音域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 06:14 UTC 版)
人声の音域
ヒトの声で出すことのできる音高の範囲が、人声の音域である。ただし、人声の音域だけは、しばしば声域と呼ばれる。
声域の幅
声域は、生理的声域と声楽的声域に大別されるが、一般には声楽的声域の意味で使われる。生理的声域は、母音が潰れたり奇声といわれるような声も数えるので声楽的な音域よりも広い。また、声楽において声域は、声種(声の音色による区分)とペアで扱われる場合が多い。
ヒトの声域は、誕生直後の赤子では440Hz前後のみで音域と呼べるものはほぼ無いが、成長するに従い声道が長くなることと、会話能力の向上することと共に、特に低音へ向けて広がる。第二次性徴が発現する頃には、1.5 〜 2オクターブ程度になる。この第二次性徴で、いわゆる声変わりが発生し、特に男声の基本周波数が大きく低下する。これは声帯の形状が大きく変化することなどが原因である。第二次性徴を過ぎた頃からは声域に大きな変化は無くなるが、歌唱訓練を積むことで発声技術を向上させれば、さらに声域を広げることも可能である。一般成人の声域は2オクターブ程度であるが、声楽家の場合は2 - 2.5オクターブ程度と広くなる傾向にあるのはこのためである。さらに、ポピュラー音楽はPAを利用して拡声したりすることもあって、声量が出ないような音域の声なども使用可能となり、歌唱に利用できる声の範囲がクラシックより広がるため、声域も広がりがちである。ファルセット(裏声)を多用する歌手は3 - 4オクターブ近くに達し、ホイッスルボイス[注釈 1]を使用する歌手は5オクターブを超えることもしばしばある。あくまでキャッチコピーではあるが、マライア・キャリーは7オクターブの声域を持つとされている。
また、言葉が明瞭に聞こえることを条件にするならば、声の高さの上限はある程度定まる。これは、言葉を発音するに当たって重要なフォルマントの1つが500 - 1000Hzの間に現れるため、声の高さ(基本周波数)が500Hzを超えると母音(特にoの母音)が不明瞭になり始めるから。500Hzというのはピアノの鍵盤でいうと、中央のド(C4)から数えて11番目のB4の辺りである。このB4は、女声のパートの1つアルトでも使用されることのある程度の音高だ。したがって、それよりも高い音を出すことがしばしばあるソプラノでは、より言葉が不明瞭になってしまうことを意味する。なお、古いベルカントの訓練法には純粋な母音を出すための訓練があるが、C5より上の音では行わないのが原則とされる。さらに、1000Hz近くまで達すると、もう全く、母音を表すことは不可能となる。なお、逆に下限は70 - 100Hz程度(これを下回ると声門閉鎖期が声道の共鳴周期を大きく超えてしまうため、連続的な音に聞こえなくなる。)なので発語可能な音域は4オクターブ程度と言える。
声域の誇称
地声でアルト歌手並みの高音が出せたり、ソプラノ歌手のような裏声が出せる男性歌手、ホイッスルボイスを使用する女性歌手のキャッチコピーに「4オクターブ」や「5オクターブ」という言葉が使われるが、そのような歌手の実際の声域は3 - 3.5オクターブ程であることが多い。
科学的ピッチ表記法を使用した5オクターブの声域は、例えば最高音がA6(ホイッスルボイス)の女性歌手の場合。成立させるためには、A1(ピアノの下から二番目のラ)まで出せる必要があるが、これはバス歌手の最低音よりも低い音で、女性の声帯で発声するには不可能に等しい低音である。
そのような過剰な表現が増えたため、地声が高い=4オクターブ。裏声、ホイッスルボイスが出せる=5オクターブ。というルールができつつある。
ちなみにマライア・キャリーは、実際に5オクターブの声域で発声可能であるが、彼女はバリトン歌手並みの低音(G#2)からハープの最高音に匹敵するホイッスルボイス(G#7)まで出すことができるためこの声域を実現している。
声種の名称
「声種」は、(特に声楽的な扱いでの)音色、声質を指して用いられることもあるが、主にクラシック音楽における声楽家個人の音域を示す言葉としても知られている。声種は、声の音色と声域と合わせて区別するものであるが、適切な訓練を経て能力の開発された歌手の場合は音域がより優先される。このため、バリトンのような太く逞しい声質のテノールや、逆にテノールのような軽い声質のバリトンなどが存在する。
両節について、それぞれ先に挙げたものが高い音域である。
音域と同じ種類の言葉
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