真空 真空に関する歴史

真空

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 15:44 UTC 版)

真空に関する歴史

真空の存在については古代ギリシア時代から、論争が繰り広げられてきた。紀元前5~4世紀、レウキッポスデモクリトス原子論は、自然を構成する分割不可能な最小単位「原子(アトム)」が「空虚(ケノン)」 の中で運動しているとした。一方、アリストテレスは、空間には必ず何らかの物質が充満しているとして、空虚の存在を認めなかった(自然は真空を嫌う)[注釈 2]。これに対して、アリストテレスの学派のストラトンは、空気を圧縮する実験によって、原子の距離を縮め得る余地(すなわち原子が存在しない空間=真空)の存在を主張した。

この議論に決着がついたのは17世紀に入ってからであった。1643年エヴァンジェリスタ・トリチェリは、一方の端が閉じたガラス管に水銀を満たし、このガラス管を立てると、水銀柱は約76cmとなり、それより上の部分が真空になっていることを発見した。[注釈 3]また、オットー・フォン・ゲーリケ1657年、ブロンズ製の半球を2つ合わせて中空の球にして、内部の空気を抜いて真空にするという実験を行った。この2つの半球はぴったりとくっ付き、16頭の馬で引っ張ることでようやく外すことができた。この実験はマクデブルクの半球として知られている。これらは真空の発見であると同時に、気圧の発見でもあった。何も存在しない以上、その空間が何らかの吸引力を発揮するわけがなく、周囲の空間からの圧力を想定しないわけにはいかないからである。

真空が一般化していくのは18世紀に入ってからである。この時期様々な真空ポンプが開発され、蒸気機関や、排水ポンプ、紡績機械などの動力に利用されるようになった。19世紀に入ると白熱電球や、真空管などが開発されることで一般に「真空」という名称が広がっていくことになる。またそれらの開発、製造のためのより高性能の真空ポンプの開発が進むようになった。

20世紀に入ると電球、真空管の進歩や、真空中における技術の発展により、粒子加速器電子顕微鏡など真空を利用した機器の発達、また電子イオンに関係する新たな知識、技術が生まれていった。一方で食品や鉄鋼などの産業に真空が利用されるようになると真空ポンプや真空計真空部品などが産業化され発展していった。日常生活では、空気を完全に抜いた真空パックや真空による氷の昇華を利用したフリーズドライという手法が広く実用化された。

特に1953年にB-Aゲージが開発されると今まで測定できなかった超高真空が測定可能となり、超高真空に対応した真空ポンプや真空部品が発展していくことになる。

現代における代表的真空利用は電子工業用途である。この分野の発展により真空関連産業は急速に発展し、今では多くの産業を支える基盤産業として貢献している。


注釈

  1. ^ 26,900,000,000,000,000,000個。2,690京個。
  2. ^ この考え方に基いて、天体運動は真空の生じない天球回転運動でなくてはならず、楕円運動直線運動ではありえないと論じられた。
  3. ^ 実際には低圧によって蒸発した水銀の気体で満たされている

出典

  1. ^ JIS Z 8126-1:1999「真空技術−用語−第 1 部:一般用語」日本産業標準調査会経済産業省
  2. ^ 広瀬立成・細田昌孝 『真空とはなにか』講談社、1984年、115頁。ISBN 4-06-118155-6 
  3. ^ 広瀬立成・細田昌孝 『真空とはなにか』講談社、1984年、105頁。ISBN 4-06-118155-6 






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