集合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 06:47 UTC 版)
集合の演算
いくつかの集合を扱い、その関係性について論じるとき、もともと考えていた集合たちから新しい集合を作って調べるというのは有効な手段の一つである。これらの操作は、集合に対する演算と見なすことによって、集合族に関するいくつかの代数系を提供する。それらの代数系を抽象代数系と見なせば、抽象代数学の一般論を適用することでまたいくつかの概念を提供することになる。
基本的な集合演算
- 結び・合併・和
- 詳細は「合併 (集合論)」を参照
- 二つの集合を「くっつけ」て一緒にしてしまうことで新しい集合を取り出すことができる。加法的な集合族の基本となる演算のひとつ。和集合。
交わりの模式図 - 二つの集合の共通した部分を見つけることで、新しい集合を取り出すことができる。乗法的な集合族の基本となる演算。共通部分。
差集合の模式図 - 二つの集合のうちの一方の集合について、それに帰属する元のうち、同時に他方にも含まれる元を取り除いて新しい集合を作ることができる。差は一方と他方の補集合との交わりであり、乗法的な演算である。
補集合の模式図 - 全体集合(普遍集合)が与えられ、任意の集合は全体集合の部分集合であるという仮定のもとで、一つの集合の全体からの差。勝手な集合はその補集合と交わりを持たず、それらの和は全体集合に一致する。
対称差の模式図 - 二つの集合の結びに帰属する元から、その交わりに属する元を取り除いて新しい集合を考えることができる。これは結びから交わりを引いた差である。結びと同様に加法的な演算。
三元集合の冪の模式図 - 与えられた集合に対して、その冪集合とは与えられた集合に包含される集合全体の集合である。ある集合の冪集合はその集合の部分集合からなる集合族のなかで最大のものであると言っても同じである。
直積の模式図 - 二つの集合に対し、それぞれに帰属する元の順序対を要素とする集合を作ることができる。
集合の類別の模式図 - 集合に同値関係を与えるとき、各類をその要素とする集合を考えることができる。
いくつかの集合族
集合からなる族 A を考える。A が集合演算についていくつかの性質を満たすとき、それらには特別の名前が与えられることがある。
- A が(有限)交叉について閉じているとき π-系であるといい、π-系が空集合を含むとき乗法族である[2]という[注釈 4](ディンキン族も参照)。さらに可算交叉について閉じているとき δ-乗法族であるという。また、乗法族が包含関係を持つ任意の二つの集合に対し、一方から有限回の非交和を行って他方へ達する列を持つとき集合半環という。
- A が(有限)和と(有限)交叉について閉じているとき、集合の束あるいは集合環という。A が空集合でなく(あるいは空集合を元として含み)、和と差について閉じている(あるいは同じことだが対称差と交叉について閉じている)場合に限って集合環と呼ぶ場合もある。さらに可算交叉について閉じていれば δ-集合環、可算和について閉じていれば σ-集合環という。また、これらが全体集合を含むならば代数あるいは体という。δ-集合体は σ-集合体である。
- A が空集合を含み、(有限)和および補について閉じているとき加法族、特に有限加法族であるという。さらに可算和について閉じているならば完全加法族という。集合族 A が加法族であることは集合体であることと等価であり、同様に完全加法族は σ-集合体の別名である。
- 単調族は包含関係に関する単調列の極限について閉じている集合族
- ディンキン族(d-族、δ-族)は全体集合を含み、包含関係を持つ集合同士の差について閉じていて、可算増大列の極限について閉じている。λ-系は全体集合を含み、補について閉じていて、可算非交和について閉じている。この二つは同じ概念を定める。
- ラミナ族はそれに属する任意の集合 A, B が A ⊂ B または A ⊃ B または A ∩ B ≠ ∅ の何れか一つのみを満たす。
- ブール代数
注釈
- ^ 定数や変数に対する慣例を踏襲して A, B, ... や X, Y, ... が使われるほか、英語の set, ドイツ語の Menge, フランス語の ensemble の頭文字 S, M, E やその周辺の文字がよく使われる。
- ^ ラテンアルファベット以外にもギリシャ文字を使うこともある。集合の集合を考えるときは、元である集合に大文字を使うことから、筆記体 やドイツ文字 で記したりする。このような入れ子構造は何重にも複雑な形で現われたり、同じものが違った見方をされたりするので、このような文字種の変更を行わないこともよくある。
- ^ 「x が X の元であって」というような断り書きをしない場合にも、実際には「普遍集合」 (英: universal set) あるいは「宇宙」 (英: universe) と呼ばれる、必要な議論を展開することができる程度に十分大きな集合を考え、集合と言えば必ずその普遍集合の部分集合だけを考えているといったようなことがしばしば行われる。条件 P(x) の形から x の属するべき集合 X がある程度限定される場合にも、断り書きはしばしば省略される。
- ^ しばしば π-系と乗法族はこれと逆に扱われたり同義語の場合もある。例えば定義 1.3.6.や[1]は乗法族 (multiplicative class) に交叉について閉じていることのみを課している。
出典
集合と同じ種類の言葉
品詞の分類
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