圧力測定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/31 14:24 UTC 版)
圧力測定のために圧力計や真空計などの様々な技術が開発されている。
圧力計と真空計
圧力計の一種「マノメーター」は、通常は大気圧付近の圧力を測るのに使われる。普通はマノメーターと言えば、中空の管に液体を入れて静水圧を測る器具を差すことが多い。
真空計は真空に近い圧力を測る装置である。一般的な真空を測る装置と超高真空(一般に10−5 Pa以下)を測る装置の大きく2つに分類できる。いくつかの装置を組み合わせることにより、105 Paから10−13 Paまでの真空度を連続的に測定することもできる[1]。
なお、ゲージ (gauge) とは計測器全般を指す語であるが、日本で単に「ゲージ」と言う場合には圧力計を指す場合も多い。
絶対圧とゲージ圧
圧力は本来は完全な真空(絶対真空)を基準とする物理量であるが、実用的には基準となる圧力、すなわち基準圧 (reference pressure)を0として表示する。日常的には大気圧を 0 Pa((基準圧)として扱うことが多い。例えばタイヤ圧などは大気圧を 0 Paとしている。この他にもさまざまな基準を取ることがあり、主として次の3つに分類できる。
- 絶対圧 (absolute pressure)
- 絶対真空を0として表示する圧力である。ゲージ圧pG に大気圧p0 を足すと絶対圧pA になる。すなわち、
単位psiが併記された圧力計。日本では使用することが禁止されている。単位記号は小文字のpsiである。 アメリカとカナダでは、重量ポンド毎平方インチも使われており、日本でも当分の間用いることができる特殊の計量であるヤード・ポンド法による法定計量単位の一つとなっている(計量法に基づく計量単位一覧#ヤードポンド法の単位(14量33単位))。したがって日本では、輸出入に係る取引・証明、輸出される計量器、航空機の運航、ヤードポンド単位表記と法定計量単位表記とが併記されている輸入された商品の計量以外の計量に用いることは禁止されている。
その定義は6894.76Paである[7]。
重量ポンド毎平方インチの計量法における単位記号は、「lbf/in2」である[8]。lb/in2の記号は不正確である。米国では、「psi」(小文字[9])の記号も使われている。
重量ポンド毎平方インチは特に自動車分野でよく使われる。末尾の文字が何を圧力0とするかを表し、psiaは絶対圧、psigはゲージ圧、psidは差圧を意味する。ただしアメリカ国立標準技術研究所のSP811はこれを推奨していない[6]。
正しくは、次のように書く。左辺の量記号の書式は一例である。
- Pa = 1520 psi と書く。 P = 1520 psia とは書かない。
- Pg = 1140 psi と書く。 P = 1140 psig とは書かない。
- Pd = 600 psi と書く。 P = 600 psid とは書かない。
液柱単位 (mmHg, cmH2Oなど)
圧力を液柱で測ることも多いため、圧力をある種の液体の高さで表現することがある。水銀や水が使われることが多く、計量法の政令(計量単位令)で定義されている単位はmmHg、torr (=mmHg)、inHg、水柱ミリメートルmmH2O、inH2Oなどである。水銀は密度が高いために小さな液柱で済む利点があり、水は利用が簡単なので良く使われた。
ただし、液柱で測った圧力は不正確である。流体密度や重力加速度は条件で変化するし、その他の要因も影響するためである (「流体」とは液体と気体を合わせた言葉)。そのため今日では、これらの単位はSI単位にあわせた厳密な定義がなされている。
液柱単位の多くはほとんどの工業・工学分野ではすでに使用が廃止されているが、特定の分野ではまだよく使われている。血圧は世界のほとんどで水銀ミリメートル (mmHg) で表されるし、肺圧は水柱センチメートル (cmH2O) で表すことが多い。天然ガスパイプラインの圧力は未だに水柱圧で表されることも多く、例えば10"WC(水柱10インチ、WCはWater Columnの略)のように表される。真空システムの分野では、torrもまだ一般的である。torrは絶対圧を、inHgはゲージ圧を表すことが多い。
気体の圧力は通常キロパスカル (kPa) かメガパスカル (MPa) で表すが、気象学では日本を始めとする多くの国でヘクトパスカル (hPa) が良く使われる。例えば日本では1992年にミリバールからヘクトパスカルに切り替えられた。アメリカやカナダの工業では、応力の表現に重量キップを使うことも多い (応力の単位も圧力の単位と同じになる)。
非SIのメートル法の単位
かつて標準だったCGS単位系では、圧力の基本単位はバリ (Ba) と呼ばれ、それは1 dyn・cm−2である。また、一時期使われたこともあったMTS単位系では、圧力の基本単位はピエーズ (pieze) であり、それは1ステーヌ/m2である。
その他にも、さまざまな組み合わせ単位が使われる。mmHg/cm2、grams-force/cm2などである。重量を力と見なしたkg/cm2、g/mol2といった単位が使われることもある (現代では力を意味するfを付けてkgf/cm2のように表される)。ただし、重量を力と見なした表記はSIでは認められていない。日本では気体の圧力などでkg(f)/cm2が多く使用されていたが、1998年よりパスカルに切り替えられた。
- ^ T.A.Delchar 1995, p. 114.
- ^ 2010 CODATA standard atmosphere
- ^ 計量単位令 別表第1、項番22、「一平方メートルにつき一ニュートンの圧力」
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.106 表4、 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.118「量の性質に関する追加情報は全て、量の記号に付与されるものであり、単位記号に付与されるものではない。」及び右欄の例、 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- ^ a b NIST SP811-2008 p.16, 7.4 Unacceptability of attaching information to units
- ^ 計量単位令 別表第七(第八条関係) 第11号、第12号
- ^ 計量単位規則 別表第6、圧力の欄、重量ポンド毎平方インチ
- ^ NIST SP811-2008 p.53, pound-force per square inch (psi) (lbf/in2)
- ^ Fluid engineering
- ^ Techniques of high vacuum Archived 2006年5月4日, at the Wayback Machine.
- ^ Beckwith, Thomas G.; Roy D. Marangoni and John H. Lienhard V (1993). “Measurement of Low Pressures”. Mechanical Measurements (Fifth Edition ed.). Reading, MA: Addison-Wesley. pp. 591-595. ISBN 0-201-56947-7
- ^ 『ブルドン管』 - コトバンク
- ^ 『ブルドン』 - コトバンク
- ^ “アーカイブされたコピー”. 2008年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年3月15日閲覧。
- ^ VG Scienta Archived 2008年5月20日, at the Wayback Machine.
- ^ 日本真空工業会スピニングロータ真空計を用いた電離真空計の校正の共同実験 (PDF) 2008年3月14日確認
- ^ Robert M. Besançon, ed. (1990). "Vacuum Techniques". The Encyclopedia of Physics (3rd ed.). Van Nostrand Reinhold, New York. pp. 1278–1284. ISBN 0-442-00522-9。
- ^ 神戸大学電子相関物理学講座 物理実験学Ⅰ 配布プリント3[リンク切れ]
- ^ 音響情報処理の基礎知識
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