PC-9821シリーズ 9821とWindows

PC-9821シリーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/06 10:18 UTC 版)

9821とWindows

PC-9800シリーズには、Windows 1.0から移植が行われていた。WindowsはGUIを実現する環境というほかに、MS-DOSでは実現できなかった、異機種間でのグラフィック描画などの共通化を念頭に置いて設計されていた。

本節では、PC/AT互換機との相違と一般にWindowsという存在が知られはじめたWindows 3.x以降のバージョンについて記述する。

PC/AT互換機との相違

PC/AT互換機とPC-98x1シリーズの間には様々なハードウェア的な差異があった。以下に主なハードウェア的な差異を列挙する。

画面表示機能

これは全くと言って良いほど互換性が無い。PC-98x1の場合、基本グラフィックは各機種完全上位互換でそれにグラフィックアクセラレータを追加する形式となっている。コネクタ形状は、モノクロ、デジタルRGB、H98、アナログRGB、VGA互換と計5種存在するが、最後の3つについては映像信号線においては互換性がある。PC/ATPS/2の場合、CGA/MDA/Hercules/EGA/VGA/XGA/XGA2全てにおいてハード的な互換性が低くディスプレイコネクタも統一されていなかった。Windows 3.x普及期において、PC/AT互換機で用いられたVESA仕様のBIOSを持つグラフィックアクセラレータが登場するに至って、ようやくコネクタ形状の統一や下位互換性が保証されたという有り様である。 Windows 3.1の頃からWindowsアクセラレーターボードなるものが使われるようになった。内蔵の機種もあったが、一部の機種は、アクセラレーターボードを増設しないとWindowsが640×400×16色でしか使用できなかった。 また、アクセラレータを増設した場合はMS-DOSでの描画にグラフィックビデオRAMと、テキストビデオRAMを使用した画面出力とし、Windows上ではアクセラレータからの画面出力を用いたため、アクセラレータボードから出た信号を一旦、RGB-IN端子でPC内部に引き込み、RGB-OUT端子から出力するか、またはRGB-IN端子のあるアクセラレータボードを増設して本体のRGB-OUTからアクセラレータのRGB-IN、アクセラレータのRGB-OUTから出力した。こうすることによって本体またはアクセラレータ上の自動切り替え機能によってWindowsが起動すると画面がアクセラレータ出力の画面に自動的に切り替わり、2種類のまったく互換性のない描画機能を両立していた。 一部機種にはRGB-IN端子がない機種があり、その機種にはRGB-IN端子のないアクセラレーターボードを増設することは出来ないとされていた。(ただし、これはそれぞれのRGB-OUT端子を切り替え器につなぎ、Windowsの起動・終了をするたびに手動で切り替える事によって対応可能)また、一部機種では、アクセラレーターボードに98独自の基本グラフィックが統合されたものがあり、この場合アクセラレータボードの(増設)交換は不可能であった。(PCIボードは可能である。表示切替はソフトで行っている。)

タイマ分解能

PC-98x1の方が分解能が低く、Windowsのタイマ関数呼び出しの際、APIに記述されている注意書き(注:ハードウェア依存のため、指定値通りに動作するとは限らない)を無視して実装されたアプリケーションには問題が発生した。後年、Win32とPentium機の組み合わせでは、CPUの超高分解能タイマを使用するようWindows側の実装が変更された。

割り込みベクタ

Intel 8259相当の割り込みコントローラをカスケード接続している所は全く同じであるが、割り込み番号と機器の対応には互換性がない。

シリアルコントローラ

PC-98x1はD-Sub25ピンコネクタでRS-232C準拠であり同期転送モードも対応するが、PC/ATはサブセットのEIA-574であり、主にD-Sub9ピンコネクタで非同期転送のみ対応する。ちなみに、PCIベース(一部PCIがないものも)の9821の2ポート目のD-Sub 9ピンコネクタ(通称2nd CCU)は非同期モードのみ対応する。

