パイプレンチ 歯の設定角度「静的状態設計値」

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パイプレンチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/17 20:51 UTC 版)

歯の設定角度「静的状態設計値」

レンチの上アゴ歯と植え歯は、通常レンチ本体を水平に持った時、約8°をなすとJIS規格[20]に表示されているが、実際には3°から5°となっている商品が多い。レンチは、パイプを上アゴ歯と植え歯の口先で丸ナットを回して幅をパイプ外径よりも少し小さめに調節した状態でパイプをレンチに押し込むと、フレームと共に上アゴが揺動することにより上アゴ歯が開き2つの歯のなす角度が大きくなり、パイプを上アゴ部の歯と植え歯の奥側において挟み込むことができる様になっている。「リッジ型」でも同じことであるが、このタイプの場合はレンチ本体を水平にした状態でも上アゴは下側方向に可動するような特殊形状の板バネがレンチ本体に内蔵されているため、口幅の調節を歯のどの部分で行っても噛み込み易く、口幅の調節が行いやすい様に設計されている。

噛み込みメカニズム「動的角度の設計値」

設計的には、上アゴ歯と植え歯のなす角度は揺動最大時で15°から18°までに設定する。それ以上の大きな角度(21°以上)になるとフレームを押し付けるバネの反発力だけでは歯がパイプに噛み込まず、レンチが滑ってしまうことになる。

パイプを噛むメカニズムは、上アゴ歯がハンドル本体に力を加えることによりパイプに噛み込み始め、植え歯がパイプを押し付けながら噛み込み、植え歯側を支点として上アゴ歯がその反力でパイプに噛み込み、ハンドルを押し付ける力を増していくと、上アゴ歯は揺動フレームと供に上アゴ歯と植え歯の幅を狭くする方向に(上アゴは反時計方向)に回転をすることによって、パイプに歯が噛み込んでいく。ハンドルに加える力によるトルクとパイプに噛み込んだ歯とパイプの回転トルクが釣り合った時、または揺動フレームが本体のストッパーに当たり揺動できなくなった時にフレームの回転は停止し、レンチはパイプへの噛み込みが完了する。そして、パイプその物を回転することができる様になる。この噛み込んだ歯が滑ることなくパイプを回転させる力(ベクトル解析)は、歯がパイプに食い込んだ深さ部分のせん断力だけでなく、歯とパイプの摩擦力も考慮しないと力学におけるトルクバランスの説明がつかないことになる。

歯形状について

レンチの歯の形状については、単純にパイプに噛み込む先端部分が三角形になっているものより、歯が噛み込む方向に対して、後方がアール形状になっている歯形状の方がレンチを噛み込みから開放する方向に回転させる時に歯先端にパイプがあたることなく、歯先のラチェット操作による歯の磨耗(寿命)に対して優位であることが解っている。

歯の形状は、パイプ外周に樹脂を被覆した管がガス工事・水道工事で採用されるまでは一般配管用鋼管(SGP)を対象とした一種類だったが、1980年頃に鋼管の表面に防食対策として樹脂がコーティングされる改良がされることによって、各パイプ専用の歯形状が開発され、パイプレンチも品種が増えることになった。塩ビ被覆とポリエチレン被覆専用の歯を取り付けたレンチが各社より開発され、この時期にレンチメーカの販売シェアの変化がおこっている。それまで不動の高い評価を受けていたMITSUBISHI社に代りその他のパイプレンチメーカ各社が大きく躍進した。外被覆鋼管の被覆は、レンチにより継手の規定トルク締付け作業をした場合、被覆の下の鋼管がレンチの歯によって露出することがあってはならない。レンチの歯はパイプ表面温度マイナス5℃から40℃において継手メーカー推奨締付けトルクの2倍のトルクを加えても被覆の割れや剥離・レンチのスベリが起こらない形状(ピッチと歯高さ)と歯幅をなしている。

  • 塩ビ外被服管は、大阪ガス(株)とパイプメーカーが最初に共同開発を行っている。塩ビ被覆は、硬度が高いことより通常の白管用PWの歯形状より歯と歯のピッチを少し狭めることによって被覆を破らない様に歯高さを低くし、相乗効果としてパイプに噛み込む歯数が増えることによって推奨締め付けトルクの2倍以上を白管用と同じ歯幅で保障することができた。このことにより上アゴおよび植え歯の鍛造素材をJIS規格白管用(SGP)と兼用することができ、工具メーカーとしてはコストメリットを得ることができた。市場での商品は、「白被覆兼用パイプレンチ」として販売されている[21]
  • ポリエチレン外被覆管は、東京ガス(株)とパイプメーカーが塩ビ外被服管と同時期に共同開発を行っている。ポリエチレン被覆は、硬度が低いため歯と歯のピッチを非常に小さくしなおかつ歯幅を広くして、多くの細かい歯高さの低い幅の広い歯にすることによって1歯当たりの面圧を小さくし保障締め付けトルクを確保している。「被覆鋼管専用パイプレンチ」の商品名で販売されている[21]
  • 市場での販売数は、白管専用パイプレンチ>白被覆兼用パイプレンチ>被覆鋼管専用パイプレンチとなっている[22]
  • どのパイプレンチにも言えることだが、歯が細かくなった分、歯と歯の間にシール剤が従来より詰り易くなった。レンチが滑って思わぬ事故を防ぐには、ワイヤブラシなどでの歯の日常的なメンテナンスが必要である。

1990年頃には、工具の軽量化が進められ本体部分のアルミ鍛造化が進んだ。




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