南紀 (列車) 概要

南紀 (列車)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/19 04:18 UTC 版)

概要

1978年10月2日に紀勢本線和歌山駅 - 新宮駅間の電化が完成したことにより、従来天王寺駅 - 名古屋駅間を紀勢本線経由で運転していた旧「くろしお」の運転区間を分割することになった。このため、旧「くろしお」の三重県内の運転は廃止され、名古屋駅 - 紀伊勝浦駅間に特急「南紀」を新設したのが始まりである。

列車名の由来

「南紀」の列車名は、 紀伊半島の南部を表す言葉の「南紀」にちなんでいる。なお、JR東海は1996年より新型車両で運転されている列車には「(ワイドビュー)」を冠しており、「(ワイドビュー)南紀」として運転していたが、2022年3月改正ダイヤをもって「(ワイドビュー)」を冠するのを取り止め「南紀」として運転している。

運行概況

2022年3月12日現在の運行概況は次の通り[1]

名古屋駅 - 紀伊勝浦駅間に3往復、名古屋駅 - 新宮駅間に1往復の合計4往復が運転されている。多客時には、臨時列車として2往復が運転されている[2]

列車番号は3001D - 3008Dと運転線区で変更がなく、下りが号数+3000の奇数、上りが号数+3000の偶数である。また臨時列車もこの規則に準じて8001 - 8004Dとされている。

停車駅

名古屋駅 - 桑名駅 - 四日市駅 - 鈴鹿駅 - 津駅 - 松阪駅 - 多気駅 - 三瀬谷駅 - 紀伊長島駅 - 尾鷲駅 - 熊野市駅 - 新宮駅 - 紀伊勝浦駅

  • このほか、沿線のイベントに合わせて臨時停車する駅がある[注釈 2]

使用車両・編成

2023年7月1日以降の編成図
南紀
← 名古屋
紀伊勝浦 →
1 2 (3) (4)
  • 全車禁煙
  • 3・4号車は繁忙期のみ連結
凡例
指=普通車指定席
自=普通車自由席

2023年7月1日より、HC85系気動車(D100編成)で運転されている[3]。運転開始から1992年まではキハ82系気動車が、1992年から2023年まではキハ85系気動車が使用されていた[4]。通常は普通車のみの2両編成で、そのうち1両が自由席である。繁忙期は4両編成で運行する場合があり、この場合、3・4号車は指定席となる。また、繁忙期はD200編成で運用する場合があり、この場合は3号車が車いす対応座席及び車いすスペースとなる。

登場当初は通常4両編成であり、全室グリーン車である「南紀」専用のキロ85形が用いられていた。しかし需要低迷により2001年に編成が見直され、「ひだ」用のキハ85形に置き換えられて通常時はグリーン車が連結されなくなり、普通車のみの3両編成で運転されるようになった。当初は多客時のみ半室グリーン車のキロハ84形が連結されていたが、2009年3月14日から半室グリーン車の連結が通年に変更され、再び通常4両編成で運転されるようになった。2020年11月1日からは、さらなる利用者の減少を受け、通常は2両編成での運行とされるとともに、グリーン車も再度廃止された[5][6]

キハ85系の投入により加減速性能・最高速度(120km/h運転化)・曲線通過性能の向上(最大本則+15km/h)といったメリットを活かしたスピードアップが実施された。

臨時列車

鈴鹿グランプリ

鈴鹿グランプリ」は、鈴鹿サーキットにおいてFIA(国際自動車連盟)主催F1世界選手権日本グランプリが開催される週末に運転される臨時特急列車で、名古屋駅 - 鈴鹿サーキット稲生駅間で運転される。2006年以前には、「鈴鹿F1」という列車名で運行されていた。停車駅は桑名駅と四日市駅で、定期の「南紀」とは異なり鈴鹿駅は通過する。全車指定席となることが多い。