パラレルコントローラ

PC-9801はプリンタの接続のみを考慮し、セントロニクス標準コネクタから不要な信号線を省いたフルピッチベローズ型コネクタを採用していた。PC-H98やPC-9821の中期モデル(As2やAp2など)からはハーフピッチ化したフル仕様のコネクタを採用し、特に後者はセントロニクス準拠の双方向通信が可能となっている。PC/ATは信号線や電気的な仕様こそセントロニクスに準拠しているものの、何故かRS-232Cのコネクタと全く同じD-Subタイプのコネクタを採用している。

マウス

PC-98x1はマイクロソフト仕様のバスマウスを標準採用している。また、初期にはマイクロソフト仕様のシリアルマウスも使用されていた。PC/ATにおいては、標準仕様が存在せず、初期にはバスマウスも使われ、以後はマイクロソフト仕様のシリアルマウスが主に使用されていた。IBM PS/2以降ではPS/2マウスが主流となった。

Windows 98か2000であればUSBボードを用いてスクロールマウスを実装することも可能である。

PC-98x1のバスマウスでホイールに対応したものは無く、ハード的にもホイールの実装が困難である。ホイールマウスを使用するにはUSBマウスやシリアルマウスを使うか、PS/2マウスを市販の変換機を介してシリアルポート・バスマウスコネクタ併用で使用する。なお、起動時にのみ初期化が実行されるPS/2マウスと異なり、98用バスマウスは動作中に抜き差ししても問題なく動作する仕様である。

Windows 3.x/95のPC-9800版にはシリアルマウスのドライバが含まれていなかったが、Windows 98/NT以降に限ってOS標準ドライバが使用できた。特に2nd CCU搭載機種においてはPC/AT用に販売されたシリアルマウスがそのまま接続できた。

キーボード

PC-9821シリーズ初期のキーボード

PC-98x1はキーボードも異なる。PC/AT互換機と異なるのは、STOP、COPY、XFER[注 22]、NFER[注 23]、HOME CLRで、それぞれPC/AT互換機のBreak、PrtScr、変換、無変換、Homeに相当する。漢字の入力はCTRLキーと、XFERキーを押すことで可能になる。また、FEPやIMEによらず、カナキーをロック状態にすることで半角カタカナが入力できた。

PC-98x1固有のキーとしてHELPカナGRPHがある。Windows 95発売以降の機種は、PC/AT互換機との操作性の共通化のため、HELPキーの側面にはEnd、GRPHキーの側面にはAltと刻印されていた。つまり、メニューバーのファイル(F)を開くには、GRPHキーとFキーを押すことになる。GRPHキーと文字キーを押すと、半角の年、月、日、時、分、秒などの記号を入力することができた。

Roll-Up、Roll-Downは、それぞれPageDown、PageUpに相当し、upとdownの表現がPC/AT互換機とは逆である。

ファンクションキーは、PC/AT互換機はF・1 - F・12であるのに対し、PC-9821ではF・1 - F・10で、これらとは別にVF・1 - VF・5がある。

CAPSキーとカナキーは押すとLEDが点灯する方式になっている。これは、OS/2などの出現で、画面上の各ウィンドウごとにCAPSキーとカナキーのステータスが異なるケースが発生しうるようになり、機械的なロック機構による状態表示では正しく対応できなくなったことへの対策として実施されたものである[11]

PC/AT互換機と同じ配列の106キーボード(PC-9801-116)[注 24] や、特定のNEC製ソフトウェアに対応した専用キーボードも、NEC純正オプションとして発売されていた。

フロッピーディスク

PC-9801は長らく1.25MBフォーマットを採用していたが、PC-9821の頃から、PC/AT互換機と同じ1.44MBのフォーマットも扱えるようになった。ただし、MS-DOSがそれに対応しているバージョン(Ver.5.00A-H以降)である必要がある。現在のPC/AT互換機では、1.25MBを読み書き(一部はフォーマットが出来ないなどの制限あり)するには、3-MODEに対応したBIOSと3モードフロッピーディスクドライブを用意し、ドライバを組み込む必要がある。メーカー製PCでは大抵扱うことが出来る。 98シリーズは、PC/AT互換機と違い、ドライブの質が一定だったため[注 25]、フロッピーディスクの特定のトラックに特殊なフォーマットを施し、それをチェックすることで正規品か否かの判断をするコピープロテクトが主にゲームソフトで使われていた。これはMS-DOSによるコピーでは同一のフォーマットを再現することが出来ないため(特殊なフォーマットが施されたトラック)、コピーしたディスクでは正規品ではないとみなして動作しないようになっていた。なお、特殊フォーマットのチェックを外す「コピーツール」(ファイラー)と称するソフト本体とソフトごとに施された特殊フォーマットに対応するデータディスクが売られていた(詳細は割愛)。

