ボーイング747-8
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生産タイプ
747-8IC(インターコンチネンタル:旅客機タイプ)
最新型のボーイング747-400も初就航から20年が経とうとしていることから「ポスト747」として開発された。アッパーデッキは747-400よりさらに延長し、3クラスで467席仕様となる予定。客席数増加にも関わらず747-400ER比で航続距離は延長され、燃費も改善し、騒音の影響も30%程度軽減される。「インターコンチネンタル」はかつてボーイング707-320の愛称としても使用されていた[20]。
先にエアバス社がこの超大型機部門では総2階建てで標準座席仕様が525席のA380を製造しているが、これに直接対抗するのが目的でなく、あくまでボーイング社はA380とB777-300ERやエアバスA340-500、600クラスの中間を埋める450人級の機材として考えている。
今までの747に比べて新たに胴体後方に「スカイロフト」が設定できるようになった。ここは旅客席の増席や個室、ラウンジ、ビジネスセンターなどで利用可能としている。
2005年11月15日に開発を正式に決定し暫く貨物型のみの受注であったが、2006年12月6日にルフトハンザドイツ航空から20機の発注(+オプション20機)を受け、航空会社から旅客型初の受注となった。2007年、最終コンフィギュレーションが決定。2006年12月の受注以降は新規受注は皆無だったが2009年12月、大韓航空より5機の受注を獲得する[21]・[22]。大韓航空は、747-8の旅客・貨物両タイプを発注した初めての航空会社となった。2006年のルフトハンザドイツ航空以来の航空会社として2社目の受注となった。2011年3月7日には、中国国際航空より5機の発注を受けた[23]。実機がロールアウトした後では、初めての受注となった。と同時に、前にエアバスA380を発注していない航空会社からの初の受注となった。
2011年6月の時点で、航空会社からの発注は以上の3社である。航空会社3社など(他には個人用、要人輸送用としての発注もあるが、詳細は公表されていない)により、計33機の受注を獲得している[24]。
747-400を運航している航空会社は多いにもかかわらず、かつてほど受注に勢いがない理由としては、搭載エンジンが上述のGEnxに限られているため、元来ロールス・ロイス製のエンジンを中心に採用してきたブリティッシュ・エアウェイズ(貨物タイプはアトラス航空の委託という形で運航していた)やカンタス航空、キャセイパシフィック航空(貨物タイプは運航中)、シンガポール航空などイギリス連邦系の航空会社が発注を見送っていることが挙げられる。加えて時代背景として、超大型機は747-400一択であった頃に比べてさらに大型であるA380、やや小型だが双発の777-300と選択肢が増えていること、そしてB777やB787などの双発機が大型化・高性能化したことで航続距離の面からは747クラスの超大型機を必要としなくなったことが要因として挙げられる。
事実、シンガポール航空はA380の最初のオペレーターとなり、カンタス航空もA380を導入した。またブリティッシュ・エアウェイズはボーイング747-400を2014年11月現在57機運用しており、同型機の最大オペレーターであるが、その-400型機の後継ともいえる-8IC型機ではなくA380を発注した。これには先述の搭載エンジンの問題が絡んでいると言われる[25]。他方で、かつては世界最多のボーイング747を保有していた日本航空は2011年3月、全日本空輸は2014年3月を以てボーイング747-400/-400Dを全機退役させたが、後継機としての位置付けは表明していない。同時に両社ともエアバスA350XWB(-900、-1000[26])、ボーイング777(-200、-200ER、-300、-300ER、-9X[27])やボーイング787(-8、-9、-10[28])を大量導入する等で4発機よりも双発機へ関心を向けていたが、後に全日本空輸は2019年5月24日から成田-ホノルル線にてA380を就航させた。
先述のようにボーイング社はA380と777-300ERの中間機材と述べ、A380を発注している航空会社からも関心は得られると考えている。実際にローンチカスタマーとなったルフトハンザドイツ航空、さらに大韓航空は共にA380も発注しており、この点からボーイング社の考えは全く的を外していないことと取れる。同社はもちろん、747-400の後継機としての位置付けとして最適な機体とも考えており、先にA380を発注していない中国国際航空からも早速、受注を得ている。
また2008年7月4日、全日本空輸は社内で新機種選定委員会を立ち上げた。主に同社の将来の「新大型機」の選定だがエアバスA380と共に導入検討候補の対象とされている。しかし2008年12月、同社は世界経済と経営状況の悪化を受け大型機の導入計画を一時凍結すると発表した。2011年11月現在、ここから話は進展しておらず2008年9月末までに公然にする予定であった新大型機導入の話は一旦、水面下に沈むことになった[29]。同社は「委員会は継続しており、新大型機選定についてはその時期が来れば再考する」としているが、同社が2010年3月期に過去最大の赤字を計上し政府からの融資を受けたこともあり、「凍結発表」から4年が過ぎた2013年12月現在その兆しは見られなかった。しばらく話の進展が無かったが2014年3月27日、同社は5機種の機材発注を同時決定した。その発注した5機種のうち、大型機として既存のB777-300ERに加え、B777-9Xが新たに加わることとなった[30]。