運行本数は年および曜日によって変わる。例として2010年は、土曜日に名古屋発が2本、鈴鹿サーキット稲生発が1本、日曜日に名古屋発が3本、鈴鹿サーキット稲生発が2本運転された。逆に全く運転されない年もある[注釈 3]。当列車はその性格から、特に上り列車の指定券は発売直後に売り切れる場合が多い。そのため、臨時列車としては珍しい立席特急券の発売もおこなわれる。

熊野市花火

熊野市花火」は、毎年8月17日に行われる熊野大花火大会の開催日と翌日の未明に運転されていた臨時急行列車である。使用車両はキハ85系・キハ75形であり、下りは熊野市行が2本、上りは熊野市発が2本運転されていた。運転区間は年度により異なっていたが、2009年は津駅と亀山駅発着が設定された。2011年は名古屋駅発の1本のみが設定され上りは設定されず、2012年以降は上下とも設定されていない。この列車も鈴鹿駅は通過する。

花火大会は天候により延期や中止もあるため、大会当日の朝6時に開催決定が発表された場合に限り、7時から急行券座席指定券グリーン券が発売されていた。また、1号と4号の急行券は発売駅が限定されていた。

なお、2012年以降は「熊野市花火」の設定はなく、花火大会開催日には優等列車では特急「南紀」のみが臨時に名古屋駅 - 熊野市駅間で運行されている。この臨時「南紀」は定期列車とは異なり全席指定席となり、上記の熊野市花火号と同様に当日の朝7時より発売される。

2023年は8月29日に「熊野大花火」という名称の臨時特急列車が名古屋駅 - 熊野市駅間で2往復運行された。うち1往復には通常特急「南紀」には充当されないグリーン車付きのHC85系D2編成が充当された。


注釈

  1. ^ 但し、ハイブリッド車両を使用。
  2. ^ F1日本グランプリ開催時に鈴鹿サーキット稲生駅に停まることがある。また2022年現在『JR時刻表』の巻頭特急ページの当列車の欄には鈴鹿サーキット稲生駅とともに新鹿駅が掲載されている[1]が、2010年頃以降は停車実績がない。
  3. ^ 2007年・2008年は鈴鹿ではなく富士スピードウェイで開催された為。2020年・2021年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う出入国制限により開催そのものが中止された為。
  4. ^ 当時、定期列車4往復、季節列車1往復の他に、運転頻度の高い臨時列車として81・82号があった[15]。季節列車となる3・8号は少なくとも1993年3月18日改正時から[16]2001年12月までは毎日運転されていた[17][18]
  5. ^ この改正時に、新宮駅 - 紀伊勝浦駅間はJR西日本の電車による普通列車となった。この普通列車は2002年3月23日ダイヤ改正で毎日運転の臨時列車に格下げされた後[20]、2010年3月13日ダイヤ改正で廃止された[21]。従ってそれ以降、新宮駅発着列車は新宮駅以南発着の列車と連絡していない。