PC-9801シリーズが全盛だった時代には高額だったこともあり、なかなかHDDの普及が進まなかったが、Windowsの利用を前提としたPC-9821シリーズの登場は転機となり、MATE・FELLOW以降ではHDDモデルを中心にデスクトップでもFDDが1台しかないモデルが登場するようになった。これらの機種では当初はHDD上に構築した専用ファイルを98ノートのRAMドライブのように扱う仮想FDDツールが添付され、FDD2台を前提としたソフトを動作させる配慮が見られた。しかしPCIアーキテクチャ搭載機ではそのようなツールもサポートされなくなり、ノート機でも物理的なRAMドライブが省略されるようになるなど、PC-9821の時代にはFDD2台という構成は次第にオプション扱いとなっていった。

ハードディスク

PC-9801シリーズの内蔵ハードディスクはノート型を除きSASIもしくはSCSI接続だが、後のPC-9821ではIDEが標準となり、さらにその後は540MB以上を認識可能なE-IDE仕様となった[注 26]。なお、初期のタワー型をはじめとするハイエンド機の大半はAdaptec製SCSIコントローラをオンボードで搭載しており、制限は「32Gの壁」くらいであった。

PC-9821シリーズの内蔵IDEコントローラは例外なくPIOモードのみのサポートであり、Ultra DMAを使うには後に発売されたサードパーティー製の拡張IDEボードに頼る必要があった[注 27]

また、Socket 5を搭載するMATE Xの一部機種に変換ソケットを使用してMMX Pentiumを搭載した場合、内蔵IDE-I/Fが有効であるとITFのコーディングの関係で起動に失敗するものがあり、この対策としてオンボードのIDEは使用せず全ドライブをSCSIで統一するユーザーも少なからずいた[注 28]。これは、NECもIntelもCPU乗せ替えを保証しない機種に対して無理矢理搭載した場合に限って起こる不具合であり、IntelからPC-9821版として販売されたODPには専用のITF書き替えプログラムが添付されており、それを対象機種に使用する限りにおいては全く問題なく動作した。ただし、対象機種はIntel製チップセット搭載機に限られたため、VLSI製チップセット搭載機の場合はその恩恵にあずかる事は出来ず、前述の全SCSI化以外の選択肢が無かった[注 29]

パーティション管理

PC-98x1とPC/AT互換機ではパーティション管理に全く互換性は無く、PC-98x1にはブートメニューが用意され、複数のOSを任意のドライブの任意のパーティションに導入し、同居させることができる。

その他の違いとして、標準のMS-DOS/Windowsでのハードディスクの先頭ドライブレターが、PC/AT互換機では起動先にかかわらず固定でC:が割り当てられるが(フロッピーディスクはA:、B:固定)、PC-98x1では起動ドライブがA:となる[注 30]

サウンド

PC-9801-86 サウンドボード

PC-9801ではサウンドカードとしてFM音源YM2203(PC-9801-26)を事実上の標準音源とし、PC-9821では上位互換のYM2608 (PC-9801-86)を採用した。後者は前者の完全上位互換の上、PC-8800シリーズにおいて長年に渡って使用されてきた枯れた音源であったため、これらの間では互換性の面では問題はなかった。もっとも、後述の理由によりWindows 95時代になって登場したPC-9801-118およびこれに相当する内蔵音源(WindowsSoundSystem=WSS)では、YM2608の生産終了とWindows上での内蔵シンセサイザの高機能化要求から、YM2608の一部機能を省略したYMF288とSoundBLASTER 16で採用されていたYMF262-Mの機能を折衷・統合したYMF297が採用された。