2010年10月15日、胴体部分の結合が完了した[31]。
2011年2月13日、正式にロールアウトした[32][33]。このロールアウトにより、23年ぶりに旅客型747がリニューアルされることとなった。なお、この初号機には、これまでのボーイングブルーとは大きく異なり、赤橙色を主体とした『Sunrise』の塗装が施された。この『Sunrise』の塗装は初号機にのみ施される予定である。
同年3月18日に地上走行テストを無事に終了し[34][35]、同年3月20日には初飛行に成功した[36][37]。 引渡しは2011年第4四半期となる予定としており、ビジネスジェット運航会社(会社名非公表)に初めて引き渡されることとなっている。ここで、初めて引き渡される機体は上記の『Sunrise』の塗装を施した初号機となる。
2011年のパリ・エアショー(6月20 - 26日)初日に新たに下記の航空会社を含めた2社から計17機の受注を獲得した[38]。実機を展示したイベントで、初の受注となった。その後、ナイジェリアのアリクエアから10月6日に確定2機の受注を[39]、またロシアのトランスアエロ航空からも4機の受注を[40]得ていたが、前者はB787-9へ発注を変更したことによりキャンセルされ、後者は2015年10月の経営破綻に伴って導入されることがなかった。
2012年2月28日、最初の納入先となるビジネスジェット運航会社(会社名非公表)に初めて引き渡された[41]。
2012年4月25日、ルフトハンザドイツ航空に定期運航会社向けとして初めてとなる機体が引き渡された(機体記号:D-ABYA,同航空会社向け初号機)。同年5月1日には、同航空会社のハブ空港であるフランクフルトに向けて出発し、5月2日にフランクフルトに到着した[42][43]。歴史的な初就航路線はフランクフルト・ワシントンで、2012年6月1日に初就航した[44]。同年夏には、ロサンゼルス・シカゴ・バンガロール・デリーにも順次就航した。
2014年6月28日、ルフトハンザドイツ航空向けの機体(登録記号:D-ABYP)が引き渡されたことで、(初期型のボーイング747-100から数えて)ボーイング747が量産1500機を達成した[45]。これにより、民間の大型4発機の量産数としてさらに記録更新となった。
ワンワールドの加盟会社で唯一導入していない機種である。
発注航空会社(旅客機タイプ)[46]
など
- VIP ORDERS(要人輸送用)
747-8F(フレイター:貨物機型)
貨物機としてのボーイング747型は世界の航空貨物のおよそ半分を輸送しているほどポピュラーな存在である。この独占状態を維持するため、ボーイングでは「747-8」の派生タイプとして「747-8Freighter」もしくは「747-8F」と呼ぶ貨物機型を開発した。貨物機型は旅客機型より先に就航し、日本国内に籍を置く航空会社では、貨物航空業大手の日本貨物航空が確定発注し、2013年頃から新造機を受領し、世界各国への定期国際路線で運航を開始している。外観上は「747-400F」同様、アッパーデッキが旅客機タイプより短い。最大離陸重量(MTOW)は440トンで、最大ペイロードは140トン。
「747-8F」は現行の「747-400ERF」に比べてペイロードは増加したが航続距離は僅かに減少した。これはボーイングが「-400ERF」を発表した際、ベースモデルの「747-400F」に比べてMTOWが16トンほど増加したが最大ペイロードは据え置かれた。つまり、MTOWの増加は搭載燃料に振り向けられ、航続距離は伸びたが貨物の搭載重量は変わらなかった。しかし、カーゴルックス航空のような機械類や分解できない大型貨物の輸送を頻繁に行うユーザーにとっては大きなペイロードと着陸能力を持つ機材を必要とし、貨物を可能な限り搭載したい。このため「747-8F」では60,000ポンド(およそ27トン)のMTOW増加をそのまま無燃料重量(すなわちペイロード)の増加に振り向けられている。なお「747-8F」の最大ペイロード状態における搭載可能な燃料量は全タンク容量の半分程度である。
したがって貨物重量を「-400ERF」と同等(112トン)程度とした場合には、その重量差分の燃料を搭載できるので航続距離は「-400ERF」より大きいものとなる。運航規制の重要な指標となる二酸化炭素排出量については747クラシック貨物型を100とした場合、60以下であり、同社の双発貨物機777F型機の70を下回っていることで「双発機よりも低騒音でエコロジーかつエコノミー」な貨物機である。
2008年8月18日、ボーイングより日本の国土交通省へ747-8Fに対する型式証明の申請があり、2012年6月27日、国土交通省航空局において所要の審査が終了し、国土交通省航空局安全部長より、ボーイング・ジャパン社長マイケル・デントン(Michael Denton)に対して、型式証明書の交付を行った[51]。
貨物機としての利点
超大型機としてライバルであるエアバス社のA380のほうが受注状況から判断して優れているように見えるが、これは旅客型に対してのみのことである。貨物型ではA380-800Fが一旦受けた受注を全てキャンセルされて開発は計画で終わり、747-8の方がリードしている。この第一の理由はA380計画全体の遅れによる-800Fの開発遅延である。B747-8Fの実際の運用における利点としては、貨物を搭載する際、機体の形状がA380より有利であることが言及されている[52]。貨物航空会社だけでなく、A380旅客型を発注している航空会社からも支持を得ている(例:エミレーツ航空、大韓航空)。このことから747の活躍の場はかつてに比べると狭まりつつあるが、決して不要というわけではない。むしろ民間大型貨物機部門ではこれに対抗する他社の新型機は存在しないため、ボーイング社の独擅場となる可能性が高い。
