マダコ 生活史

マダコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/13 21:50 UTC 版)

生活史

繁殖期はから初夏で、交尾したメスは岩陰に潜み、長径2.5 mmほどの楕円形の卵を数万-十数万個も産む。マダコの卵は房状にかたまり、フジの花のように見えることから海藤花かいとうげとも呼ばれる。メスは孵化するまで餌を摂らずに卵の下に留まり、漏斗で海水を吹きつけたり、卵を狙う魚などを追い払ったりして卵の世話をする。しかし、人間や他の動物が一定以上邪魔をすると、育児放棄する。卵は1か月ほどで孵化するが、メスは孵化を見届けた直後に死ぬ。

孵化直後の子ダコは体は、ほぼ透明で、胴体部分が体の大部分を占めるが、体には色素胞があり、腕に吸盤もある。子ダコは海流に乗って分布を広げるが、この間に多くが他の生物に捕食される。

海底に定着した後は、2-3年ほどで急成長し、繁殖して寿命を終える。

白いものを餌と認識するようで、ラッキョウを餌にした釣りにもかかる。ミカンの栽培が盛んな地域では、海に落ちたミカンを食べている様子が確認されたこともある。

利用

日本では重要な水産資源で、タコ類の中では最も産額が多い。瀬戸内海兵庫県明石市沖でとれる「明石ダコ[5]が珍重される。カニ疑似餌を使った釣りも行われるが、物陰に潜む習性を利用した「蛸壺たこつぼ漁法」が主流である。大阪湾沿岸の弥生時代の遺跡からも、蛸壺用と思われる土器が大量に発掘されており、古くから食用にされていたことがうかがえる。

塩で揉み洗いしてから茹でて、酢蛸、煮物、寿司種、燻製干物たこ焼き明石焼きの具などにする。茹でずに生で刺身にしたり、薄切りにしてしゃぶしゃぶにしたりすることもある。

日本のタコ需要は、沿岸漁業だけでは賄いきれないため、近縁種がアフリカ大陸北西の大西洋岸諸国からも輸入されている。モロッコからの輸入は、一時日本での消費量の4割を占めていたが、乱獲によって漁獲量が減少し、2003年から1年あたり8か月程度の禁漁規制が続けられている。モーリタニアも有力な輸出元である。

一方、タコは英語で「デビル・フィッシュ(Devil fish=悪魔の魚)」と呼ばれており、欧米で食用にするのは長らく南ヨーロッパの一部地域に限られていた。イタリアギリシャ地中海沿岸や、スペイン北西部のガリシア州ポルボ・ア・フェイラというタコ料理が有名)などである。こうした南欧のタコ食文化が、観光客や移民を通じてヨーロッパの他地域やアメリカ合衆国にも広がり、国際市場では日本の商社との購買競争が激しくなって、価格高騰が起きている[6]

2017年6月8日、日本水産はマダコの完全養殖技術を構築したと発表した[7][8]


  1. ^ a b c vol8.タコ - 南三陸味わい開発室”. 海の自然史研究所. 2019年10月18日閲覧。
  2. ^ Gleadall, Ian G. (2016). “Octopus sinensis d'Orbigny, 1841 (Cephalopoda: Octopodidae): Valid Species Name for the Commercially Valuable East Asian Common Octopus”. Species Diversity 21 (1): 31-42. doi:10.12782/sd.21.1.031. 
  3. ^ a b マダコ”. ナショナルジオグラフィック. 2010年2月14日閲覧。
  4. ^ Budelmann BU (1998). “Autophagy in octopus”. South African Journal of Marine Science 20 (1): 101-108. doi:10.2989/025776198784126502. 
  5. ^ 日本一の明石ダコ明石市ホームページ(2018年5月19日閲覧)
  6. ^ 【価格は語る】「優等生」のタコ、値上がり/アフリカ産、欧米で消費拡大日経産業新聞』2018年4月27日(サービスプライス面)。
  7. ^ マダコの完全養殖の技術構築に成功”. 日本水産プレスリリース. 2017年6月9日閲覧。
  8. ^ 2017年6月9日 大分合同新聞朝刊5ページ


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