黒海艦隊 主要根拠地

黒海艦隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 03:44 UTC 版)

主要根拠地

発足以来、黒海艦隊は長年にわたりセヴァストポリを根拠地としてきたが、ソ連崩壊以降は1997年のロシア-ウクライナ間協定により同地の使用権を期限付きで得ているものの、ウクライナの政治情勢により使用権・協定更新などの扱いが変動し、また艦艇・装備の更新も認められていないなど不安定な状態に置かれてきた。一方、ロシア領内のノヴォロシースクにも海軍基地は設置されていたものの規模が小さく、大規模な部隊の配置には不適であった[23]

このような情勢に対処するため、2000年代以降ロシア海軍はノヴォロシースクの基地を拡張して黒海艦隊の主力をこちらに移すこととし、2005年からノヴォロシースク海軍基地の拡張作業が開始された[23]。この拡張計画により、それまでノヴォロシースク港の海軍埠頭には艦船数隻程度の接岸が可能であるに過ぎなかったところを、2010年までに複数の埠頭を整備し、2020年までに航空基地などの附属施設も整備することとしていた[23]。その後、黒海艦隊への新造艦配備計画に関連して、これら新造艦をロシア-ウクライナ間協定に縛られないノヴォロシースク基地に配備して運用するため、拡張計画の規模は更に拡大され、2014年までに新造艦の配備・運用に必要な施設を整備することとなっていた[24]。しかしながら、2014年のロシアによるクリミア半島編入により、ロシアはセヴァストポリを安定して使用できる状況が生じたが、ウクライナはクリミアを含めた被占領地の奪還を掲げ、2022年ロシアのウクライナ侵攻ではクリミア周辺も戦域となっている。

国外ではシリアの港湾都市ラタキアタルトゥースを長年補給拠点としており、これらを策源地として2015年にロシア軍がシリア内戦でアサド政権を支援して介入した。黒海艦隊は、トルコの支配下にあるボスポラスダーダネルス両海峡というチョークポイントを抱え、両海峡はモントルー条約により軍艦の通過に制約を課せられていることから、その外側にあるシリアの基地は貴重な存在となっている。


注釈

  1. ^ ソ連崩壊後、ロシアはウクライナ領クリミア半島のセヴァストポリを軍港として利用し、2014年にクリミア全体を制圧して編入を宣言したが、ほとんどの国家は公的には承認していない。
  2. ^ 極東へ回航されたバルチック艦隊日本海海戦日本海軍に敗れ、ほぼ壊滅した。
  3. ^ 大型軍艦の作戦行動中の喪失は、フォークランド紛争で原子力潜水艦コンカラーによって撃沈されたアルゼンチン海軍の巡洋艦ヘネラル・ベルグラノ以来。

出典

  1. ^ Шойгу: действия Минобороны РФ в Крыму были вызваны угрозой жизни мирного населения”. イタルタス通信 (2014年4月4日). 2022年2月12日閲覧。
  2. ^ a b c d 「露黒海艦隊本部で爆発 ウクライナ側の攻撃か」産経新聞』朝刊2022年8月21日(国際面)2022年9月14日閲覧
  3. ^ a b 「ロシア黒海艦隊、一部潜水艦の配備先変更=英国防省」ロイター(2022年9月20日)2022年9月21日閲覧
  4. ^ "Черноморский флот до 2020 года получит 6 фрегатов и 6 ДЭПЛ," ИТАР-ТАСС, 27 октября 2010. ヴィソツキー海軍総司令官の発言
  5. ^ “ウクライナ問題に決着つけるエネルギー価格”. スマートエネルギー情報局. (2014年5月23日). http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40762?page=5 2014年6月18日閲覧。 
  6. ^ “中露軍が地中海演習を終了”. 産経新聞. (2015年5月22日). http://www.sankei.com/world/news/150522/wor1505220005-n1.html 
  7. ^ “General Staff update: Not Orsk but Saratov landing ship destroyed at Berdiansk Port”. ウクルインフォルム(UKRINFORM). (2022年3月25日). https://www.ukrinform.net/rubric-ato/3439345-general-staff-update-not-orsk-but-saratov-landing-ship-destroyed-at-berdiansk-port.html 
  8. ^ Russian warship destroyed in occupied port of Berdyansk, says Ukraine”. BBC (2022年3月24日). 2022年4月19日閲覧。
  9. ^ Появилась информация об аресте командира Черноморского флота России”. 2022年4月22日閲覧。
  10. ^ ОСИПОВ Игорь Владимирович - биография, досье, активы | Война и санкции” (ロシア語). sanctions.nazk.gov.ua. 2023年1月4日閲覧。
  11. ^ СБУ назвала первых причастных к бомбардировкам гражданских объектов Украины”. istories.media (2003年1月3日). 2023年1月4日閲覧。
  12. ^ 「ロ黒海艦隊に新司令就任と国営通信、クリミア情勢受けトップ交代か」ロイター(2022年8月18日)2022年8月21日閲覧
  13. ^ ウクライナ、クリミアに大規模攻撃 露軍艦艇2隻損傷”. 産経新聞 (2023年9月13日). 2023年9月13日閲覧。
  14. ^ ウクライナ軍、セバストポリのロシア黒海艦隊司令部を攻撃”. ロイター (2023年9月21日). 2023年9月20日閲覧。
  15. ^ “ウクライナ国防省「ロシア黒海艦隊のミサイル艇撃沈」…水上無人艇が体当たり攻撃”. YOMIURI ONLINE. (2024年2月2日). https://www.yomiuri.co.jp/world/20240202-OYT1T50045/#google_vignette 2024年2月2日閲覧。 
  16. ^ “ウクライナ軍、黒海でロシアの大型揚陸艦を撃沈と発表”. CNN NEWS. (2024年2月15日). https://www.bbc.com/japanese/articles/cd1w46w1yxlo.amp 2024年2月2日閲覧。 
  17. ^ “ロシア黒海艦隊の哨戒艇を沈没 ウクライナが無人艇攻撃”. 日本経済新聞. (2024年3月6日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR060A80W4A300C2000000/ 2024年2月2日閲覧。 
  18. ^ “ロシア海軍の総司令官が交代、ウクライナ側の攻撃で艦船に損失…プーチン大統領が更迭決める”. YOMIURI ONLINE. (2024年2月2日). https://www.yomiuri.co.jp/world/20240312-OYT1T50046/#google_vignette 2024年2月2日閲覧。 
  19. ^ 日本放送協会 (2024年4月3日). “国境から1000キロ超 ロシア中部をウクライナ無人機で攻撃か | NHK”. NHKニュース. 2024年4月14日閲覧。
  20. ^ Ракетный фрегат "Адмирал Макаров" проекта 11356 может стать флагманским кораблем Черноморского флота России после гибели крейсера "Москва". Об этом в среду, 18 мая, сообщил ТАСС сообщил источник, близкий к силовым структурам Крыма.”. MiL.PRESS FROT (2022年5月18日). 2022年7月19日閲覧。
  21. ^ Три фрегата для ЧФ строятся на заводе "Янтарь", следующие контракты запланированы с иностранными заказчиками - заместитель главкома ВМФinterfax 2017年7月1日
  22. ^ Подлодку «Великий Новгород» спустили на воду в Петербурге(ロシア語)
  23. ^ a b c 世界の艦船』2008年7月号(No.692)pp.226-227
  24. ^ 『世界の艦船』2014年5月号(No.797)p.153


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