バイポーラトランジスタ バイポーラトランジスタの概要

バイポーラトランジスタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 20:57 UTC 版)

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代表的な小信号用バイポーラトランジスタ2SC1815

最初に広く使われたトランジスタであるため、単にトランジスタと言うときにはバイポーラトランジスタを指すことが多い。バイポーラトランジスタという呼び名は、後に FET が登場したことによるレトロニムである。

特徴

小さなベース電流に対して、その数十から数百倍のコレクタ電流が流れる。この性質を用いて増幅作用を行う。 コレクタ電流はコレクタ電圧が変動してもほぼ一定に保たれる(定電流特性)。 ベース-エミッタ間はダイオードと同じ構造であるため、ベース電流を流すためには、ベース-エミッタ間電圧を、閾値より高く保つ必要がある。この閾値を、接合部飽和電圧と呼び、シリコントランジスタの場合、室温で0.6 - 0.7ボルトの値をとる。また、この閾値をスイッチング動作に利用することも多い。

動作はすべて電流モード(入力電流に対して出力電流を得る)であるため、全体として動作時に消費する電力量が大きくなる。このため、大電力を扱う際には、電圧モード(入力電圧に対して出力電流もしくは出力電圧を得る)の電界効果型デバイス(真空管やFETなど)に比べると不利である。微小信号の増幅についても、トランジスタを動作させるだけの電流が得られなければ増幅機能は果たせないということになる。

スイッチング素子としては、ダイオード接合に電流を流す構造特有の少数キャリア蓄積効果のため、本質的に動作速度の限界があるが、スイッチのON/OFF制御信号として電流さえ流せれば電圧は接合部飽和電圧(一般的なシリコントランジスタで上記0.6 - 0.7V)しか必要としないため、電圧に制約のある用途では扱いやすいと言える。

極端な大電力や高周波などを除けば、高い増幅率や優れた量産適性で非常に廉価に入手できることから、民生・産業・航空宇宙・防衛の全ての分野で幅広く利用されている電子デバイスである。

種類

PNPとNPN

3つある端子はそれぞれエミッタ (E) ・ベース (B) ・コレクタ (C) と呼ばれる。PNPまたはNPNの3層構造の中央がベースである。E,B,C端子は真空管のカソードグリッドプレート、FET のソース・ゲート・ドレインに対応している。

実際の素子の端子は、日本製の一般的な汎用トランジスタでは、端子を下に向けて正面(よく使われていたTO-92パッケージでは品番などが書かれている平面の側)から見て左からE・C・Bとなっているものが多いが、これとは全く異なる端子配列の品種も数多くあるため、使用に当たってデータシートなどで確認する必要がある。

それぞれの極に使われている半導体の特性から、他のトランジスタ同様 NPNPNP で分けることができる。NPN型とはN型半導体-P型半導体-N型半導体の順に、PNP型とはP型半導体-N型半導体-P型半導体の順に接合(PN接合)したものである。原理図的には対称形であるが、実際にはエミッタ側の半導体の不純物濃度を高くしなければ正常な動作ができない。実際のトランジスタのエミッタとコレクタを逆に接続すると、一応は増幅作用を見せるものの一般にトランジスタに期待されるような能力は発揮しない。エミッタコレクタ間の逆方向の耐圧は低く、耐圧ぎりぎりの電圧を掛けた場合は劣化が起こることもあるとメーカーが注意している例[1]や、逆方向での使用は破壊の要因になりうるとメーカーが注意している例[2]もある。

ゲルマニウムを用いた初期(1970年代まで)のトランジスタは、製造が簡単であることから、PNPトランジスタが多く作られた。シリコントランジスタが主流になってからは、一般的に動作が高速で、増幅率、耐電力などの特性に優れたNPNトランジスタが用いられることが多い。

真空管と異なる、トランジスタに特徴的なものに、コンプリメンタリ・ペアがある。コンプリメンタリ(相補的)・ペアとは、それぞれで極性が反転している他は特性の似たNPNとPNPのトランジスタの組で(実際にはキャリアが電子と正孔とで異なる以上、完全に等しい(完全に対称的な)ものは原理的に作れない)、たとえば2SC1815と2SA1015というペアがあった。コンプリメンタリ・ペアを利用する回路としてプッシュプル増幅回路の一種のSEPP回路が挙げられる。コンプリメンタリ・ペアとして対応するトランジスタが、全てのトランジスタにあるわけではない。コンプリメンタリ・ペアが存在する場合は、その型番がデータシートに記載されている。

製法による分類

物理構造や製造手法により、点接触型、合金型、成長型、メサ型、プレーナー型などに分類される。点接触型以外は接合型である。現在ではプレーナー型トランジスタが主流である。点接触型はトランジスタの発明当初のみ利用された形式である[注釈 2]

形名(型番)の命名規則

トランジスタ#形名(型番)を参照。


注釈

  1. ^ 「2極の」という意味。
  2. ^ 点接触型のトランジスタは点接触部が機械的な衝撃やパッケージの熱膨張などで簡単に破損してしまうなど信頼性が非常に低かったため、信頼性にまさる接合型が発明され接合型の性能(周波数特性など)が向上すると、姿を消した。
  3. ^ 第2トランジスタのコレクタ-エミッタ間飽和電圧第1トランジスタのコレクタ-エミッタ間飽和電圧第2トランジスタのベース-エミッタ間電圧 のとき。

出典

  1. ^ トランジスタ技術編集部 『最新トランジスタ規格表&互換表〈2008/2009〉』CQ出版、2008年。ISBN 978-4789844628 


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