PC-DOS時代のPC/AT互換機の音源は、有名な所ではCreative社のSoundBlaster/16/AWE32やGravis社の UltraSound等が群雄割拠しており、各ソフトウェアの側で複数のサウンドカードに個別にサポートする、といった対応がとられていた[注 31]

Windows 3.1にマルチメディア拡張が搭載され、マイクロソフトがMMCガイドラインにおいて標準PCM音源としてWindows Sound System(WSS)を規定したため、両機種ともその互換PCM音源を搭載することになったものの、既存のMS-DOS用のソフトではWSSに対応しておらず、混乱が生じた。PC-9800シリーズ用Windows 9xではPC-9801-73・PC-9801-86のPCMも引き続きサポートされたものの、同カードではPIO転送時の負荷が大きいため、場合によっては「音飛び」が発生する問題があった。なおWSS互換音源搭載WindowsマシンにPC-9801-86を挿して共存させようにも、音源種別を識別するための一部のI/Oポートが重複するなどリソースの競合が見られ、WSS互換音源のINTを変えるだけでは正常動作しなかったため、フリーソフトの切り替えツールを併用する必要があった[注 32]

USB

PC-9821ではチップセットにインテル430VX[注 33]を使用した機種の一部にUSBポートが搭載されている(Xcシリーズ、V166、V200など)。標準のOHCI準拠規格であったが、「PC-9821シリーズでは使用できません」と明記してあるUSB対応機器も多かった。Windows 2000以降はドライバ等の熟成もあり問題なく使用できる機器がほとんどだが、PC-9800シリーズへの対応を公式に謳うUSB対応機器は皆無に等しい。

またPCIスロットにUSBインターフェースを増設することも可能だが、PC-9800版Windows 2000にはUSB2.0のEHCI (Enhanced Host Controller Interface)ドライバが含まれていないため、インストールには若干の知識と工夫を要する。

メモリ

初期のPC-9821ではPC-9801シリーズからの流れで、オンボードメモリの640KBから1024KBの間のアドレスはメモリ容量に含めない風習があった。例えばWindows 95(日本語版)のシステム要件で最低メモリ容量はPC/AT互換機で8MBに対し、PC-9800シリーズでは7.6MBとされていた。

デスクトップ機の場合、当時すでにAT互換機ではJEDEC仕様のSIMMが普及していたが、PC-9821では1993年5月のPC-9821Ceまでは別売りの専用メモリボードを介して増設する、いわゆる61SIMMと呼ばれる独自のSIMMが使われていた。同年7月のPC-9821AfからはほぼJEDEC仕様に準ずるSIMMが採用されているが、別売りの専用メモリボードを介す形式はその後の2代目MATE Aシリーズでも引き継がれた。これに対しMATE BはオンボードでJEDEC仕様のSIMMスロットが備えられており、標準搭載のメモリもSIMMが使われている。特にMATE X以降はメモリ増設時に標準搭載のSIMMを別売りのSIMMに交換することがサポートされるようになっており、建前上640KBから1024KBの0.4MBもメモリ容量に数えて論じざるを得なくなっている。この場合でもその0.4MBはユーザーは利用できないことから、カタログの類では「32MB(ユーザーズメモリ31.6MB)」のような表現で併記されている。

JEDEC仕様のSIMMが使えるようになってもしばらくはNEC独自のメモリコントローラが使われていたが、やがてMATE X以降でPCIチップセットを持つようになってからはPCIチップセットのメモリコントローラが使われている。デスクトップ機の場合、PCIチップセット開発以前の製品であるMATE Aや1枚単位でSIMMを増設できる機種を除き、Pentium以上のPC-9821では物理的なPCIスロットを持たない機種でもPCIチップセットでメモリが管理されている。

