量子力学
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古典力学との関係
相違点
量子力学における、古典力学(相対性理論やニュートン力学)や古典的な電磁気学との大きな違いとして、不確定性原理や相補性原理が挙げられる。観測行為とそれによって記述される物体や系の状態の取り扱いや、それによって要求される確率的な現象の記述は、古典論にはない相違である。事象が確率的にのみ記述されるということは、ニュートン力学などで成り立っていたような「強い意味での因果律」が成り立たないことを意味する。より詳細に言えば、量子力学において成り立つ因果律とは、シュレーディンガー方程式によって記述される波動関数の時間的変化が因果的であることをいう[12]。量子力学では粒子が「波」として記述される一方で、光や電波のような電磁波(波としての性質をもちろん示す)にもまた粒子としての特徴も示されている(光量子仮説)[13]。一般に観測に際しては、粒子性と波動性は同時には現れず、粒子的な振る舞いをみた場合には波動的な性質は失われ、逆に波動的な振る舞いをみる場合には粒子的な性質は失われている。
量子力学の応用例として古典論の未解決問題を明らかにした事例としては、原子の安定性や大きさの一様性、黒体放射におけるプランクの法則の説明[14]や、多原子分子からなる気体の比熱容量の決定[15]などが挙げられる。
古典対応
古典力学は、巨視的な極限をとった際の量子力学の近似理論であり、たとえば以下のような量子力学基礎方程式の近似によって古典論との対応関係がみられている。
- いくつかの有力な模型で、プランク定数を 0 とみなせば古典力学に等価になる
- シュレーディンガー方程式の期待値を取ることで、運動方程式が得られる
- 一方、反対に古典力学における物理量を量子化することで量子力学が得られる
- ボーアの対応原理
- ボーアの対応原理により、古典力学は「プランク定数が充分小さな場合の量子力学の極限」として位置付けられている。
- エーレンフェストの定理
- 詳細は「エーレンフェストの定理」を参照
- ポテンシャルの空間微分(古典的には力に対応するもの)の空間的な変化がゆっくりで、波動関数の広がっている範囲で一定と近似できるならば、シュレーディンガー方程式の期待値を取ることで運動方程式が得られる。すなわち、位置の期待値と運動量の期待値が古典力学における運動方程式であるハミルトン方程式を満たす。
注釈
出典
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