中国人民解放軍ロケット軍 中国人民解放軍ロケット軍の概要

中国人民解放軍ロケット軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 20:12 UTC 版)

中国人民解放軍ロケット軍
中国人民解放军火箭军
People's Liberation Army Rocket Force
中国人民解放軍ロケット軍の徽章
中国人民解放軍ロケットの旗
創設 1966年7月1日(第二砲兵部隊創設)
再組織 2015年12月31日(ロケット軍創設)
本部 北京市海淀区清河街道
指揮官
司令員 王厚斌英語版上将
政治委員 徐西盛英語版上将
総人員
現総人員 12万人以上[1]
テンプレートを表示
中華人民共和国の軍事
中国人民解放軍軍徽
最高軍事指導機関
中央軍事委員会中国語版国家
国務院機関
国防部 国防科工局
国家国防動員委員会 国家辺海防委員会
中華人民共和国の武装力
中国人民解放軍
中国人民武装警察部隊
中国民兵
戦区
東部戦区 南部戦区 西部戦区
北部戦区 中部戦区
軍種
陸軍 海軍 空軍
ロケット軍
中央軍事委員会直轄部隊
航空宇宙部隊
サイバー空間部隊
情報支援部隊
統合兵站支援部隊
中央軍事委員会直属院校
国防大学 軍事科学院 国防科技大学
ドメイン別戦力
陸軍 海軍陸戦隊 空軍空挺隊

海軍 陸軍艦艇部隊

空軍 海軍航空隊 陸軍航空隊

ロケット軍
海軍潜水艦基地 空軍爆撃機師団

航空宇宙部隊

サイバー空間部隊
駐特別行政区部隊
駐香港部隊 駐マカオ部隊
階級制度
人民解放軍 武装警察
軍事思想と歴史
人民戦争理論 人海戦術
解放軍の歴史
ゲリラ 運動戦 超限戦
関連法規
国防法 兵役法
国防動員法 国防教育法 人民防空法
国防交通法 国家インテリジェンス法
サイバーセキュリティ―法
データセキュリティー法 暗号法
国家安全法 香港国家安全維持法
反テロリズム法 スパイ防止法
現役士官法 予備役士官法
人民武装警察法 海警法
民兵工作条例
士官階級条例 軍政治工作条例

現役総兵員数は12万人以上と推定されている[1]。予備役は、陸軍予備役、海軍予備役、空軍予備役、ロケット軍予備役で構成され、全体で約51万人と推定されているが、それぞれの兵員数の構成比は不明である[4][1]

歴史

2015年末まで第二砲兵部隊として知られていた。第二砲兵部隊は1966年に正式に創設され、中華人民共和国の少数の地上配備型戦域核弾頭搭載弾道ミサイルの指揮を任された。これらの第一世代ミサイルは、射程と能力の限られる洗練されていないものとして西側に評価されていた。しかしながら部隊は1960年代から1970年代にかけてますます長距離化されたシステムの開発を始め、1980年代初頭にDF-5を導入し、米国を攻撃できる最初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を誕生させ、規模と能力の両方において着実かつ漸進的に成長してきた。1980年代は第二砲兵部隊にとって2つの点で独創的な10年であった。第一に人民解放軍初の路上移動型弾道ミサイルシステムであるDF-21準中距離弾道ミサイル(MRBM)を開発したこと。第二に核弾頭搭載弾道ミサイルだけでなく通常弾頭搭載弾道ミサイルも配備するという上層の決定により、これが1990年代初頭の短距離弾道ミサイル(SRBM)、DF-11及びDF-15の導入につながったことである。発射プラットフォームの着実な多様化と能力の向上とともに、第二砲兵部隊の規模も成長してきた。この拡大は2000年代に加速した。2000年から2010年にかけて第二砲兵部隊は、初の地上発射巡航ミサイルであるCJ-10英語版や初の路上移動型ICBMのDF-31を含む、ミサイルを装備した11個もの新しい旅団を立ち上げ、部隊を増強させた。2010年から2016年末にかけて、第二砲兵部隊は13個の新しい旅団と、DF-21D対艦弾道ミサイル、より長距離でより高性能なDF-41路上移動型ICBM、核または通常弾頭の両用型のDF-26英語版中距離弾道ミサイル(IRBM)、DF-17英語版極超音速滑空体(HGV)などのより重要な兵器システムを追加したため、成長のペースはさらに加速した。ロケット軍に改名後の2017年から2019年後半にかけて、人民解放軍ロケット軍は少なくとも10個の新しいミサイル旅団を追加した。29個旅団から39個旅団への前例のない拡大は、わずか3年間で規模が33%以上増加したことを意味する。これに続いて、2021年にはロケット軍のサイロ発射型ICBM部隊の大規模な拡大が明らかになった。このようにして、ロケット軍は、短距離で脆弱な弾道ミサイルを備えた小規模で洗練されていない部隊から、核兵器と通常兵器の両方の幅広い発射プラットフォームを備えた、より大規模で近代的な部隊へと進化した[5]