OS

基本的にPC-9801シリーズ用の物がそのまま利用可能。PC単体でN88-BASIC(86)を起動可能(ROM-BASIC[注 34] なのも同じ。

またFDDモデルを除くほぼ全ての機種でWindows 3.1もしくはWindows 95が標準搭載されており、購入してすぐに使用可能な状態で出荷されていた。Windows 95発売からしばらくは出荷時にWindows 3.1とWindows 95が両方搭載されていて、購入後直後の初回起動時に使用するOSを Windows 95 と Windows 3.1+MS-DOS 6.2 のいずれかを選択する。選ばれなかった方はこの時点で削除され、以後復元することが出来ない。再セットアップに必要なディスク類はWindows 95のもののみ同梱されているが(ただし、再セットアップに必要な起動用フロッピーには何も書き込まれていない)、Windows 3.1+MS-DOS 6.2 を選択した場合はWindows 95の一式をNECに返送することでWindows 3.1+MS-DOS 6.2の再セットアップディスク類が送られるようになっていた。また、Windows 95の再セットアップに必要な起動用フロッピーは、Windows 95を選択して起動した際、1回だけ作成可能となっていた。ただし、付属のフロッピー以外には作成ができないようになっているが、作成したフロッピーのコピーや、コピーしたフロッピーからの起動は可能であった。また、選ばれなかった側やWindows NTなどその他のOSを別途購入してインストールするためのドライバ類を入れたフロッピーディスクが別途付属していた(Windows 95用ドライバは返送後交換されるWindows 3.1+MS-DOS 6.2の再セットアップ用ディスク類に附属)。

さらにNEC以外のサードパーティが作成した独自のMS-DOS互換OSや、有志により作成されたUnix系OSなども存在し、PC-9801シリーズ同様様々なOSを利用可能。


Windows 3.x系

Windows 3.1は高速化の為に固定スワップファイルへのファイルシステムAPIを経由しない直アクセス等のPC/AT互換機にべったりと依存した実装を行っていたため、移植が困難であったと言われている。もっとも、FMRシリーズJ-3100シリーズ、それにMULTI 16シリーズ等にも各社が移植を行っていたため、困難であったか否かの判断は難しい。

なお、Windows 3.1の日本語への移植はNECが担当していたが、オリジナルであるAT互換機版と比べ、スタンダードモードでDOSプロンプトが使えないといった制限があった。また、EPSONからも自社製98互換機向けにWindows 3.1が発売されていたが、こちらはスタンダードモードでもDOSプロンプトが利用できるものの、PC-9821用PEGCドライバが同梱されていなかった。なおNEC版でもPC-9821用PEGCドライバが搭載されたのはWindows 3.0B以降であり、Windows 3.0/3.0AにおいてPEGCは利用できない。

Windows 9x系

一般には、PC-9821がPCIアーキテクチャへ転換したため、Windows 9x系の移植に有利となったと言われているが、これは間違いである。本家PC/AT互換機版がISAやISA+VL世代の機器をも動作対象としていたことから類推できよう。

Windows 3.1に比べ、OS本体の仮想化が進んでいたため、ドライバやVXDレベルに差異を押し込めることが可能になったのでOS本体の移植の難易度は下がり、ドライバの開発が困難になったのでは無いかと思われるが、他の国産機への移植がFM TOWNSEPSON 98互換機のみであったため、判断は難しい。

Windows NT系

本来、複数のCPUアーキテクチャでの動作を前提としていたWindows NT系は移植が楽で、極論すればHALと98形式のHDDパーティション解析レイヤとドライバ類だけ開発すれば良い。

NT系は抽象化が高度であり、Windows NT 3.1の時代からWindows 2000に至るまで、ネットワークカード等のROMを持たないカードは当然として、ROMを持つPCIカードでもそれを無効にすれば、PCIの機種依存実装の見本とも言えるビデオカードがPC/AT互換機のドライバで(内部のリレースイッチ切り替えを除き)動作する場合があり、SCSIカードやRAIDコントローラもBOOTを前提としなければドライバを含めてそのまま利用可能な場合がある。


