潜水艇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/09 14:22 UTC 版)
民間用としては海底調査など科学研究用と遊覧などの商用の水中船全般のことを指す。軍用では特に小型のものを潜水艇と呼び、大型のものは潜水艦と呼ばれる。
操船に関しては日本を含め多くの国では1級小型船舶操縦士(相当の)資格で法的には可能だが、通信の制限や3次元的な動作など水上船とは異なる技術が求められる。
潜水艇は航続距離が短い為、活動範囲は限られる。多くの無人潜水艇は電線などで母船とつながっている。自律型無人潜水機は6マイル (10km) 以上の運行が可能である。
潜水艦と潜水艇
使用目的による名称・機能の違い
- 潜水艦 : 軍事用の大型水中艦
- 潜水艇 : 軍事用・民間用の小型水中船
軍用の潜水艇では旧日本海軍の「甲標的」「蛟龍」「海龍」、ドイツ海軍の「ビーバー」、北朝鮮の半潜水艇などがあり、工作員が陸地に潜入する際には水中スクーターも使われる。
軍事用潜水艇は特殊潜航艇と呼ぶ場合もある。
第二次世界大戦時には対艦攻撃を主任務としていたが(特殊潜航艇参照)、戦後は特殊部隊の運搬・支援を目的とする事が多い。一部の潜水艇は潜水艦乗員の訓練(韓国)や魚雷発射訓練の標的(スウェーデン)、セイルを追加装備して通常潜水艦として運用(クロアチア)される事もある。北朝鮮、ロシア、ユーゴスラビア、パキスタンなどが多くを保有するが、イタリアには特殊潜航艇時代からの老舗メーカーが存在している。また、60年代に起きた潜水艦沈没事故をうけ、沈没した原子力潜水艦などから乗員を救助する『深海救難艇』も開発され、潜水艦隊を運用している先進国で万一に備え配備されている。
アメリカ海軍はこの種の装備に消極的であったが、昨今は特殊作戦の必要性からSDVおよびASDSと呼ばれる一種の潜水艇を開発・運用している。これらは原子力潜水艦を母艦として発着する事ができる。
アメリカ海軍のNR-1は西側諸国最小[注 1]の原子炉を搭載した珍しい小型『核動力推進潜水艇』で、海軍引き渡し当初は「原潜用原子炉の研究」や「学術的深海探査」等が目的とされていたが、最近になり情報公開や書籍[1]の登場により、実は建造当初より『極秘作戦専用原子力潜航艇』として開発されており、アメリカ海軍及びNATO海軍潜水艦隊のための「海底ロラン」の設置、空母での発着訓練中に海没したF-14と共に深海に沈んだAIM-54 フェニックス空対空ミサイルの回収など「軍事機密保持作戦」や諜報活動に当たっていた事も明らかになっている。
サブマリンとサブマーシブル
潜水艦と潜水艇に類似する概念に、英語ではサブマリン(英語: submarine)とサブマーシブル(英語: submersible)があり、潜水艦をサブマリン、潜水艇を便宜上サブマーシブルの訳語とする場合があるが、サブマリンとサブマーシブルは大きさではなく機能による分類であるため、厳密には誤りである。サブマーシブルは潜水艇のうち大型の水上船等で運搬されクレーンなどで支持される必要があるものを言い、一方サブマリンは独立して航行が可能な潜水艦と潜水艇全てを指す。
犯罪
近年では南アメリカの麻薬密売組織などが、アメリカ沿岸警備隊の目をかいくぐるため、麻薬密輸用潜水艇を使っての麻薬密輸事件が増えている。2019年7月10日に麻薬を積んだ半潜水艇がアメリカ沿岸警備隊に摘発されたほか、2021年3月12日にはスペインの警察当局が麻薬を運搬するためにマラガで建造された青い潜水艇を押収したことを公表した[2]。2023年にはコロンビア海軍がコカイン塩酸塩2643キロを積んだ半潜水艇を拿捕した[3]。
注釈
出典
- ^ リー・ヴィボニー&ドン・デイヴィス、翻訳:三宅真理 (2004). 暗黒水域 知られざる原潜NR-1. 文藝春秋. ISBN 4-16-365620-0
- ^ 麻薬運搬用の潜水艇を発見 スペインのマラガで建造 国際合同捜査で摘発
- ^ “コカイン塩酸塩2600キロ密輸、半潜水艇拿捕 コロンビア海軍”. AFP (2023年3月14日). 2023年5月24日閲覧。
- ^ もぐりん
- ^ アトランティス・サブマリン
- ^ ディープスター・サブマリン
- ^ オデッセイサブマリン
- ^ アストンマーティン、潜水艇事業に進出…米社と提携
- ^ 「潜水艇の2人死亡 コード燃え有毒ガス」『朝日新聞』昭和49年(1974年)6月17日夕刊、3版、11面
- ^ “潜水艇「タイタン」の破片発見 乗組員5人全員死亡か”. 日本経済新聞 (2023年6月23日). 2023年6月22日閲覧。
潜水艇と同じ種類の言葉
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