年表

  • 1957年:砲兵司令部内にソ連が提供した地対地ミサイルを装備する第802砲兵大隊創設
  • 1961年:砲兵司令部内に4個ミサイル大隊創設
  • 1965年6月1日:ミサイル部隊を管轄する総部創設
  • 1966年6月6日:中央軍事委員会、独立兵科としての第二砲兵創設を決定
  • 1966年7月1日:周恩来国務院総理により第二砲兵と命名。創設日
  • 1966年9月:東風2号配備開始
  • 1971年:東風3号配備開始
  • 1978年:第1次科学技術会議招集。科学技術委員会を設置し、8ヵ年計画を発布
  • 1980年10月:「二砲作戦大綱」発布
  • 1983年:発射基地の地下化プロジェクト「長城工程」開始
  • 1984年:「二砲作戦条例」、「二砲各級指揮部工作細則」、「導弾支隊(旅)和発射大隊(営)的作戦条例」などが制定され、発射基地(軍団クラス)-旅(旅団クラス)の建制確立
  • 1985年:第2次科学技術会議招集。「二砲戦法」発布
  • 1988年:中央軍事委員会、「有限核報復」戦略を発布
  • 1991年:第3次科学技術会議招集
  • 1996年:第4次科学技術会議招集。15ヵ年科学発展大綱を批准
  • 1998年:「第二砲兵常規導弾在突撃戦役中的使用」を発布し、通常弾頭ミサイルの先制使用を肯定
  • 2011年:実際の戦役で中国側が追いつめられた状況下において、核兵器を先制使用して戦況を打開する戦略を肯定
  • 2015年12月31日:名称を「ロケット軍(火箭軍)」に変更し、独立兵科から軍種に昇格[6]
  • 2023年12月29日:全国人民代表大会常務委員会は、ロケット軍の前司令官である李玉超、元司令官である周亜寧を含む軍高官9人の全人代代表職解任を発表。軍装備品調達に絡む汚職疑惑との関連が指摘された[7]

注釈

  1. ^ 米国防省によれば、精密誘導兵器とは「局所目標を破壊し、付随被害を最小限にすることを目的とした誘導兵器」と定義されている。また、精密誘導兵器について専門的な研究を続けてきたバリー・ワッツ(Barry Watts)は、「発射や投下された後に、目標や地点に照準を合わせ、当初の目標の誤りやその後に生じた誤差を自律的に修正できる発射体、爆弾、ミサイル、魚雷などの兵器」と定義している[2]

出典

  1. ^ a b c d The International Institute of Strategic Studies (IISS) 2023, p. 237.
  2. ^ 塚本 2014.
  3. ^ 日本国防衛省防衛研究所 2016, p. 32.
  4. ^ 米国国防総省 2023, p. 77.
  5. ^ Ma Xiu 2022b, p. 1.
  6. ^ 陆军领导机构火箭军战略支援部队成立大会在京举行 习近平向中国人民解放军陆军火箭军战略支援部队授予军旗并致训词、新华社、2016年1月1日閲覧
  7. ^ ロケット軍前トップら9人解任 汚職疑惑、広範囲で関与か―中国”. 時事通信 (2023年12月30日). 2024年1月11日閲覧。
  8. ^ a b Ma Xiu 2022b, p. 2.
  9. ^ Ma Xiu 2022b, p. 8.
  10. ^ Ma Xiu 2022b, p. 9.
  11. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 12–13.
  12. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 13–25.
  13. ^ Ma Xiu 2022b, p. 26.
  14. ^ Ma Xiu 2022b, p. 27.
  15. ^ Ma Xiu 2022b, p. 28.
  16. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 29–37.
  17. ^ Ma Xiu 2022b, p. 38.
  18. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 39–56.
  19. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 3, 5.
  20. ^ a b c d e f g h Ma Xiu 2022b, p. 4.
  21. ^ Ma Xiu 2022b, p. 5.
  22. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 57–82.
  23. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 83–101.
  24. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 102–119.
  25. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 120–139.
  26. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 140–157.
  27. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 158–175.
  28. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 176–193.
  29. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 194–214.
  30. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 215–232.
  31. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 233–237.
  32. ^ Ma Xiu 2022b, pp. 6–7.
  33. ^ a b 米国国防総省 2023.
  34. ^ HANS KRISTENSEN & MATT KORDA & ELIANA JOHNS & KATE KOHN 2023.
  35. ^ 多維新聞網 (2017年8月28日). “中國第一海外基地:火箭軍絕密金輪工程揭秘”. 2019年7月13日閲覧。
  36. ^ 每日頭條 (2017年2月11日). “因為一項非常神秘的「金輪工程」,解放軍其實早就長駐海外”. 2019年7月13日閲覧。
  37. ^ “金轮法王”镇中东:跨越时代的“金轮工程””. 网易 (2016年4月23日). 2016年5月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月13日閲覧。
  38. ^ Ma Xiu 2022b, p. 42.
  39. ^ The International Institute of Strategic Studies (IISS) 2023, p. 353.
  40. ^ 魏凤和同志简历”. 中国政府网 (2018年3月19日). 2020年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月7日閲覧。
  41. ^ a b c d 火箭军:魏凤和任司令员,王家胜任政治委员,胸牌曝光”. 澎湃 date=2016-1-1. 2022年8月6日閲覧。
  42. ^ 官方披露:周亚宁任火箭军司令员”. iNEWS (2017年9月16日). 2022年8月6日閲覧。
  43. ^ a b 中央军委举行晋升上将军衔警衔仪式 习近平颁发命令状并向晋衔的军官警官表示祝贺”. news.cn (2022年1月21日). 2022年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月21日閲覧。
  44. ^ Chan, Minnie (2023年7月31日). “China names General Wang Houbin as new PLA Rocket Force chief after former commanders snared in corruption scandal”. South China Morning Post. 2023年7月31日閲覧。
  45. ^ 中央军委举行晋升上将军衔仪式 习近平颁发命令状并向晋衔的军官表示祝贺”. 新华网. 2023年8月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月31日閲覧。
  46. ^ 中央军委举行晋升上将军衔仪式 习近平颁发命令状并向晋衔的军官表示祝贺”. 新华网. 2021年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月15日閲覧。
  47. ^ 中央军委举行晋升上将军衔仪式 习近平颁发命令状并向晋衔的军官表示祝贺”. 新华网. 2023年8月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月31日閲覧。


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