  1. ^ PC-9821シリーズの下位機種であるXe10と共通設計のマザーボードを採用したため。なお、Xe10とBX4の出荷時でのハードウェアの相違点は搭載CPUや実装メモリ量、それに搭載FDDの台数(BX4は2台、Xe10は1台を搭載する)程度でしかない。
  2. ^ Mate Local Busを略してMLバスとも呼称される。
  3. ^ Initial Test Firmware
  4. ^ この問題についてのNEC側の公式見解は、9821とは「標準(出荷時状態)でWindows 3.1において640×480ドット表示が可能なもの」を指すとしていた。この問題はその後、「PC-9801」として発売された「PC-9801BX4」は「PC-9821Xe10」とマザーボードを共用してコストダウンを図る目的でPEGCがそのまま搭載されていて、いずれの機種でも640×480ドット256色表示が可能であったため、さらに混乱が深まった。
  5. ^ デバイスの種類ごとに異なるコネクタが位置をずらして配置されている。
  6. ^ Pentium-90MHz搭載。ただし、CPUソケットはSocket 5よりピン数が少ない専用品である。
  7. ^ AnはBIOSアップデート(プラグ&プレイ サポートソフト)の適用でPnPに対応した。
  8. ^ PCMデータを従来のFIFO転送ではなく、DMA転送で再生する。
  9. ^ のちのCanBeシリーズには拡張バススロットを廃止したモデル(Cr13)やPCIバススロットのみを実装したモデル(Ctシリーズ)も登場し、発展形と言えるCEREBシリーズでもこの仕様が踏襲された。
  10. ^ サウンド機能のシステムからの切り離しはMATE Xシリーズなどと違って不可である。
  11. ^ 従来はFDD2基を重ねて搭載可能なレイアウトであったが、2基を横並び増設とすることでファイルベイの位置を引き上げ、その下に生じた空きスペースに標準搭載の内蔵HDDを固定するように変更された。ただし、MATE-XであってもXc型番のデスクトップモデルでは、その後も従来のFDD縦並び型の筐体が使われ続けた。
  12. ^ 従来は専用グラフィックとサウンド機能はマザーボードに直接搭載であった。ただし、従来のMATE-XでもXe10やXb10にはそれらとは形状の異なるサウンド専用スロットがあり、モデルによっては最初からサウンドボードがドータボードの形で搭載されていた。
  13. ^ もっとも、増設されたPCIスロット1本はPEGCとWindows用グラフィックコントローラをセットで搭載する(ビデオメモリを共有する)特殊な設計の専用グラフィックカードが占有し、これを抜くとマシンそのものが起動しなくなるため、実質的な拡張性そのものはスタンドアローンで使用する限りは従来のMATE Xなどと大差ない。
  14. ^ 同じCPUとOSを搭載するPC-9821St20/L16が定価850,000円に対し、この機種は定価398,000円で、同時期に販売されていた同クラスのPC/AT互換機と比較しても低廉な価格であった。
  15. ^ 逆に後発となったことで、PIIX3以前の未成熟UDMAや、ノースブリッジである430HXの初期ロットのエラッタであるECCが使用できないなどのトラブルが収束するのを見越してからチップセットを採用することができた。
  16. ^ Reliance Computer Corporation、後のServerWorks社で、2001年にBroadCom社に買収された。
  17. ^ 初期のPC98-NXシリーズは独自性を打ち出すあまり、USBキーボードを標準としオンボードのPS/2ポートを廃止するなどの見切り発車的なレガシーフリー・デザインとしたため、PC/AT互換機とPC-9821シリーズ双方のユーザーから非難され、後にPS/2ポート等のレガシーインターフェースを搭載をする方向転換を行うこととなった
  18. ^ ソケット370版Celeronを搭載するRa40/43については、ソケットとスロットの間のソケット変換下駄(Micro Star社製MS-6905)を用いてCPUを実装してあった。
  19. ^ MS-DOSプリインストールモデルではプラグアンドプレイ機能などについてWindows 9xプリインストールモデルとは細部の挙動が異なるITF/BIOS ROMが搭載されていた。これはかつてのWindows NTプリインストールモデルと同様である。
  20. ^ Windows 2000(PC-98に限らない)で一部のXP用ファンクションを代弁するフリーソフトが存在する。
  21. ^ 2007年9月現在、ロムウィン社98BASEシリーズ、エルミック・ウェスコム社iNHERITORシリーズなどが製造・販売されているが、iNHERITORシリーズについては2007年9月28日での受注終了が予告されている
