『餓鬼草紙』の葬送の地
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東京国立博物館蔵の12-13世紀の作とされる『餓鬼草紙』の「疾行餓鬼の図」「食糞餓鬼の図」に葬送の地の一コマがある。土饅頭(塚墓)の上に木が植わっているもの、石が置かれているもの(これらも墓標である)、木の卒塔婆が立っているもの、それを柵で囲っているもの、卒塔婆が五輪塔のもの。そのまわりには既に白骨化したものが散乱し、莚の上の女性の遺体は置かれて間もなく、その枕元には漆塗りらしき器がふたつ置かれている。別の敷物の上には腐乱した男の遺体。そして蓋のない棺に入れられた遺体を犬が食っている。その棺の傍には棺を担いだときの棒と、その脇に折敷(薄板の盆)と土器(かわらけ)が描かれている。これらは決して行き倒れではなく不法な死体遺棄でもない。この絵の中のフィクションは5人の餓鬼だけであり、それ以外は当時の誰もが知っていた普通の葬送の地の光景がまとめて描かれている。なお死体がみな裸なのは運んだのが親族なら帰った後に盗られたのかもしれない。運ぶのを依頼されたのが坂非人とか河原者なら、衣類具足は報酬としてそれらの者が取る権利がある。
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