怪しげなひよこ売りと寒さをしっかり意識している作者が出くわしている。 この句があたたかい句なのか、さびしい句なのか。わたしたちは混沌としながら、この句を味わうことになる。 こしのさんは、海程同人。現代俳句協会新人賞、同協会年度作品賞受賞の実力派。超結社俳句集団「豆の木」代表。独特のリズム感をもった俳句を生み続けている。 写真提供:Photo by (c)Tomo.Yun | 
| 評 者 | |
| 備 考 | 
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