  22. ^ 『電脳辞典 1990's』 p.361によれば、CROSS reFERence keyの略で、この場合、"X"で"Cross"を表している。Cross referenceは文書内での相互参照を意味のことである。別名「変換キー」であるが、当時は広く使われていたかな漢字変換ソフトウェアATOKでは変換動作はスペースキーに割り当てられていたため、その後は別の動作に割り当てられることが増えたとの説が、この文献では採られている。
  23. ^ 『電脳辞典 1990's』 p.331によれば、Negative cross reFERence keyの略であり、XFERの逆の意味である。同書 p.241では、事実上の無変換キーとして紹介されている。
  24. ^ キースキャンコードはPC/AT互換機用106キーボードとは異なり、PC-9800シリーズ汎用のものに準じるため、一部のゲームなど同コードを直接読み出すタイプのソフトウェアは正常動作しない。
  25. ^ PC/AT互換機は色々なメーカのドライブが使われていたが、98は長らくNEC純正機種が標準搭載されていた。ただし、MATE X以降やノートなどではSONYやシチズンなどのドライブが一部で採用されている。
  26. ^ ただし、1997年秋モデル以降のものを除く大多数の機種は4.3GB以上のHDDを接続するとBIOSレベルでハングアップする。PC/AT互換機との最大の違いは、2ポート4台の接続をPC/AT互換機で言う所の1ポート2台分のリソースで実現していた所である。
  27. ^ もっとも、PIO4のデータ転送レート上限にすら達しない性能のHDDが標準搭載されていた時代の話であり、NECはそれ以上を求めるユーザはPCIのUltraWide SCSIあるいはUltra SCSI対応のHDDを使用せよとの対応を取った(実際にも自社ブランドでPC-9821シリーズ対応BIOSを書き込まれたAdaptec製Ultra SCSI/UltraWide SCSI-I/Fカードをオプション提供した)ため、Ultra DMA-I/Fを提供することはなかった
  28. ^ ちなみにK6-2などの互換CPUの場合はこの問題は発生しない
  29. ^ もっとも、CPU載せ変えによるこれらの不具合は公式サポートされていないCPUをPC/AT互換機に搭載した場合でも発生する
  30. ^ これについてはWindows 2000ではPC/AT互換機と同様に改められ、増設フロッピーディスクドライブのドライブレターはハードディスクの後に割り当てられる仕様となった。また、Windows 98などでもインストール時のオプション設定でドライブレターをPC/AT互換機版と揃えることが可能である。
  31. ^ メガデモと称される有志作成のデモンストレーションではよりハードウェア構造の公開されていたGravis UltraSoundが圧倒的に支持されていた
  32. ^ PCM部の動作を86互換とWSS互換で必要に応じて自動的に切り替える仕様のサードパーティー製互換音源ボードも存在した。
  33. ^ 本来i430VXに標準搭載されているはずのUSBはサウスブリッジ側の機能であるためにPC-9800シリーズで利用することはできず、別途NEC製のUSBチップを搭載して実現されている[12]
  34. ^ ただし、ITFの容量が増大した末期の機種では、互換性維持のためにディスクBASICなどから呼び出されるルーチン群はそのまま搭載されたものの、BASICインタプリタそのものの搭載は廃止された。
  35. ^ メルコのハイパーメモリCPUにより79.6Mまで増設可だが、Windows NT/2000ではメーカー公式ドライバが対応しておらず、このハイパーメモリ領域は認識されない。
  36. ^ As2は非搭載、Ap2は128KB標準搭載で、両者共に256KBまで増設可。
  37. ^ メイン基板上へのタンタルコンデンサ追加による回路修正が行われた。
  38. ^ MS-DOSやWindows 3.x/9xについては修正ユーティリティ配布で対応されたが、その種の方法では修正不可のWindows NTユーザ向けには対策版ITFを書き込んだROMへの交換が実施された。