出典

  1. ^ a b 『JR時刻表』第707号、交通新聞社、2022年3月、102 - 103頁。 
  2. ^ “冬”の臨時列車のお知らせ” (pdf). 東海旅客鉄道 (2022年10月21日). 2022年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月20日閲覧。
  3. ^ “ハイブリッド特急「南紀」出発! キハ85系から全て新型HC85系に “会社またぎ”も本格化”. 乗りものニュース. (2023年7月1日). https://trafficnews.jp/post/126734 2023年7月1日閲覧。 
  4. ^ a b “JR新ダイヤスタート ニューフェース発車”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 1. (1992年3月16日) 
  5. ^ 在来線特急「ワイドビュー南紀」の編成両数の変更について
  6. ^ 車両編成のご案内 キハ85系
  7. ^ 川島令三『全国鉄道事情大研究 名古屋都心部・三重篇』草思社、1996年。ISBN 4-7942-0700-X
  8. ^ 種村直樹『鉄道旅行術』日本交通公社出版事業局、1987年。ISBN 4-533-00846-1
  9. ^ 曽根悟(監修) 著、朝日新聞出版分冊百科編集部 編『週刊歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄』 26号 長良川鉄道・明知鉄道・樽見鉄道・三岐鉄道・伊勢鉄道、朝日新聞出版〈週刊朝日百科〉、2011年9月18日、27-28頁。 
  10. ^ “鈴鹿駅で発車式 伊勢鉄道 特急「南紀」停車記念”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 2. (1989年1月25日) 
  11. ^ 『JR編集時刻表』第199号、弘済出版社、1988年3月、86頁。 
  12. ^ 『JR編集時刻表』第311号、弘済出版社、1988年3月、84頁。 
  13. ^ 『JR編集時刻表』第311号、弘済出版社、1988年3月、183頁。 
  14. ^ “92・3ダイヤ 話題を追って(8) JR東海 ワイドビュー南紀”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 1. (1992年3月11日) 
  15. ^ 『JR時刻表』第347号、弘済出版社、1992年3月、201 - 208頁。 
  16. ^ 『JR時刻表』第359号、弘済出版社、1992年3月、209 - 216頁。 
  17. ^ 『JR時刻表』第455号、弘済出版社、2001年3月、219・226。  - 6月30日まで毎日運転。
  18. ^ 『JR時刻表』第464号、弘済出版社、2001年12月、223・230。  - 2002年1月以降、毎日運転ではなくなる。
  19. ^ a b 『JR時刻表』第368号、弘済出版社、1993年12月、124・125。 
  20. ^ 『JR時刻表』(弘済出版社→交通新聞社)2001年12月号、314頁および319頁では当該普通列車は定期列車扱い、2002年6月号、316頁および321頁では毎日運転の臨時列車扱い。
  21. ^ 『JR時刻表』(交通新聞社)2009年11月号、314頁および321頁では当該普通列車は毎日運転の臨時列車扱い、2010年3月号、314頁および321頁では記載なし。
  22. ^ 『JR時刻表』第455号、弘済出版社、2001年3月、218 - 226頁。 
  23. ^ 『JR時刻表』第486号、交通新聞社、2003年10月、222 - 230頁。 
  24. ^ 受動喫煙防止の取り組みについて -JRおでかけネット 西日本旅客鉄道
  25. ^ 列車運休・復旧情報 - 台風12号の災害で長期間の運休が見込まれる区間も(2012年7月10日時点のアーカイブ) - マイコミジャーナル 2011年9月8日
  26. ^ 紀勢本線の運行計画(9月8日以降)について (PDF) (2011年9月30日時点のアーカイブ) - 東海旅客鉄道 2011年9月7日
  27. ^ 待ちわびた特急1号 JR紀勢線3カ月ぶり復旧 和歌山(2012年7月21日時点のアーカイブ) - 朝日新聞 2011年12月3日
  28. ^ 平成25年3月ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)東海旅客鉄道、2012年12月21日http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000017068.pdf2015年4月24日閲覧 
  29. ^ 特急「ひだ」における無料 Wi-Fi サービスの提供開始等について” (PDF). 東海旅客鉄道株式会社 (2018年6月13日). 2019年2月22日閲覧。
  30. ^ 特急「ひだ」全車両における無料 Wi-Fi サービスの開始について” (PDF). 東海旅客鉄道株式会社 (2018年11月5日). 2019年2月22日閲覧。
  31. ^ 在来線特急「ワイドビュー南紀」の編成両数の変更について” (PDF). 東海旅客鉄道株式会社 (2020年9月16日). 2020年9月17日閲覧。
  32. ^ 2022年春ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)東海旅客鉄道株式会社、2021年12月17日https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000041637.pdf2021年12月17日閲覧 
  33. ^ 特急「南紀」の最新車両「HC85系」出発進行”. 中日新聞 (2023年7月1日). 2023年12月15日閲覧。
  34. ^ 松岡樹「特急「南紀」、名古屋―紀伊勝浦間に新型車両…「乗り鉄」記者が3時間57分を堪能」『読売新聞オンライン』、2023年7月2日。
  35. ^ 2024年3月16日にダイヤ改正を実施します”. 西日本旅客鉄道 近畿統括本部. p. 16 (2023年12月15日). 2023年12月15日閲覧。





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