この様に旅客型は苦戦をしているが、貨物型はローンチからそれなりの受注数を得ており好調である。ボーイング747はもともとロッキード社(当時)と大型軍用貨物機の競合入札でロッキード案が採用(C-5となる)されて敗退した結果、開発資源を民間機へ転用した型式であり、また超音速旅客機の実用化後は貨物機に転用する計画であった。当初の思惑と異なるが、半世紀近くの長い月日を経てようやく本来の役割を得られたとも取れる。
2008年3月6日、ボーイング社は設計が50%完了したと発表した[53]。2009年11月18日に機体への塗装が完了し初号機が完成した[54]。2010年2月6日、地上走行テストを無事に終了し、同年2月8日には初飛行に成功した[55]。2011年3月の時点で、航空会社9社より計80機の受注を獲得している。
初号機の受領開始後
2011年9月19日に、ローンチカスタマー・カーゴルックス航空向けの初号機が納入される予定となっていた。当日はシアトル近郊のボーイングのエバレット工場で、納入式典が行われ同機を受領する予定だった。ところがボーイング社とカーゴルックス航空の間での契約において諸問題が発生した(製造された初期の機体の性能に問題があった)。このことで納入式典は中止となり、カーゴルックス航空関係者は会場から引き上げ、初号機の受領を拒否した。さらに同月21日には、2号機が引き渡される予定であったが、同機も受領を拒否した。この受領拒否に対する策としてカーゴルックス航空は、他の機体を使う準備をすすめている。
加えて2006年9月に12機を発注していたアトラス航空も最初の3機の納入を拒否した[56]。一方で残る9機について、予定としてアトラス航空は3機を2011年[57]に、4機を2012年[58]、2機を2013年に受領するように変更された。その後、前記のカーゴルックス航空向けの最初の2機に関する契約紛争は解決された。10月6,7日に取締役会が開催され、12機を発注しているGEnx-2Bを搭載する機体の最初の2機の受領が確認された。9月16日にデリバリー直前でカーゴルックス航空が最初の2機を拒否してからおよそ1か月が経ったが、カーゴルックス航空は取締役会の承認を経て、10月12日にローンチカスタマーとして世界で初めて同型機を受領することとなった[59]。
2011年11月1日、キャセイパシフィック航空はアジア初の747-8F(B-LJE)を受領。その翌日にはアトラス航空にもブリティッシュ・エアウェイズ塗装の747-8F(G-GSSD)を受領した[60]。 日本の航空会社では航空貨物業大手の日本貨物航空(NCA)が747-8Fをこれまで主力機材として運航していた747-400Fの後継機材としてボーイング社に14機(8機は確定発注で、6機はオプション)確定発注したが、2015年に4機をキャンセル[61]、2017年にはさらに2機をキャンセルした[62]。NCAでは新造747-8Fを順次受領し、以前の主力機747‐400Fと世代交代を進めつつ自社運航の各路線に投入している[63]。
発注航空会社(貨物機タイプ)[64]
- コリアンエアカーゴ
- 日本貨物航空[65]
- キャセイパシフィック航空(ローンチカスタマー)
- カーゴルックス航空(ローンチカスタマー)
- エアブリッジ・カーゴ
- アトラス航空(ブリティッシュ・エアウェイズからの委託運航)
- カタール航空
- シルクウェイウエスト航空
- UPS航空
- GEキャピタル・アビエーション・サービス(GECAS)
- ドバイ・エアロスペース・エンタープライズ(DAE)
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- ^ ブリティッシュ・エアウェイズの航空機は、ボーイング747-400型機にはRB211-524Hエンジン、ボーイング777-200ERにはTrent 895というように、ほとんどがロールス・ロイス製である
- ^ いずれも日本航空のみ
- ^ -9Xは全日本空輸のみ。なお、日本航空保有分の-200/-300は全機退役済み。
- ^ -10は全日本空輸のみ
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- ^ ボーイング、747-8型フレイターの設計が50%完了
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- ^ より性能の良い747-8Fを2011年10月に1機受領し、同年11月に2機を受領する予定
- ^ このうち2011年から2012年にかけてデリバリーされる最初の5機は、ブリティッシュ・エアウェイズへACMI契約として利用される予定となっている
- ^ カーゴルクス、ようやくB747-8Fを受領へ
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- ^ 当初は2011年度内に導入する予定であったが日本貨物航空側の都合により、2012年7月に初号機を受領した。なお、導入にあたっては新塗装となり「Nippon Cargo」のロゴが大きくなるほか、塗装パターンも変更される。(参考:イカロス出版『月刊エアライン』通巻394号 p18)
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