  39. ^ この問題とは別に、Ap2/As2では特にカレンダ時計 (RTC) 自体が故障しやすいという持病も知られる。これは部品配置の関係で特にカレンダIC周辺の信号線が腐食で破断しやすいことが原因であり、必ずしもICそのものの不具合では無い(これに対して越年問題はIC側のバグに近い仕様が原因である)。DOSやWindows 3.1/9xでは日付や時刻が異常でも動作はするため気付きにくいが、Windows NT/2000ではいつまで待ってもログインが完了しないという深刻な不具合が生じるため、NTユーザーは修理に出すしかなかった。この点でも上記の越年問題と混同される可能性がある。しかし越年問題とは全く原因の異なる故障であり、DOSやWindows 3.1/9xを使う場合であっても修正ユーティリティで対応できるものでは無い。なお単なるバッテリ切れでも同様のカレンダ異常を生じることがあるが、その場合は日付・時刻を再設定すれば治ることが少なくない。
  40. ^ 出荷時状態ではAs3は非搭載、Ap2は128KB標準搭載で、両者共に256KBまで増設搭載可。
  41. ^ B-MATEの内蔵グラフィックアクセラレータはいずれもCL-GD5428で同じだが、Windows 9xのリファレンスドライバはBfがSV-98と共通であり、Be/Bs/Bpとは別扱いになっている。
  42. ^ Xsは非搭載、Xpは128KB標準搭載で、両者共に256KBまで増設可。
  43. ^ オンボードIDEがPIOモード2止まりである点はもちろん、PCIチップセットがPentium Proの頃の旧世代品であるため必然的にメモリが当時すでにほとんど見られなくなっていたSIMMのままだった。またビジネス向けであるためグラフィックアクセラレータも旧製品から据え置かれたほか、この頃(1999年)にはほぼ一般化していたUSBすら標準では搭載されなかった。
  44. ^ ただし、RaII23はBIOSが古いため、そのままではRaII23にCeleron433MHzを載せてRa43相当にすることはできない。
  45. ^ ただし、標準搭載のHDDやCD-ROMドライブはIDEタイプでありSCSI-I/Fは使用されていない
  46. ^ ただしSV-98 model3のデュアルプロセッサは対称型マルチプロセッサ (SMP) に対応しておらず、非同期マルチプロセッサ (AMP) である。FreeBSD(98)やWindows 2000はAMPに対応しておらず、デュアルプロセッサ運用にはWindows NTのようなAMP対応OSが必要になる[18]
  47. ^ なお、この当時のタッチパッドは、現在主流の指先の微電流感知をする型とは異なり、パッドに掛かる圧力で作動する感圧式であり、タッチペンでの操作も可能であった。
  1. ^ 「特集・98とともに歩く, これからの10年」『Oh!PC』9/15号、ソフトバンク、1993年、137頁。 
  2. ^ PC-9800シリーズ受注終了のお知らせ”. NEC (2003年8月7日). 2003年8月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月1日閲覧。
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  5. ^ SE編集部、『僕らのパソコン30年史 ニッポンパソコンクロニクル』、翔泳社、2012年、p206。[1]
  6. ^ a b 「第2特集 : 浸透する台湾パソコン」『日経パソコン』1995年3月13日、182-187頁。 
  7. ^ 修理対応期間について”. 121ware.com. 2010年10月7日閲覧。
  8. ^ http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/160729-1.pdf
  9. ^ 写真から「PC-9821 Xb10」と機種名が読み取れる。
  10. ^ 倶知安駅は北海道旅客鉄道(JR北海道)の駅で、そもそもJR北海道の経営自体が困窮している。なお、倶知安駅は北海道新幹線の延伸開業時に函館本線も高架化されることになっているが、運行管理システムについては未定。
  11. ^ 「Products Showcase」『月刊アスキー』1988年9月号、アスキー、190頁。 
  12. ^ 小高輝真の「いまどきの98」 第1回”. Impress Watch (1997年1月30日). 2017年1月13日閲覧。
  13. ^ 対応情報 CPUアクセラレータ NEC PC-9821 - ウェイバックマシン(2005年11月24日アーカイブ分)
  14. ^ SV-98model1
  15. ^ SV-98model2
  16. ^ SV-98model1A/model3
  17. ^ SV-98model1A2
  18. ^ FreeBSD(98) SMP users”. 2018年3月22日閲覧。






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